18.再会とおっさん―2
よくよく見ればキットの体は傷だらけだ。
多くは鞭で叩かれた跡で、その傷は決して軽いものではない。
本来であれば、これだけの速度で動くことは不可能なほどの怪我なのだ。
(あの……『アスタロス』の魔人めッ……!!)
ビルブーは少し離れたところで、どかっと大きなフォルの結晶の上に腰を掛け、悠々とグルゥとキットの戦いを観戦していた。
それを見ても、『憤怒』の力はまだ発動しない。
さすがにおかしいと、グルゥは自分の体の異変に気付き始める。
「洗脳を解く魔法はないか、サリエラっ!」
「そんなピンポイントなものはありませんっ!」
「いやあるだろ……“魅了”の魔法はどうしたんだ!?」
グルゥに聞かれても、サリエラは首を傾げるだけだ。
「そ、そんな魔法、私は使ったことないです……よ?」
チッ、とグルゥは舌打ちをする。
聞く前から予想は出来ていたが、やはりあの夜の出来事は、サリエラにとっては無意識の行動。
もっと言えば体の火照りを鎮めるために出て来た、別人格のようなものなのだろう。
「ならば……こうするだけだッ!!」
たかがダガーの攻撃程度で、大したダメージにならないことはキットとの初対面の際に証明済みだ。
グルゥは大きく腕を広げて構え、キットが飛び込んで来る瞬間を待ち構える。
隙だらけの体勢に、すかさずキットはダガーを突き出してきた。
「よし、捕まえ――かはっ!?」
想定外のことが起きた。
キットが突き出したダガーは、グルゥの腹部に深々と突き刺さったのだ。




