2.続・孤児とおっさん―8
「見たところ、君は……あの二人に命令されて暴力を振るっているだけなのだろう? 悪いことは言わない、もう止めなさい。それだけ立派な体をしているんだ、農業などに力を使った方がいい」
まだ、頭はくらくらしていたが、それでも体を動かせるくらいには回復していた。
「りっ……ぱ……? おで、ただのでぶだ、そんな風に言われたこと……」
「なーにしてんだデブ!! さっさとそのおっさんをやっちまえよ!!」
「そうだ!! 油断してるとすぐにやられちまうぞ!! それとも、お前までお仕置きをされたいのか!?」
その言葉を聞いた瞬間に、巨漢の目にも怯えの色が浮かび、慌ててグルゥに対して殴りかかった。
グルゥはとっさに後ろに避けて攻撃を避けるが、危なかったと息を呑む。
「お、おで、痛いのいやだ!! とんがったもので、つんつん、つんつん……もういやだ!!」
「それと同じことを、自らより幼いものに対して行っているのだと……分からないのか!!」
グルゥの言葉には耳を貸さず、巨漢は猛然と殴りかかって来た。
だが、その動き自体は遅い。
どうにか攻撃をやり過ごしつつ、説得をすることが出来ないか、グルゥは考える。
「な、何で反撃しないんだよ、おっさん!! そいつは悪いヤツだって、分からないのか!?」
「違う!! ここで暴力に頼り反撃をしては、コイツらと同じなんだ!! それに、私からしてみればこの若者達だって、まだまだ子供のようなもの……どうにかして、平和的な解決を望みたい!!」
掴みかかってきた巨漢を正面から受け止め、両者は力比べをする。
二の腕の筋肉が隆起し、服がはち切れそうになった。
踵は地面にめり込み、もの凄い圧をグルゥは一人で受け止める。
「なーにが、平和的解決だよ」
その背中に、若者の剣が鋭く突き刺さった。
グルゥの視界が暗転する。




