14.トリカゴとおっさん―10
ミルププ自身もげっそりと疲れてしまった、その時だ。
「なぁ、オレ、欲張りすぎなのかな……」
急にキットが放ってきた言葉に、ミルププはビックリした。
「欲張りすぎって、なんでだよ。むしろお前はまだまだ持たざる方だろ」
「でもオレ、時々自分が怖くなることがあるんだ。オレと一緒に盗賊をやらされていた子供たちは、まだ奴隷同然の扱いを受けてる子だっているのに。オレ一人だけ、親父と出会って、たくさん楽しいことをして、良い思いをしてるんだ」
あれで良い思いって、今までがどれだけ悲惨だったんだと、ミルププは思った。
「それなのに……ダメなんだよ……っ! もっともっと親父と一緒に遊びたいし、たくさん楽しいことをしたかった……! 他の子供たちのことなんてすっかり忘れてる時もあってさ、きっとオレ、ダメなヤツなんだ。だからこうして、元の自分の位置に戻っただけなのに、受け入れられずにいるんだよっ……!!」
「そんなことねぇ! おっさんは、キットの思いはしっかり受け止めるし、他の子供たちを見捨てるなんてこともしねぇはずだ! おっさん萌えファンクラブ会長の俺様が断言するぜ!!」
「モエ……なに……?」
余計なことを言ってしまったとミルププは冷や汗をかいた。
「ま、まあそれはともかくだ。なんつーか、もう見てらんねぇな。こうなったら、ちょっくら俺様がおっちゃんの様子を見に行ってやるよ」
「え……いいのか?」
「ああ。なんだったら、道中で牢屋の鍵の一つや二つくらいかっぱらってきてやるぜ。せいぜい期待して待ってな」
そう言って、ミルププは張り切って鉄格子の隙間から出て行った。
普通に害虫と間違われ退治されないか心配だが、きっとミルププなら大丈夫だろうと、そこには謎の安心感があった。
だが――その晩、ついにミルププは戻って来なかった。




