16.迷子とおっさん―6
「は?」
意味が分からなかった。
目の前の子供はノニムでもないし、キットでもなければサリエラでもない。
こんな子供なんていたっけ、と自問自答するが、当然居ないし、またそんなことが起こり得るようなこともしていなかった。
だが子供は、親愛の情を示すように何度も頬を擦りつけ、嬉しそうに笑っている。
「パパ、ボクだよ、ミノンだよ」
「は、はい。初めまして」
「初めまして、パパ。それと、これからよろしくね」
律儀に挨拶を交わす、グルゥとミノン。
「……いや、どういうことだ!?」
謎は深まるばかりだった。
ミノンはグルゥの髭を引っ張り、おひげ、おひげと楽しそうに遊んでいる。
「どこから来たんだ、君? パパとママはいないのか」
「パパは、パパだよ。ママはね、もう死んじゃったんだ」
聞かなきゃよかった、とグルゥは後悔する。
ノニムと同じ境遇だ。
そんな子供に、情が移らないわけがない。
「えーっと、君はその……何をしにきた? どういう目的なんだ?」
「あ、そうだ」
グルゥの問いかけに、ミノンは思い出したように声をあげた。
「伝言だよ。会いたいって言ってたんだ」
「……誰が?」
「キット」
その言葉は、グルゥを今すぐ奮い立たせるのに十分過ぎる一言であった。




