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酔いどれ腐れ  作者: フロード【fload】
第零章〜嵐組〜
13/59

影武者

〜翔side〜


 どういう事なんですか、まったく。予想外の現象です。……まさか、こんな事が起ころうとは。


「あらぁ、貴方が翔ちゃん? ♡」

「貴方、死んだんじゃないんですか? ……侘」


 竜田さんから通信があり数分。侘は三室さんと川崎さんが仕留めたはず、なんですけど。目の前にいるこの人は間違いなく侘そのもので……


『こちら嵐山。侘を……発見しました』

《……ん〜? Why?》

『こっちが聞きたいですよ』


「翔ちゃん、何話してるのぉ♡」

「うるさいです。ぶちのめしますよ?」

「ぇー、酷ぉい♡そういうとこ、可愛いんだけど♡」

「……気持ちの悪い」

「酷いわね♡素直で可愛いわ♡」

「ちょっと黙ってくれません? 貴方侘なんでしょう?」

「そうよ? なに、影武者ちゃんに会ったの?」

「影武者……だったんですか」

 

 ガンッ


「ドぉォオオおおオオおンっ!!!」

「紅、静かにして」


 ドアをぶっ飛ばして2人が入ってくる。紅さんと葉さん。随分派手な登場ですね。普段通りそうで何よりです。(主に葉さんが)返り血だらけなだけで、どこも怪我などは無いようですし。それにしても、まとっているオーラが相変わらず月と太陽の如く違いますね。


「貴方達が伊吹兄弟ね♡はじめまして、侘よ♡」

「Who are you? I don't know you!」

「てめぇ誰だよ。知らねぇおっさんだなってさ」

「もウ!葉、僕そんナニ口悪クナいヨ!」

「……」

「あらぁ! 小さくて可愛いわ♡」


 侘が言った瞬間、ピクっと紅の肩が震える。元からハイライトのない瞳が、さらに怒気を孕み輝きをなくし、まるガラス玉のようだ。その太陽のような明るいオーラには、バキバキとヒビが入り、ドス黒いオーラが溢れ出てくる。……まるで、別人。その事を知ってか知らでか、ゆっくり紅が口を開く。


「は?誰が身長小さいなんつった……?」


 ビッタリと口元に張り付いた笑みがさらに怪しさを引き立てる。もちろん、眼は笑っていない。その隣にいる葉は、いつもと変わらず、ヤレヤレといった様子で紅をなだめている。


「こっわいわぁ♡キャー、翔ちゃん、守ってぇ?」

「嫌です。死になさい」

「きゃあ、敵しかいないのぉ? 部下ちゃんたちどこぉ♡?」

「……アンタの部下なら全員潰したよ」

「ソうだヨ! アハはは! 弱かッタよ! ザッコいのー!」

「嘘ぅ、やだ♡こ わ い わッ!!」


ヒュンッ!


「痛っ……イ」

「紅っ!? 大丈夫かっ!?」

「全然! へーキッ! アハハ!」


 右肩に刺さった小型のナイフ。本人は平気そうだが、服がみるみるうちに真っ赤に染まる。紅さんは大丈夫って強がって、周りに心配をかけまいとする。いい所ではあるはずなんですけれど、俺は苦手な所ですね。


「あら痛そ♡」

「クソ……俺の弟になにしてくれてんだ……ぶっ潰す」

「あら随分と饒舌になったわねぇ♡お姉さん嬉しいわ♡」

「テメェお姉さんじゃねぇだろ、ジジイ」

「お姉さんよ? 心は、ね♡」

「死ね」


 ヒュンっと音を立てて何かが葉の手から放たれる。


 ジャララ、と鎖が金属が打ち合うような大きな音を立てる。葉の武器、鎖鎌。双方に鋭い鎌がついていて、鎖は葉が丁度腕を広げた長さ。ヌンチャクを操るように振り回したり、両手に持ってぶん回す。そんな武器。

 ちなみにすごく重くて、こんなものを振り回せるのは手馴れた葉じゃないと、川崎さんでも自分に刺しそうで回せないようです。


「うっふふふふふ♡どこ振り回してるの、おバカさん?」

「……うっせ」

「そんな動き、お見通しなのよ♡翔ちゃんは、ボスとそっくりねぇ♡武器は日本刀とピストル。スナイプもできるんだっけね?」

「何故……わかるんですか」

「うふふ♡なんでかしらねぇ♡……グッ!?」

「ベラベラ喋りやがって……邪魔なんだよ」

「誰カら情報もラっタノー? 早く吐イて?」


 葉の鎌が腹部を切り裂き、紅の投げナイフが脚部を突き刺す。


「くっふふふ♡スパイでもいるんじゃない? ……あと」

「スパイ?そんなのいないと思いますけど、誰ですか」


 侘は震える指で紅を指さす。


「顔色悪いわよ、紅ちゃん♡毒が回ってきたのかしら」

「!!?? 紅っ!」

「スパイのヒント……♡その子は女の子、よ♡」

「だから誰だっつってんです。……てもう、息絶えてますね」


 死体をつついてみる。反応はない。


「頭がグラぐラスる……葉、どうシよウ……?」

「紅っ、あの、ナイフか……?」


 ……ハッ、紅さん……!? 顔色が少し悪いですね……さっさと医療班に引き渡さないとマズそうです。


「紅さん、貸してください。俺が医療班の所まで運びます」

「……ダメだ、ナイフを持って本部に行かないと、解毒剤の種類がわからない!」

「そ、それもそうですね……急ぎましょう!」


 何故。俺が、判断を間違えたのですか……? 医療班じゃダメです。普段ならそう言う側なのに。疲れてるんですかね。……疲れてるだけだといいんですけど。


『こちら嵐山。負傷者1名、本部に搬送するため離脱します』

《おう、翔、気をつけてな。怪我か?》

『そうですけど……毒です。紅さんが危険な状態です。解毒剤と毒の鑑定の準備を』

《あの紅が……わかった。すぐ出来るよう準備をしておく》

『了解です』


 さっさと行かないと紅さんが大変な事になりますね……


 意識をなくしぐったりとした紅を抱え全速力で走り出す。翔は組織の中でトップクラスの速度を誇る。さらに体力値も高く、スピードにおいて勝る者はいないとまで言われているほどだ。

 このスピードなら、陣まで5分。本部までは車で15分。……つまり、20分。いくろ丈夫な紅でも、毒によってはやはり危ない状態になる。しかも、幹部を失うと戦力と士気におおきな影響が出る……

 頭に思考を巡らせながら、翔は陣を目指し走っていった。

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