第八十五話
艦これBGMだと『戦争を忌むもの』になる三好ミッドウェー海戦
「敵機直上ォォォォォォォ!! 急降下ァァァァァァ!!」
「取舵20!!」
見張り員の絶叫、将和は瞬時に操舵室へ繋がる伝声管に向かって叫んだ。操艦手も瞬時に反応して加賀が取舵をする。飛行甲板はまだ攻撃隊がいたが零戦隊の発艦後で九九式艦爆隊が疾走する前だった。
急降下してきたのはSB2Uビンジゲーター急降下爆撃機12機とSBDドーントレス急降下爆撃機16機だった。どちらも米機動部隊から発艦した機体ではなく、ミッドウェー島から発進した機体だった。
「来るぞォ!!」
「あのミートボールに叩き込んでやる!!」
加賀は8機のSB2Uに襲われた。
「艦長、操艦借りるぞ!!」
将和は叫び急降下してくるSB2Uを睨む。
「取舵20!!」
SB2Uが1000ポンド爆弾を投下するが外れる。二機目、三機目も外れる。四、五機は両用砲に撃墜された。六機、七機目は面舵にすると思ったのか違う方向に爆弾を投下してしまう。八機目も投下するがこれも将和の指示で外れるのであった。
「ぜ、全弾回避……」
将和の操艦技術に岡田艦長は茫然とする。しかし、突如爆発音が聞こえてきた。
「赤城被弾!!」
「何ッ!?」
赤城はSBD6機、SB2U4機に襲われ1000ポンド爆弾四発が命中。1000ポンド爆弾は飛行甲板を突き抜けて格納庫でその力を解放した。格納庫には爆弾と魚雷を搭載した九九式艦爆と九七式艦攻が待機していた。そのため格納庫では誘爆が相次ぎ、複数の爆発で中部エレベーターが吹き飛んで海上に転落してしまう。
「お、応急急げ!!」
「駄目です、誘爆が激しく散水器が作動しません!! 消火不能!!」
赤城艦長の青木大佐が叫ぶが応急長はそう返すのがやっとだった。
更にSBD10機が空母蒼龍を強襲、蒼龍は回避性能を活かして回避していくが1000ポンド爆弾三発が命中し赤城同様に誘爆して炎上したのである。
「蒼龍がやられた!? 二航戦の一角が崩れるぞ!!」
「攻撃隊は何処に降ろせばいいんだ!!」
「空母蒼龍被弾!! 誘爆により火災が激しく手が付けられない状況です!!」
「………」
将和は通信員からの報告を黙って聞くだけだったがやがて口を開く。
「敵攻撃隊は?」
「零戦隊が全て落としました」
「宜しい、ならば攻撃隊の発艦を続行する。第四駆逐隊は赤城と蒼龍の救助せよ」
「長官……」
「空母二隻……やられたまま帰るわけにはいかん!!」
将和に闘志の炎がたぎっていた。攻撃隊(零戦36機 九九式艦爆54機 九七式艦攻45機)は編隊を組むと一路敵機動部隊を目指した。
「北東方面から反応!! 敵攻撃隊です!!」
「対空警戒を緩めるな。そろそろミッドウェー島爆撃隊が戻ってくるな」
「えぇ。正念場でしょう」
ミッドウェー島爆撃隊は第一航空艦隊上空に帰還すると炎上する赤城と蒼龍に驚愕した。
「三好中隊長!! 蒼龍が……」
「畜生、急降下爆撃でやられたんだ……」
偵察員の結城一飛曹の報告に将弘は舌打ちをする。将弘の中隊は加賀に着艦し将弘はそのまま加賀の防空指揮所に上がってきた。
「親父」
「将弘か、第二次攻撃隊を編成中だ。お前も行ってこい」
「あぁ、やられたままじゃあ蒼龍に顔向け出来んからな」
将弘は力強く頷き防空指揮所を後にするのであった。
「敵攻撃隊接近!!」
「迎撃の零戦隊が空戦を開始します」
39機の零戦隊が五月雨式に進撃してくる米攻撃隊を攻撃する。
「先にSBDを叩け!! 奴等を逃したら赤城と蒼龍の二の舞いになるぞ!!」
迎撃隊を指揮する岡嶋大尉はそう叫びつつ逃げ惑うSBDの後方に回り機銃弾を叩き込んで撃墜する。それでも米攻撃隊は五月雨式ながら140機と数が多く零戦隊の迎撃網を突破してくる。
「三式弾、砲撃始めェ!!」
河内型四隻が米攻撃隊に砲撃を開始する。41サンチ三連装砲から放たれる三式弾は凄まじく、瞬く間に10数機が撃墜された。
「弾幕射撃、始めェ!!」
将和の号令と共に全艦艇の両用砲、対空機銃が射撃を開始した。将和が鍛えに鍛え上げた弾幕射撃は米攻撃隊を寄せ付けなかった。
「シット!! なんだあの対空射撃は!?」
『まるで暴風だぜ!!』
被弾した機体を操りつつ米パイロット達はそう愚痴る。特に艦攻隊であるTBDは実に41機中、帰還したのは僅か3機という有様である。
また、SBDも75機中53機が零戦隊の空戦と弾幕射撃で撃墜されている。しかし、米軍もヤンキー魂を発揮した。
「敵機直上ォォォォォォォ!! 急降下ァァァァァ!!」
空母阿蘇上空にSBD6機が急降下爆撃を敢行、阿蘇は1000ポンド爆弾二発が命中し飛行甲板がめくり上がったので空母の機能は停止した。
この時点で第一航空艦隊は空母赤城、蒼龍が大破炎上。阿蘇が中破(発着艦不能)という状況だった。勿論、この情報は旗艦大和にも届いていた。
「赤城と蒼龍が大破炎上、阿蘇中破か……」
「………」
堀と鉄仮面こと宇垣は渋い表情をしていたが黒島は喚いていた。
「三好大将は何をしているのですか!? 空母運用一の責任者がなんたる様ですか!! 三好大将は恥を知るべきです!!」
「ッ!?」
黒島の言葉に堀は黒島の右頬に右拳を叩き込んだ。
「ガッ!?」
「それ以上喋ってみろ……次は軍法会議が貴様らを待っている」
無表情の堀とその言葉に黒島は無言で何度も首を縦に振った。
「目障りだ、連れていけ」
宇垣は従兵にそう言い、黒島は抱えられるように艦橋から退出したのである。
「……てっきり君は反三好派だと思っていたよ……」
「いえ、これでも三好大将には河内型の建造を支えてくれたりとしたので我々戦艦屋からの評価は高いです」
宇垣は苦笑しながらそう言う。
「ハッハッハ、成る程な。では三好を助けに行くとするかね」
「えぇ。今更ですがね」
GF直属と第一艦隊は速度を増して第一航空艦隊へ向かったのである。
第一航空艦隊から発艦した攻撃隊は米機動部隊――第17任務部隊のヨークタウンとワスプを発見した。
「敵機動部隊だ!! 空母は全て沈めるぞ、全軍突撃せよ!!」
攻撃隊総隊長の村田少佐は指示を出す。第17任務部隊上空にいたF4F隊が攻撃を阻止せんがため迎撃するが零戦隊がそれを阻む。
「頼むぞ零戦隊……」
艦攻隊は高度を下げつつ艦爆隊は高度3000を維持しつつ飛行している。
「狙うは敵空母だ!! 雑魚には構うな!!」
天城艦爆隊隊長の小川大尉はそう言い突撃を開始する。第17任務部隊は対空射撃を開始するが小川大尉の艦爆隊はものともしなかった。
「撃ェ!!」
小川大尉は高度500で250キロ爆弾を投下して上昇しつつ離脱する。小川大尉が投下した爆弾は空母ワスプの飛行甲板に突き刺さり格納庫で爆発した。
「よし、やっ―――」
小川大尉は左手を上げて喜びを表現しようとしたが直後に対空砲弾が小川大尉機に命中、爆発四散して小川大尉と偵察員は戦死したのであった。
「艦爆隊がやりました!!」
「よーし!!」
村田率いる艦攻隊は高度5メートルを維持しつつ飛行していた。対空砲弾が容赦なく襲うが艦攻隊は空母を沈めるため突撃する。
「距離1000!!」
「………」
偵察員の星野が距離を読み上げる。村田は投下索に手を添えた。
「距離800!!」
それでも投下索を引かない村田。不意に右を飛行していた列機が吹き飛んだ。
「三番機直撃!!」
「距離は!!」
「距離700!!」
「撃ェ!!」
村田は投下索を引いた。村田の中隊も次々と魚雷を投下して離脱する。投下した魚雷は真っ直ぐ狙った空母ワスプに突き刺さった。
「命中!! 水柱四本です!!」
「良し」
攻撃はまだ終わりを告げる事はなかった。
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