14.トリカゴとおっさん―3
「――そんなんで、オレを倒せるとでも思ったのかよ」
冗談はよせと、キットは押し倒した少女に対して皮肉げな笑みを浮かべる。
首に突きつけられたダガーに、マリモは冷や汗を流して、獲物を狩る獣の目をしたキットを見上げていた。
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それはキットが、旅の疲れから宿のベッドでぐっすりと眠っていた時のことだった。
廊下から迫り来る一つの足音。
グルゥのドスンドスンというものとは明らかに違う、恐らくは若い女の足音だ。
キビキビとした歩調のペースからして、かなりの緊張感がある。
何か良からぬことを考えているだろうと、まどろみの中、キットは足音だけでそこまでの判別をしていた。
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後は簡単な話である。
扉が開け放たれるのを入り口の近くで待ち、マリモが突入してきた瞬間に、キットは逆にマリモをベッドの上に押し倒して、ダガーを突きつけたのだった。
「言え。お前の目的は何なんだよ。黙ってるつもりなら……このダガーで、容赦なくお前の喉をかっ捌いちまうぞ」
ずい、とさらにダガーを近づけるキット。
もちろん本当にそんなことをするつもりは無かったが、真に迫った凄み方は、盗賊時代に何度も習わされたことだった。
震えるマリモの目には、恐怖による涙が滲んでいた。




