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14.トリカゴとおっさん―9

 ぎゅるるる、と大きくキットの腹が鳴る。

 一日の仕事を終え、疲れ果てたキットは、再び自分の牢獄で死んだように眠っていた。


(うーむ、まずいな……)


 ミルププは、再び生気を失ってしまったキットの後ろ姿を見て、考えを練っていた。


 水も食事も最低限しか与えられず、日が昇るのと同時に強制労働をさせられ、日が沈むと自身の牢に戻される。


 そんな生活が既に四日間も続いている上に、おっちゃんが連行される姿を目の当たりにしたのだ。

 幼いキットの精神が、耐えられるはずがない。


「な、なぁ気にしてるのか? あの男のこと」


「おっちゃんは……オレと話したせいで連れてかれたんだ……また、オレは大事な人を、オレのせいで……」


 昨日の元気は何処へやら、その声は深い絶望と悲しみの中に沈んでいる。


(クソ、飯も水も無いって状況じゃ、誰でもこうなるわな。俺様が励まし続けるのにも限界があるし……)


 考えて、ミルププはパァッと閃いた顔をした。


「なぁキット、良かったら俺様を食ってもいいぜ! 腹が減ったんだろ?」


「食えるわけないじゃん……ミルププは仲間だろ……何言ってんだよ、オレが親父に怒られちまう……」


 ボケのつもりだったのに、至極真面目なトーンで返されてミルププは撃沈する。

 でも、仲間とはっきり言われたのがちょっとだけ嬉しかった。


「これでも俺様は食用ミルワームだからな。味の方には自信があるんだぜ。もっとも、普段は鳥とかに食われないようトラップを張ってるんだ。出来るイモムシだろう、HAHAHA」


「うん……分かったから静かにしてくれるかな……悲しくて、悲しくて、頭が痛いんだ……」


 重い。

 あまりの空気の重さに、ミルププは発狂しそうになる。

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