表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/984

プロローグ 全てを失った日

 どうしてこうなった、とグルゥ・ヌエツト・マヌエルパは自問自答していた。


 二十歳になってから、大領主の下で毎日コツコツと働き、派手な遊びをすることなく、節制を重ね貯蓄を続けてきた。


 そして四十五歳の誕生日。

 それまでの功績が認められ、グルゥにもようやく領主として土地を持つ権利が与えられたのだ。


 これからは自分の城を持ち、自分の国を守る“魔王”になる。

 他の領主から見ればまだまだちっぽけな国であるが、グルゥにとって、愛する妻と娘と共に暮らす、穏やかなスローライフが始まったはずだった。



 はずだった、のだが――



「やめて……もうパパをいじめないで!!」


 血溜まりの中、膝をつくグルゥは、まるで悪夢でも見ているかのような錯覚に陥る。


 どうして、四十五歳にもなり、さらには魔王である自分が、十歳になったばかりの娘に庇われているのかと。

 両手を広げて侵入者に立ち向かう愛娘の細い体は、目を覆いたくなるほどガタガタと震えていた。


「へぇ、おっさんを嬲るより、こっちの子の方がまだ愉しめそうジャン」


 自らを異世界から来た勇者と名乗った少年は、愛娘の肢体に、冷たい刃の先を這わせていった。

 十歳の誕生日に買ってやったワンピースの下腹部が濡れ、恐怖で失禁していることが背中越しでも分かる。


「や、やめろ……っ!! もう、やめてくれええええええええええええええええっ!!」


 グルゥの懇願など全く意に介さず、チロリと舌なめずりをする少年。

 愛娘の腕を乱暴に引き、強引に連れ去ろうとする姿を見て、グルゥは最後の力を振り絞り追いすがった。


「うぜぇんだよ。雑魚モンスのクセしやがって」


 振り向き様、少年の突き出した剣は、グルゥの心臓を深々と突き破っていた――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ