嵐山 翔
ボスと別れてやっと自分の部屋に帰ってきた……って、え? 眼前に広がるは緑に統一された部屋。
「これはもしかして……」
「何の用ですか、三室さん」
「部屋、違う……?」
ここ、翔の部屋じゃん。ボクの部屋じゃ、ないじゃん。無駄なものが省かれた、スタイリッシュな部屋。黒と緑と白銀の最低限の家具が並んでいる。少なくとも、ボクにはこんな事できません。こんなに家具が少なかったら生きていけない。だって、クロゼット、ベッド、キッチン、本棚、ソファとデスクセットしかない。
「で、何の用ですかと聞いているのですが」
「ごめん、部屋間違えた」
「はぁ、何回目ですか?」
「今月で3回目……かな」
「まぁ、用がないのならお帰りください」
翔の部屋とボクの部屋は隣同士。だからよく間違うんだよね……まぁいっか。来てしまったものは仕方ない。少しゆっくりさせてもらおう。
「やだ。翔、ボクアプリコットティーね」
「はぁ、めんどくさいですね……で、角砂糖何個にしますか?」
「翔ってホント優しいよね……あ、ボク角砂糖8個、ミルク多めで!」
「病気になりますよ、4個だけです」
「ちぇー、ケチ」
4個も病気になりそうだけどね。はぁー、優しいなぁ……。どこぞのセクハラボスとは大違いだ。
顔はそっくり……というか全く同じ顔なんですけど。同じ服装していたらわからないくらい。2人は一卵性双生児。身長もそっくりなら見た目もそっくり。性格も……いや、真反対か。声も違い、ボスは艶やかな声なのに対して翔は爽やかで落ち着いた声。
どっちも癒される声に違いない。ボクも恋する乙女なんだなぁ、しみじみ。
なんてね、嘘。
「ちょっと、聞いていますか? お茶入りましたよ」
「あ、ありがと。もらう」
1口飲んでみた。甘い。美味しい……
お茶の香りがふわりと広がって、心の芯から温まる、気がする。翔の作る飲み物を飲んで、吹さんの作ったスイーツを食べる時が1番幸せかもな……。
「そういえば翔って、なんでこんなに飲み物系作るの得意なの?」
「それは俺が不味い物を飲みたくないだけですよ。当然です」
「へぇー、そりゃありがたいね」
「必要ならお茶ぐらいすぐいれてあげますよ?」
単純。頭は切れる秀才なのに、変なとこ単純だから騙されそうで怖いな、本当に。ちょっと褒めたくらいで絆される所とかは、ボスと一緒なんだな。本当の事言っただけなのに、これからは気をつけないと。
お茶を飲み終わり翔に礼を言う。今日はもう遅いから、お風呂入って寝るか。そう思いながら部屋を出た。




