びっくり!潜入大作戦
〜香side〜
ええぇえ……
やっと終わったと思ったらまた作戦? 本当に? 嫌だな、やる気がわかない。でも翔じゃなくて、ボスが直々ってことはなんかあるってことだよね。
てか、ボクらどこいってんの? 確か、紅ちゃんの病室って言ってたけど……紅ちゃん、怪我でもしたのかな。珍しく。
……って、え。
「紅ちゃ……ん?」
真っ白なベッドの上で、少し黄がかかった病院で着てる服? っていうのを身にまとった紅ちゃんが、まるで死んでいるかのように蒼白な顔をして眠っている。
ボスが呆れたような心配そうなどっちつかずの顔をして葉に話しかけた。
「これ、ほんとに大丈夫? 死んでねぇの?」
「……紅は丈夫だから……」
「ま、お兄ちゃんが言うならそうかもな」
「…………あ、起きた」
「キェエエエエエッ!!!」
「いやぁぁぁああああ!!!!」
「へぁっ」
「う゛っ」
紅が急に目を見開いたかと思うと身体をガバッと起こし奇声を発した。
その声に驚いて香は悲鳴をあげペタリと座り込み、ヘタレ代表誠はなんとも情けない声をあげた。涼は上半身(顔以外)にまいた包帯を握りしめ、低い声を漏らす。
蓮は余裕たっぷりな笑みを浮かべ、葉はなんともないようにテキパキと医療班に指示を出し始めた。
翔はすこし眉を顰め、吹は面白いものでも見るようにワクワクとした瞳で見つめている。
「おっと、ビビり代表お2人さん、大丈夫ー?」
「だまれビビりは誠で十分なんだよクソボス」
「ノンノン☆俺は全くビビっていなかったぜ?」
「「嘘つけ!」」
「みむぅ、ナにしテルの?」
「いや、なんにもないよ?」
「声、凄かッタね!」
「うるさいー」
そんなやりとりを楽しそうに見ていた吹が、
「ところでボス、作戦ってなに?」
「あはぁ、それねぇ」
全員がその瞬間、ピタリと止まり、和やかな雰囲気は打ち消された。その全員が、真剣な面持ちでボス、蓮を見つめる。何が告げられるのか。何が始まるのか。
「今回の潜入作戦は、えっとー、潜入する所は環素羅組なんだけど」
「当テ字やばイネ!」
「まずはメンバーを発表する。
三室 香」
「……え?」
なんでボク? 1番経験浅くて、潜入なんてしたことないのに……?
「大丈夫だってかおるん、俺があとで様子見に行ってやるって」
「え、まってボク1人?」
「そうだけど。んー、不安なの?かおるん不安なの?」
「○ね」
作戦内容……これに全てがかかっている。出来るだけ簡単なのがいいな。失敗したら、組の存続に関わるかもしれない。
「今度さ、環素羅がパーティ開くじゃん?」
「うん」
「そんなかに潜り込んで、ボスを騙してコロッと☆」
「確か環素羅が開く悪趣味なパーティって女だけ一般招待じゃなかったか? 警備も厳重らしいぞ」
「大丈夫大丈夫、かおるんに女装してもらうから」
「……は?」
はぁぁぁあ!? 聞いてないんだけどおお? てか女装? ボクが女ってバレるんじゃない? いや、バレてる?
「かおるん可愛いし、さっきの悲鳴の声高かったし、細いし軽いし、それに俺が女装見たい」
「お前それ本音だろ」
「バレちゃったかぁ」
「うわ、ひくわ」
うわぁぁぁキモい……
「やだ、絶対やりたくない」
「え? もうドレス用意しちゃった☆奮発して高いの☆」
「マジかよ……」
「これこれ! じゃじゃーん!」
えぇ、マネキン登場……!?
ローズピンクを基調とした上半身はスッキリと絞り、スカートはふんわりと広がり、光を受けてキラキラとひかる銀色の薄いリボンがゆったりと縫い付けてある。
イメージカラー、韓紅の宝石とダイアモンドを胸の部分のリボンの結び目ととスカートに散りばめ、肩にふわりとかけられたストールにも帯のように点々とローズピンクの宝石が縫い付けられており、金色のふちと相俟ってなんとも豪華なつくりだ。
「紅ちゃん、やる……?」
「ん? ナんデ? こレ、みむ用だよネ?」
「というわけでかおるん、頑張ってね〜。あ、今日から前髪以外、切るの禁止な」
「はぁぁぁぁぁ!?」
「あと、ドレスに隠してる細工、教えるから後で俺の部屋来てくれ」
「チッ」
自分勝手なやつ……。しょうがないな、あとで行ってやるか。