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16.迷子とおっさん―3

 視界一杯に広がる、フォルの原石。

 濃い緑色に輝くそのクリスタルが、まるで鍾乳洞のように四方八方から突き出ていた。


 明かりさえなかった採掘場とは違い、フォルが発する自らの輝きによって、広いドーム中が緑色に照らされている。


「ぐふふ、どうだこのフォルの量は。圧巻だろう? あまりの濃度に、普通の人間であれば正気を失い、発狂してしまうのだ。ミノンはフォルとの適性が高く、このような環境の中でも普通に作業をこなすことが出来る。ワシらにとっては天使のような、とても頼りがいのある“迷子”なのだよ」


「迷……子……?」


「ああ。ミノンは本土からここに連行されて来たのではない。ある日突然、ここに流れ着いてきたのだ。お前はどうだ? ミノンのように働けるか? もしかしたら、子供の方がフォルの適性が高いのかもしれないからな。試してみろ」


 ミノンは一足先にフォルドームの中に入ると、ノミとトンカチを取り出して、のんびりとフォルの結晶の採取を始めた。

 

 まるでピクニックにでも来ているかのような軽やかな足取りに、キットもつられてフォルドームの中に足を踏み入れる。

 ――その瞬間だった。


「わああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 激しい頭痛と吐き気がキットを襲い、その場に膝をついて悶絶する。


「嫌だッ!! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!! 助けてッ!! 誰かああああああああああああああああああああああああ!!」


「なんでぇ……大外れじゃねぇか」


 不安げにキットを見つめるミノンを、ビルブーはしっしっと手で払い、仕事を続けるよう命じた。


「こりゃあいよいよ、ワシの玩具くらいにしかならねぇな」


「嫌だよ……オレを……一人にしないで……一人にしないで……」


 うわ言のように、同じ言葉を繰り返すキット。

 ビルブーはそんなキットを抱え上げると、下卑た目でキットを見下ろすのだった。

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