お風呂に入らせてくれないですか?
ヒュウ、と笛のような音を奏でて、星の煌めく闇の中、夜風が頬を撫で通り過ぎていく。結局お風呂は入れていない。今回攻めてくる「アイツら」のせいで。
あ、通信来た。
《香、俺の声が聞こえるか〜?》
『ウザイから普通に話して、誠』
《OK、今お前のところに敵勢力が多数来ている》
『了解』
そっと、深呼吸。大きく吸って、自分の隊、通称 香隊(ホントは韓紅組で、カラーが韓紅色だから)にむかって声をかける。
「おい、お前ら。敵が来ている。持ち場につけ」
「「「「「「らじゃー!」」」」」」
「……静かにな」
ボクの組はオールラウンダー。ピストル隊15人、刀隊15人の30人編成。+吹隊(本当は桃隊)のスナイパー応援5人で合計35人。
訓練は既に積んでいる。狙いは的確。コイツらだけでも殺れる。
ザッ、ザッと土を踏む音がする。その音はだんだん近づいてきていて、味方に重苦しいプレッシャーをかけていく。
『敵勢力確認。奇襲をかけます』
聞いていたかは知らないが、通信はしておいた。まずは……そうだな、刀で行くか。
音を立てずに木から飛び降り、中央に躍り出る。
相手の慌てる声。手にした日本刀を真っ直ぐに持ちくるりと回転する。
軽くて切れ味のいい特注の日本刀だ。たちまち辺りには赤が舞い、その色に染めあげる。
牽制するように辺りを見渡すと、倒れた1人がボクに銃口を向けている。落ち着け。こういう時は……
パァン!
「ナイスです、吹さん」
「どーいたしまして♪」
澄んだ空気に鳴り響いた、乾いた銃声。そいつの手を吹き飛ばす、威力のある弾。こんなに的確に当てられるのは吹さんしかいない。さすが。
後はピストル隊で細かいのを殺れば……
「三室隊長! 1人で突撃するの辞めてくださいよ!」
「別に。怪我してないからいいだろ」
部下がやっと追いついてきて、清掃を始める。ここはもう任せていいか。ピッ、とちょうどいいタイミングで通信機が鳴り、誠の声が聞こえた。
《香、そこにいるか?》
『あぁ。片付けた』
《戦況が危ない翔の所に応援に行ってやってくれ》
『了解』
「吹さん! ボクちょっと応援行ってきます! ピストル隊A、刀隊Aついてこい!」
「OK♪頑張ってね!」
「「「「「了解っす!」」」」」
A班は5人で編成されている。つまり今連れてるのボクを入れて11人。
はぁ、翔の奴、なにしてるんだよ。苦戦しているなんて珍しいな。