16.迷子とおっさん―7
トリカゴの中を猛然と走り抜けるグルゥ。
当然、騒ぎはあっという間にトリカゴ中に広まり、多くの監視官が脱走者を捕まえようと動き出す一大事になっていた。
そんなグルゥの小脇にはミノンが抱えられていて、後ろにはサリエラがついて走っている。
ミノンの言葉には続きがあった。
「キットは、昨日までは一緒に居たんだ。だけど、急におかしくなっちゃって。だから今は、ボクの部屋の前の部屋にいるんじゃないかな」
つまりミノンの部屋に戻っていけば、キットと会えるというわけである。
そこまで分かれば行動を起こすのには十分だったが、ミノンの言葉で、グルゥは一つ気になっている部分があった。
つまりそれは、“おかしくなっちゃって”という一言だ。
キットの心と体が、無事であればいいが。
はやる気持ちを抑えながら、グルゥは時折立ち塞がる監視官を片手一本でぶちのめし、トリカゴを走った。
「ところで、お父様」
その後ろを必死で走るサリエラが、念のため、グルゥに確認しておく。
「私のこと、忘れてはいませんでしたよね? さっき、私の牢の前を通りかかって、あ、って」
「……そんなはずはない、お前も大事な娘の一人だ!」
娘と呼ばれ、きゃーっと頬を赤らめるサリエラ。
グルゥは心の中で叫んでいた。
本当にすまなかった、と。




