2.続・孤児とおっさん―4
キットに案内され、グルゥは丘から続く森の中を進んでいた。
そこに、大人たちと一緒に乗ってきた馬車が止めてあり、集合してから町に戻るはずだとキットは言った。
つまり、馬車が出発する前に追いつけば、他の子供たちも救うことが出来るかもしれないと。
グルゥはそう考えて、足早に森を進んでいたのだ。
「んで、次のでっかい木のところを右だ。違う違う、その木じゃなくて、もう一本先の木」
「そんなの、よく判断がつくな。この辺りは慣れているのか?」
「まーな、狩場としてよく利用してたし……それに、これくらい普通分かるって。あれだけ特徴的な木なんだからさ」
そう言われても、グルゥには手前の木と一本先の木、何の違いがあるのかさっぱり分からなかった。
狩人としてのキットの素質に、ただ舌を巻くばかりである。
「しっかし、おっさん……足早いな。こんなスピードでここまで戻って来れるとは、思わなかったぜ」
「急がなければ、君の仲間たちは暴力を受けてしまうのだろう? それに、君を抱っこしていなければ、もっと早く走ることが出来る。もっとも、それじゃあ目的地に辿り着くことすら出来ないだろうがな」
そう、グルゥは効率よく森を進むために、キットをずっと抱きかかえて走っていたのだ。
そして、背中には大量の荷物を詰め込んだバックパックも背負っている。
常人では動くことすら出来なくなるような荷物の多さだが、屈強な肉体を持ち、ニメートル近い身長のグルゥにとっては、この程度の運搬は朝飯前だった。
「見えた! あそこに……オレたちが乗ってきた馬車がある!」
キットの言葉にハッとして、グルゥは足を止め、キットを地面に降ろした。




