13.家出少女とおっさん―1
来るべき時が、来てしまった。
約束の時間は正午だった。
照りつける日差しの中、グルゥたちはニサードの浜辺に揃っていた。
「こんな場所にわざわざ呼びつけるとは……まさか、いざとなったら海の中に逃げるつもりではありませんよね?」
ブランは今日も“きっちり”とした七三分けで、“きっちり”鎧を着込んでいる。
白い砂浜の上ということもあり、照り返しもかなりキツそうだった。
「それとも、砂浜の上では私が動きにくいとお考えでしょうか? ご心配なさらず、私の剣技は王国でも五本の指に入ります。多少、足場が悪いくらいでは、魔人相手でも遅れは取りませんよ」
「色々言っているところ悪いが……答えはこうだ」
グルゥは口元を押さえると、どたどたと海の方へ走っていく。
そして膝をつき、しばしの間えずいてから、恥ずかしそうな顔をして戻ってきた。
「ただの二日酔いかよッ!?」
公国の男が全力でツッコむ。
そう、普段飲んだことがない量を飲んだ上、夜中も全く休めなかったグルゥは、完全に二日酔いになっていた。
「『サタン』の血統の魔人は、相当な酒豪だと聞いたことがありますが」
「それは普段から飲んで鍛えているヤツの話だ。私は酒もタバコもやらないからな。そもそも『イルスフィア』の酒は水が悪いから美味くない……夕べは、羽目を外しすぎた」
「フフ。真面目であるということは、好感が持てますね」
そう言って僅かに微笑むブラン。
ブランの妙に睨めつける様な視線に、グルゥはん? と首を傾げた。




