何を学べと言うのですか!?
トントン、と遠慮がちにノックする。ドアにはオレンジのスカーフ。
「失礼します……」
「あ、やっとか」
今は葉の部屋に来ています。ボスに行けって言われたからだけどね。じゃないとあんまり来ない。紅ちゃんがいない限りは。
「ん、とりあえずそこ、座れば?」
「は、はい」
葉は黒や紫など、暗い色が好きだ。
雰囲気的にもそのほうがいいと思う。だってDarknessLeaf。……これ以上言ったら殺される。部屋も他の幹部の部屋と違って黒を基調としたスタイリッシュな部屋だ。ところどころにイメージカラー(?)である橙色の小物があるから、ハロウィン感が拭えないんだけど。
緊張……するよね。葉は毒舌だし暗いし、怖い。
「はぁ……オレみたいなクズを頼るとか本当状況クソだな」
「いえ、クズじゃないですよ」
「……」
こ、怖いっ! ボクに何をしろと? 自虐されたらフォロー出来ないよ、こっち下だし、そんなに話さないから。
「そういやさ……」
「は、はい!」
「その敬語、うっとおしい」
「え……?」
「ずっと思ってたんだけどさ、年もそんなに離れてないわけだし」
「は、はぁ……」
葉がこちらをじっと見つめる。悪戯を思いついた子供のように、ただ純粋な輝きを孕ませた瞳は、やっぱり紅ちゃんとは違うんだな、と思う。
「おっさん共にはタメ口なのにオレには敬語なんだな……ふふっ、ウケる」
「え! えっと、その……」
「なに、オレじゃダメなの?」
「いや……」
口角が少し上がったように見える。……ただ、ボクの困る姿を見て楽しんでいる。でも、少しして、急にそっぽを向いてボソボソと何かを言う。あんまり聞き取れないけど。
(オレはただ、敬語じゃなくて、お前と普通に話したいだけなのに。アイツらばっかりズルいんだよ、察せよバカ)
間違ってなければ、こう言ったはず。
「わかりまし……いや、わかった。葉。これでいい?」
「………ふーん。別にいいよ」
すごい残念そう。だけど、葉はどこか満足そうな表情を浮かべた。正面に向き直り、頬杖をついた隙に長い前髪で隠した右目が一瞬だけ、ちらりと見える。
……見間違いじゃなければ、色が、違う?
「そういや葉、右眼ってさ」
「……別に。オレ片目でも戦えるし」
葉は、サラサラで、少し紫がかかった髪の上から右目に触れる。左眼は髪と同じ少し紫がかかった黒。濃紺の、軍服? のような服を着ているからか、紫が目立つようだ。帽子は脱いでいるが。
……これ以上触れないほうがいいか。
「ところで、何教えてくれるの?」
「……あ、忘れてた。ちょっと待ってて」
葉が目を瞑る。こうして動かないと、まるで石像のようだ。真っ白な肌、長い睫毛が落とす影。整いすぎた顔立ちはどこか現実離れしていて、夢でも見ているようだ。
数秒後……
ドンドンドンドンドン!
すごい勢いでドアが鳴る。……ボクは察した。