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2.続・孤児とおっさん―6

 世界がぐにゃぐにゃと歪んで、足に力が入らない。

 そうか、いくら体が頑強に出来ていても、脳震盪には抗えないのかと。


 地面に倒れた状態で、グルゥは妙に冷静に思考を働かせていた。


「うぷ……なんか、いたから、なぐった」


「おう、よくやったじゃねぇか、デブ」

「ナイス機転だ、たまには賢いこともするじゃねぇか、デブ」


 二人の若者からデブ呼ばわりされているのは、身長はグルゥと同じくらいあり、さらに横には三倍くらいの太さがあるという、超巨漢の男だった。

 一見すると年齢が分からないが、他の若者からデブと呼ばれているあたり、同じように二十代前半なのだろう。


 巨漢は、肩に尻を丸出しにした少年を担ぎ上げていた。

 そして、その尻は真っ赤を通り越し、青紫色になるまで腫れ上がっている。


 これが“お仕置き”。


 キットを震え上がらせ、子供たちの心を意のままに操ってきた、暴力による支配だった。


「え……嘘だろ? もうやられちまったのかよ、おっさん! 冗談はやめろよ、立ち上がってくれよッ!!」


「おーいデブ、キットも捕まえてお仕置きをやってくれ。と、その前に、そっちのチビは荷車ん中詰め込むからな。放り投げてくれ」


 無造作に投げ飛ばされた少年は、冷たい土の上をゴロゴロと転がった。


 既に意識は無いようで、白目を剥き、赤い泡を吐いている。

 投げ飛ばされた衝撃で、歯が折れて黒い土の上に飛んでいった。


「い、嫌だ……お仕置きはもう嫌だっ!! 頼むよ、許してくれっ!! 違うんだよ、オレはそのおっさんに脅されて、仕方なく――」


「仕方なく、俺らの居場所を教えたってのか? その割には仲良さそうにしてたけどな」


 巨漢の張り手がキットの顔面に炸裂する。

 キットは叩きつけられるように地面に倒れて、切れた唇から血が流れ出した。

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