15.続・トリカゴとおっさん―6
“特別監視室”。
そこは管理人であるビルブーにより、直接、教育的指導を受けさせられる、トリカゴの中でも特に問題行動の目立つ者が入れられる牢獄である。
キットは監視官への暴力行為を行ったことを咎められ、その特別監視室に叩き込まれていた。
手足には枷をはめられ、鎖で括り付けられたキットには、横になる自由すら許されていない。
足元には、体のどこかから流れ出した血が絶えず滴り、血だまりを作っていた。
「いいか。このトリカゴでは、監視官の言うことは絶対。そしてこの監視官を束ねる、このビルブー様こそが最も偉いのだ。分かったのなら、はい、ビルブー様と復唱してみろ」
鞭を手にしたビルブーは、意識が朦朧としているキットの顎を掴み、強引に顔を上げさせた。
虚ろな目のキットは、ビルブーに対し抵抗する気力も湧かず、ただされるがままになっている。
「フン。まだ今日も服従する意志を見せぬか。だが、そんな意地を張ってどうなる? お前が苦しむだけなのだぞ。さぁ、まずはビルブー様と言ってみろ!!」
鞭を振るうビルブー。
パシィィィンと乾いた音がフロア中に響き渡り、どこかの檻からヒィィと誰かの悲鳴が聞こえてきた。
「あああぁぁぁぁぁっ!!」
「ぐふふ、なかなか良い声で鳴くようになったじゃないか。それでこそ責め甲斐があるというものだ」
鞭で打たれた箇所の服が裂け、脇腹には真っ赤なミミズ腫れが出来た。
ビルブーはしわがれた大きな手で、嬲るようにそこを何度も何度も揉み込む。
「あああああああ、あああああああああああああああああっ!!」
「ただ痛めつけるだけでは能がないからな。貴様には、痛みだけでなく愉しみも教えてやろう。案ずるな、ワシはどっちもイケる口でね」
ビルブーの言葉に、キットはゾッとして体を震わせた。
その姿に満足したのか、ビルブーは今日の“指導”を終わらせ、高笑いをしながら牢から出て行く。




