15.続・トリカゴとおっさん―5
グルゥは、採掘場で獲れた“フォル”の欠片を手にして、不思議そうな顔をする。
「しかし何故……公国や王国はこのような石の採取に必死になっているのだろうか」
「え、まさかお父様、フォルの重要性についてご存知ないのですか?」
サリエラの言葉に、グルゥは首を縦に振った。
「地水火風、様々な魔法の力の元になる元素だということは知っている。しかし『イルスフィア』では、元々フォルはほとんど採取できない物質だからな。その利用については研究が進んでいない」
「フォルは『アガスフィア』では様々な技術に応用されていて、今では豊かな暮らしとは切っても切り離せない、非常に貴重な資源なのですよ。ですからアルゴ公国にとって、フォルを豊富に採取できるトリカゴは、国としても重要な施設なのです。しかし一方で、フォルには人体に与える危険性も指摘されていて――」
二人が、小声でこそこそと話していた時である。
「貴様らッ、私語をするんじゃないッ!!」
監視官の一人に見つかって、二人は慌てて離れていく。
「新入りが、少し調子に乗っているんじゃないか? 人より作業が速いからといって、ここは遊んでいていい場所じゃないんだ」
「……すみません」
「先日も、私語を注意され暴れまわったガキが、“特別監視室”に連行されたがな。貴様も同じ目に遭いたくなければ注意することだ。何せ、貴様ほどの働き手はこちらにとっても貴重なのだ」
そう言って、監視官はグルゥの背中をポンポンと叩いていった。
だが、グルゥの頭の中には既に後半の話は入っておらず、一つの単語に意識が集中していた。
「“特別監視室”……?」
そこに、キットがいるのかと。
はやる気持ちを抑えられず、グルゥは拳を握り締め、採掘場の土壁を叩いた。




