13.家出少女とおっさん―11
鎧を着たままのブランにガリガリザリザリハスハスされて、サリエラは死んだイカのような目をする。
「殺して……いっそ殺して……」
「ああんもうッ! まさかのくっころ系!? そんなサリエラも大好きだッ!!」
ブランはシスコンだった。
それも重度の、というかそのレベルすらも通り越し、もはや何かの事件性すら感じさせるほどだった。
***
「――というわけで、俺は『清廉と純潔の白騎士』としてきちんと王国で活躍している。いや何が白騎士だよ!? おかげで風俗にも行けず、彼女を作ることも禁止され……アイドルか!? 王は俺をアイドルにでもしたいのか!?」
「お兄様、それ、妹にする話じゃないです……」
砂浜に一緒に座り込み、月を眺めながら語り合う兄妹。
ブランの一方的なテンションの高さに負け、サリエラは未だに死んだ目をし続けていた。
「まあ要するにだな、俺はお前のことが心配なんだ。お前を連れ戻すようなことはしたくない。だけど、お前の身に危険が及ぶようであれば、それも仕方ないとは思っている」
「それは絶対に嫌!! お願いです、お兄様!!」
懇願するサリエラに、ブランはぐっと拳を握り締め、今日一の“お兄様”をゲット出来たことに感動していた。
…………サリエラの白い目に気が付き、ゴホンと咳払いをする。
「だから、あの男にならお前を任せても良いと思った。あの男であれば……何があっても、お前のことを守ってくれそうだからな」
「でしょう!? とても優しいのです、お父様は」
「分かるさ。……恋する乙女の気持ちは、俺もお前もおんなじだ」
お互いに握り締めた拳を、兄と妹はゴツンとぶつけあった。
「恋バナの時だけは、気持ちが通じ合うんだけどなぁ」




