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14.トリカゴとおっさん―5

 もしもあの時、自分がユズと呼ばれた少女に、負けることがなかったのなら。

 グルゥはまだ生きていて、こんなところにも収監されなかったのかもしれない。


 そう思うと――いつの間にか、キットの目からは大粒の涙が零れていた。


「みんな、みんなオレのせいで……!」


 グルゥがいなくなった今、こんなことをして生き続けても、何の意味があるのだろうか。


 キットの思考は、少しずつ、少しずつだがマイナス方向に進んでいく。

 その目から、生きる気力の光が消えようとしていた――その時だ。


「諦めるんじゃねぇ!」


 ズボンのポケットからひょっこりと顔を出したミルププに、キットは叫び声をあげそうになってしまう。

 とっさに両手で口を押さえたのを見て、ミルププは満足げに頷いた。


「お、そうだな、声を出しちゃいけねぇ。良い子に出来たじゃねぇか」


「じゃねぇか……じゃ、ないんだって! どうしてここに!? もしかして、ずっと付いてきたの!?」


 キットは手のひらにミルププを乗せると、監視官や他の労働者に見つからないよう、小声で会話を始めた。


「おうよ。俺様、機転が聞くからな。あのおっさん、俺様をカバンの中に押し込めやがったんだが、お前が連れ去られるのを見て慌てて飛び出してくっついてったってワケだ」


「異世界勇者との戦いの時から、ずっと居たんだ……。全然気付かなかった」


「俺様のステルス能力と危機察知能力は天下一品だからな。バレる危険もあったし、ここでお前が根をあげるまでは、隠れてようと思ってたんだ」


 心配して出て来てくれたのだと思うと、ミルププの心遣いが嬉しかった。

 だが、ミルププは厳しい口調でキットに説教をする。

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