11.騎士とおっさん―10
サリエラの言葉は全て真実だ。
だがその知識は明らかに、のどかな漁村の娘が持っている知識の範囲を逸脱してしまっている。
(この娘は……いったい……?)
ブランとも面識があるようだった。
グルゥはサリエラの出自について不思議に思ったが、
「嘘だと思うなら、永住権を付与した魔人を管理している台帳をご覧になってください。もっとも、王国にしかない厳重に管理された書類ですから、閲覧すること自体に何週間もかかってしまうとは思いますが」
サリエラは、さらなる理論武装をブランに対しぶつけた。
怒りで歪んでいたブランの端正な顔も、徐々に緩んでいって、やがてそれは笑みへと変化する。
「フ……。そこまで言われては仕方ありませんね」
「ブ、ブラン様!?」
「心配しないでください。この魔人の処遇について、ひとまず不問にすると言っただけです。税については“きっちり”管理させて頂く。そうですね、もしもこのまま納付が出来ないというのなら」
ブランの目は、鋭くサリエラを射抜いていた。
「“人納”。考えて頂きますよ。この公国では、それはれっきとした正しい方法ですから」
考えなくても直感で分かる。
納税など関係なしに、ブランはサリエラをここから連れ出したいのだと。
「明日、また来ます。……それまでに、“きっちり”答えを出しておいてください」
「え、ええ!? ブラン様ぁ!?」
ブランは公国の使いを連れて、カッツォ邸を後にしていく。
残されたグルゥは、人納の予告を宣言されたサリエラを、申し訳なさそうな目で見たが。
「えへへ。お父様……って言っちゃいました」
グルゥの心配など、何のその。
サリエラはピースサインを作ると、ひとまずブランを撃退したことを、無邪気に喜ぶのだった。




