異変
今までスペースの使い方がわからなかったのですが、今回からは使っています。
放課後、地島陸斗、丘田山、雨宮雪乃の3人は、奇妙な部活の顧問である草寺葉優先生のもとに来ていた。
陸斗と山は、中学からの同級生。雪乃は高校で初めて一緒になったが、3人とも気が合ったのか、異性の友だちという感じではなく、同性の友達のように気軽に話している。
ただ、3人とも個性が強いといえばいいのか、意見の食い違いなどもちょくちょくある。
陸斗は、大抵のことには興味を示さない。興味があるうちの一つを挙げるならば人間、いや、他人だろう。「他人優先」をモットーとする陸斗は、周りから見れば生きづらそうなことでも、楽しいと感じている。そういうこともあってか、多少不思議な陸斗も、みんなから人気があるのだろう。
「草寺先生、少し聞きたいことがあるんですけど。」
と言った山は、誰とでも気軽に話すことが出来る。そこだけ聞くと、コミュニケーション能力が高く、いい事のように思えるが、少し度が過ぎてめんどくさい時もある。慣れている陸斗からすれば何の問題もないのだが。
「せ、先生が顧問をしている部活について、教えて、くれませんか…?」
そう言ったのは雪乃。雪乃は、山とは打って変わって人と話すのが苦手だ。それだけならまだマシ。けれど、話す時に緊張しているせいか、強い口調になってしまい、相手を怖がらせてしまう。
どうやって雪乃と普通に話せるようになったのかは分からないが、陸斗と山など仲のいい人とは普通に話せる。先生や目上の人と話す時も緊張はするが、強い口調にならないように気をつけている。
普段からそれができれば苦労もしないが、出来ないから困っている。
また、普通に話している雪乃を、少なくともクラスの人は見ているはずだがやはり怖がっている。
「私が受け持っている部活ねー…。入部でもしたいの?」
と、草寺先生は苦笑いで答える。
奇妙な部活があるという噂を聞いたこと。教室で3人で話していたこと。それらを山が草寺先生に伝えた。
実は、山が聞いたという噂と陸斗が聞いたという噂には違いがある。山は、相談を受ける部活と言っていたが、陸斗が聞いた噂では生徒を口喧嘩で追い払う。という意味のわからない噂だった。しかし、これを教えたところで何も変わらないと思った陸斗は、黙っておくことにした。
「まあ答えられる範囲でなら教えてあげるわ。まずは何から?」
「じゃあ、部員を教えて貰っていいですか?」
「川村海恵。あなたたちと同じ1年生よ。」
「……」
「1人だけ、ですか?」
「ええ、そうよ。」
「1年生ってことは、最近入部したばかりですよね?」
「ちょうど三日前ぐらいだったと思うわ。」
「ってことは、その変な噂は前にその部活に入っていた先輩達のせいってことですか?」
「恐らくはそうだろうけど、その子が話を大きくした部分も少なからずあるとは思うわ。」
私としては好ましくないんだけどね。とまたも苦笑いをする草寺先生。
「ど、どうして、そんな噂が立っているん、ですか…?」
「面白半分で入部した子ばっかりでね、まともに相談を受けずに、相談しに来た子を追い払ってたからだと思うな。」
「先生は止めなかったんですか?」
「部の設立は割と最近らしいけど、まだその時私はこの学校にいなからったからなー。でも、あくまでこれも噂だけど、前の顧問はそれを面白がっていて、止めようとはしなかったらしいよ。結局そのまま部活は行われていったらしいよ。私は来た時には止めようと頑張ってたけど、無駄な努力だと思って諦めちゃったからなー。」
またまた苦笑い。
「川村、さん?が話を大きくしてた、っていうのはどういうこと、ですか…?」
「川村はね、前までとは違って、入部希望者が来たら面談?をするようにしてるんだよね。面白半分出来てる生徒も、真面目に入りたいと思ってる生徒もそこの人数が来たんだけど、全員入部させなかったのよ。まあそんなことがあったからだと思うなー。」
そこで陸斗は考える。入部希望者を全員入部させなかった。それだけなら、全員が入部させられるようないい生徒じゃなかったという可能性もあるだろう。いや、実際そうなのだろう。彼女(川村海恵)からすれば。そして、陸斗が聞いた噂、口喧嘩で生徒を追い払う。これは、入部を断られた生徒が流した噂であり、事実。だったとしたら……。
陸斗は今までにないほどその部に興味を抱いていた。
「それで、君たちは情報を集めておしまい。なんてことないと思うけど、これからどうするのかな?」
「え、いやー、それはですねー…。」
「……」
2人が返答に困っている中、陸斗だけが、威勢よく、はっきりと答えた。
「入部します!」
「は?」
「え…。」
「ほんとに…?」
山、雪乃、草寺先生の順にマヌケな声を上げる。
「入部希望ってことでいいのかしら…?」
草寺先生にそう聞かれ、何言ってんだ?今の話聞いてたの?と不安な表情で問いただしてくる。
しかし、今の陸斗には聞こえなかった。
「いえ、希望ではありません。俺たち3人は、その部活に入部をします。」
まるで、もう入部することが決まっているかのように陸斗は告げた。
そこまで異常な程に驚くことではないが、唐突なことすぎて、意識が飛んでいるかのように硬直して動かない二人を無視して続ける。
「興味があるからというのももちろんあります。けれど、川村さんにも一度会ってみたい。そして何よりも、相談を受けるというその部活で、学校の為に、みんなの為に活動したい!」
明らかに自分1人の都合ではあるが、これは陸斗の心からの本心であった。そこに嘘偽りは一切ない。少なとも今の陸斗はそう感じていた…。
《目を覚ませ…。おまえは一体何になりたい?》
気のせいだろうか。今、誰の声でもない、不思議な声が頭の中に響いた気がする。でも確かに聞いたことのある声。しかしそれを思い出すことはできない。
「陸斗?どうしたの?」
ハッとして周りを見ると、先程とは打って変わって怪訝そうな顔を浮かべる僕に困惑の視線を向ける3人がいた。
幻聴…?いや、それとは明らかに違った。
薄気味悪い現象?に、ひどく気持ち悪く感じ、同時に何か大事なことを忘れているような気がした。
ようやく話が進みだしました。