14.トリカゴとおっさん―4
自分から攻めてきたクセに、なんて弱いヤツなんだとキットは思う。
(親父なら、こういう時どうするのかな)
半ば条件反射的に捕まえてみたのはいいものの、脅えたマリモは何も話そうとしない、というかそういう状態になさそうなので、キットは逆に手持ち無沙汰になってしまった。
このまま、何処かに行ったらしいグルゥが帰って来るまで待っていようか。
そんな風に思い始めていた時だ。
「三十……秒……」
「ん? 何がだよ?」
「三十秒、立ったわ。もういいでしょう?」
あまりの恐怖に気でも触れたかと、キットはそう思ったが。
「――え?」
次の瞬間、自分の体の自由が何かに奪われたのを、キットは感覚で感じ取っていた。
体を動かそうと脳から指令を出しても、指一本すら動かすことが出来ない。
それどころか、キットは手にしたダガーを、自らの首へと運んでいこうとしている。
「な、なんだよっ。何なんだよ、これっ!?」
ダガーの先端が、ぷっくりと膨らんだキットの頚動脈に、チクリ、と突き刺さろうとしていた。
「それはダメ、ユズっ!!」
とっさに、部屋の入り口の方へと叫ぶマリモ。
「……でも、コイツ、マリモをいじめたから」
「いいの。そうされるだけのことを、私はしたんだから……」
辛うじて動く眼球を横に向けて、キットは“ユズ”と呼ばれた声の主を見た。
自分とさほど変わらない年齢の少女がいたが、手のひらサイズの大きさの機械を持っていて、そこから伸びたコードが耳当てのような機械に繋がっている。
「“スマホ”……キャプチャ出来たよ」
あの機械が自分の体の自由を奪ったのだと、キットは直感的に理解したのだった。




