17.脱走とおっさん―7
「ん? ちょっと待て」
だがそこで、グルゥはようやくビルブーが本当に見せたかったものに気がつく。
それは爪先――本来であればそれぞれの足に五本の指がついているところだが、ビルブーの足には蹄のようなものがついていた。
「ま、まさか貴様……っ!?」
「そうだとも。ようやく気が付いてくれたか? 同士よ」
二人のやり取りを聞いても、何が何だか分からないサリエラ。
「え、何ですか? 筋肉仲間でしか分からない符丁のようなものがあるんですか?」
「アホかっ! ……足の蹄は、『アスタロス』の血統の種族特徴なのだ」
「『アスタロス』……? そ、それってまさか!?」
そこまで聞いて、ようやくサリエラも、蹄が意味していることに気が付いた。
「あのドワーフのような男も、魔人の一人ということですかっ!?」
「左様。『アスタロス』の血統は『怠惰』の感情を力の源としておる。あの勤勉なドワーフとは違う、ダークドワーフがもう一つの呼び名じゃあああああああああ!!」
いきり立つビルブーの口上を聞いて、サリエラは瞬時にこう思った。
弱そう……と。
「なので、ワシは戦わんぞい。ゆけぃ、娘よ。ワシの代わりにヤツらを倒すのだ」
「はい……分かりました」
ビルブーの指示を受け、キットはすっと立ち上がる。
その目に、意思を感じる光はなかった。




