3.賊・孤児とおっさん―1
いかになまくらを弾き返すほどの頑強な体をしたグルゥといえども、きちんと手入れのされた剣を、背中から通されたのであれば、対処の仕様がない。
「かはッ……!?」
意識の外からやってきた鋭い痛みに、膝の力が抜け、ついにグルゥは巨漢に押し潰されてしまう。
「お、よくやったなデブ!!」
「一気にやっちまえ、これ以上抵抗されると面倒だ!!」
グルゥは両腕で頭を抱え込み、襲い来る暴力に必死に耐え続けた。
それでも時折、腕をすり抜けた蹴りが頭に命中し、気を失わないよう何とか意識を保ち続ける。
「なんでやられっぱなしなんだよ、おっさん!! その図体は、見かけ倒しなのかよッ!?」
キットの言葉に、グルゥはそうだ、と一言だけ返す。
「あん? ……コイツ、今、自分で自分のことをデクのぼうだって認めなかったか?」
若者の一人が、それを聞いて攻撃の手を緩めた。
暴力を振るい続けるのに疲れたのと、どうやらこのおっさんは既に降参しているようだと、そう認識したのもあるだろう。
「私に期待してくれたキットには悪いが……私は生まれてこの方、剣を握ったことすらないよ。ずっと大領主様の下で、事務職をこなして生きてきた。私が握っていたのはそろばんだ。前職は、経理なんだよ」
「け……経理!? おっさん、その見た目で経理だったのか!?」
あんぐり、と口を開けてキットは驚愕する。
それを聞いた若者達は、手を叩いて爆笑していた。




