2.続・孤児とおっさん―7
「うあ……ぁぁぁっ……!」
キットの目から光が失われ、その表情が絶望に歪んでいく。
「嫌だ……もうお仕置きは嫌なんだぁ……!!」
「ハハ、見てみろよあのビビりよう。超ウケる」
「しかも、俺たちを裏切った上に、さらにあのおっさんまで売ろうとしたんだぜ? とんでもないクズだな、ありゃ」
若者達は、放心状態のキットに心無い言葉を浴びせかける。
「売……った……? オレは、おっさんを売ったのか……?」
真摯に話を聞いてくれ、さらには自分を心配し、ずっと抱き締めてくれていたグルゥ。
この大人なら信用できるかもしれないと、そう思って全てを打ち明けたはずだったのに。
「信用できないクズは……オレの方だったんじゃないか……っ!」
グルゥを裏切ってしまった。
その事実に気付いたキットは、罪の重みに耐え切れず、とめどなく溢れる涙を流す。
「おで、おしおき、して、いいのか?」
「おう、さっさと頼むぜ、デブ」
「今までで一番キツイやつをよろしくな。使い物にならなくなっても構わねぇ。これは“お仕置き”じゃねぇ、“見せしめ”なんだ」
その指示を受けた巨漢は、倒れたキットの胸ぐらを掴んで、体を起こさせようとした。
だがキットは、自ら率先して立ち上がり、巨漢の前に立つ。
「いいよ……やれよ。オレはおっさんを裏切ったんだ。これがその罰だっていうなら……いくらでも受けて立ってやるさ」
キットの悲壮な覚悟も、若者たちからすれば嘲笑の対象だった。
「じゃあ、いくぞ、死にそうになったら、さきにいえ」
巨漢は何も考えずに、キットに対して大きな張り手を振り上げる。
目を固く閉じ、体をぎゅっと縮めて、キットは来たる衝撃に備えた。
「……あで?」
しかし巨漢の腕は、いつまで経っても振り下ろされることはない。
ようやく立ち上がったグルゥが、後ろからしっかりその手を掴んでいた。




