16.迷子とおっさん―8
ミノンの案内に従い、辿り着いた先。
確かに、そこは特別監視室の一角ではあったが。
「あれ……いないねぇ?」
キットがいるはずの牢獄の中は、既にもぬけの殻になっていた。
あんぐりと口を開けたグルゥは、空っぽの牢と腕の中のミノンを交互に見やる。
「お前の言うことを信じてここまで来たんだぞ!?」
「うーん……そう言われても、ボクもあまり難しいことは分からないや。昨日までは、一緒にここで話してたんだよー」
「どこか行き先に心当たりはないのか!? もう後には引けない状況なんだ、頼む、何でもいいから手がかりを教えてくれ!」
そんなこと言われてもなー、とミノンは困り顔になっていた。
悪気がないのは確かだが、無邪気すぎるのも問題だと、グルゥは今になって勢いで牢を飛び出したことを後悔する。
「あ、あそこならどうだろう。ボクとキットが、一緒にお仕事した場所。あそこでキットは倒れたんだ」
「倒れた……!? 事情はよく分からないが、とりあえずそこに言ってみよう。今はとにかく行動する方が大事だ」
そう言って、グルゥが踵を返そうとした、その時だ。
「そこまでだ」
立ち塞がったのは、グルゥにキットが連行されたことを伝えた監視官だった。
その手には一本のリードが握られており、その先に繋がれていたのは――
「な、なんですかあれはっ!?」
驚愕するサリエラ。
獅子の顔と山羊の角、そして蛇の尾を持つ二メートル級の四足獣は、どう見ても『アガスフィア』には存在しない“魔獣”だったからだ。




