龍の国JIPANG ~剣の巫女~7
龍の国の皇帝、玄は、五部族を統一した後、都を中央に置き、白い宮殿を建てた。皇帝には五人の妃たちがいた。そのうち、一の妃である空の部族の祥華は第一皇子伯を産み、皇后となった。皇帝は皇后とその子どもたちを白い宮殿に住まわせたが、他の四人の妃たちと皇子たちをそれぞれの部族へ帰した。そして、それぞれの部族長を将軍として仕えさせ、皇子たちを教育させた。
龍の国の皇子たちはそれぞれの部族を従え、立派に成長した。
この日、皇帝は5人の皇子たちを皇宮へ呼んだ。ついに皇太子を選ぶ時が来たのだ、と皆思った。そして、龍の巫女の降臨。皇宮の広間には大臣たちや各部族の代表が集まり、皇帝の勅旨を待っていた。
(あれが5人の皇子たちね…。)
朱花は皇帝の前に並ぶ5人の皇子たちを見て思わず息をもらした。昨夜偶然会った二人の皇子もいる。鷽皇子も正装してその場にいた。そのほかの年若い二人の皇子たちも皆美しかった。
(これだけ皇子がいれば皇位継承も大変よね…。)
優劣などつけられないほど、5人の皇子たちは皆立派に見えた。朱花は一歩下がったところでかしこまりながら、ちらりと横目で皍皇子を見た。昂皇子は冷たい表情のままだった。昨夜のことは気にも留めていないようだ。反対に伯皇子から優しい微笑みを返されてしまった。
(それにしても、なぜ私がこの場にいなくてはいけないの⁉)
自分はこれ以上にないほど着飾られ、重い衣装に肩が凝りそうだった。
すると、皇帝が重い口を開いた。
「御影よ、この娘が龍の巫女であるか」
「はい、確かに赤い星でございました。この娘が剣の巫女に間違いございません。」
皇帝のそばに控えていた銀髪の男が答えた。
「龍の剣をここへ持て。」
「はっ」
御影と呼ばれた銀髪の男が包まれた布をほどき、古びた剣を皇帝へ献上した。
「朱花とやら、ここへ」
「えっ!は、はい…。」
朱花は恐る恐る皇子たちの目の前に出た。皇子たちの視線が自分に集まり、朱花は恥ずかしさのあまり顔があげられなかった。
「剣の巫女よ、剣を手に取るがよい。余の息子たちの中に龍の子はいるのか、示してみせよ。」
「えっ⁉ 示す…⁉」
訳がわからなかったが、皇帝の威圧感と周りの雰囲気にのまれ、何も言えないままその古びた剣を手に取った。剣はただの骨とう品のように見えた。しかし、朱花が触れると、その剣は不思議な青い光を帯びてきた。周囲がどよめく声が聞こえた。
(これは…⁉)
朱花は剣が熱くなるのを感じた。それと同時に胸が熱くなり、吸い込まれるように剣の柄に手をかけた。
少し力を入れると剣は鞘からその美しい姿を現した。青く光る研ぎ澄まされた鋭利な刃先が朱花の顔を照らした。
(ああ、この感覚、覚えているわ…!)
遠くで龍の鳴き声がした。朱花は迷いなく、5人の皇子たちのうちの一人に、その刃先を向けた。
「皍皇子様、あなた様がこの剣の主。私はあなたにお仕えする龍の巫女です。」
何を勝手な…!と皍皇子がこちらを睨み返していた。金色の瞳が怒りに光帯びていた。