2.続・孤児とおっさん―3
「ーーーーーっ!?!?!?!?!?」
声にならない声をあげ、悶絶するグルゥ。
その間にも、キットの舌はベロベロとグルゥの腹を舐め続けている。
「ちょ、ちょちょちょちょちょっと待て!! お前はいったい何をしているんだ!?」
「え、だから……怪我の手当てだよ。傷が付いたら、とりあえず舐めるだろ、ふつー」
やっとの思いでキットを引き剥がしたグルゥは、顔を真っ赤にしてキットに言い聞かせた。
「確かに、唾でもつけておけば治る、なんて言葉は存在するが! それはダメだ! 絶対にダメだ!!」
「ダメって……なんでだよ? 仲間の怪我にだって、オレはこうしてきたんだぜ?」
「百歩譲って子供同士ならまだ良い!! だが私とはダメだ!! なんかこう、色々と問題がある気がする!!」
グルゥの気持ちは伝わらないようで、キットは首を傾げるだけである。
「しかしおっさん、毛むくじゃらだな。なんかヘンな感じだったぜ」
「そ、それは血統……というか体質なんだ、仕方ないだろう。気持ち悪かったらすまない」
「んーん。オレ、おっさんみたいな髭好きだぜ。なんか親近感が湧くっていうか」
そう言って、キットはグルゥの顔の周りに生えた、ライオンの鬣のような固い髭を掴みわしゃわしゃした。
グルゥはされるがままになりながらも、親近感、という言葉に怪訝な顔をする。
(ひょっとして、この子のお父さんも髭のある御仁だったのだろうか?)
そう思うと、キットを無碍に引き剥がすことも出来ず、グルゥは少しずれたキットの感性に翻弄されっぱなしなのであった。




