第八十四話
久しぶりの一日二話書き
「この作戦計画書は何だね!?」
「次期作戦計画であります」
海軍省で宮様は井上中将相手に吼えていた。宮様の怒号に井上は冷ややかだった。
「誰がミッドウェー島攻略を許可なんぞしおった!!」
「嶋田大臣です。それと永野総長もです」
「ぬぅ……」
5月に宮様は軍令部総長を退任して海上護衛隊の方に力を注いでいた。後任は永野修身であった、宮様にしてみたらまだ自身の影響力を保持出来ていると思った。しかし、そうではなかった。
「話はそれだけですか? それなら失礼します。何せ次期作戦の事で忙しいので」
井上はそう言って部屋を退出した。宮様は無念の余り机を叩きつけた。
「おのれぇ……海軍を死地に追いやるつもりか米内ィ!!」
発端は帝都空襲だった。事前に防げたとはいえ、伊号潜が発見してなければ帝都は空襲されていただろう。なら、どうする?
答えは簡単だった。
「米機動部隊が近場を航行していたミッドウェー島を攻略する。そうしたら必ず米機動部隊は出てくるはずだ」
予備役の米内は海軍次官の山本と軍務局長に再任した井上らとミッドウェー島攻略を構想した。作戦内容は山本の子飼いとも言うべき黒島だった。
山本と井上は嶋田を説得すると永野らも説得に成功して黒島は意気揚揚と堀にMI作戦を提案して海軍省と軍令部も乗り気だと伝え、後は先程の通りであった。
(これが……これが歴史の力だと言うのか……)
黒島が自信満々に作戦内容を説明するが将和にはその内容は入ってこない。ただ愕然としつつ拳を強く握り締めるのであった。
その夜、将和は久しぶりに自宅に帰宅すると出迎えた夕夏の手を取り自室に連れ込んで夕夏を力強く抱き締めた。
「……そう……私で良ければいいわよ」
将和の異変に気付いた夕夏は将和の頭を撫でつつそう答えた。
「いや……今は傍にいてくれ」
「はいはい」
将和の言葉に夕夏はニッコリと笑い将和の頭を撫でるのであった。そしてMI作戦は発動された。
参加艦隊は将和の第一航空艦隊、高須の第一艦隊、近藤の第二艦隊、そしてGF直属部隊である。
~第一航空艦隊~
第一航空戦隊
加賀 天城 赤城
第二航空戦隊
蒼龍 飛龍
第七航空戦隊
阿蘇 生駒
第三戦隊
河内 因幡 岩代 薩摩
第七戦隊第二小隊
鈴谷 熊野
第八戦隊
利根 筑摩
第一護衛戦隊
五十鈴 名取
第一水雷戦隊
阿武隈
第四駆逐隊
嵐 萩風 野分 舞風
第一七駆逐隊
谷風 浦風 浜風 磯風
第十駆逐隊
秋雲 風雲 巻雲 夕雲
第三十一駆逐隊
長波 巻波 高波 清波
第六十一駆逐隊
秋月 照月 涼月 初月
第六十二駆逐隊
新月 若月 霜月 冬月
他の艦隊は多少変わる程度だった。第一航空艦隊には秋月型の新月以下四隻が第六十二駆逐隊を編成して加入していた。
(史実に比べたら秋月型が八隻もいるが……)
将和は豊後水道を抜ける加賀の防空指揮所から前方の海上を見つめていた。
(空母七隻……史実と違い、三隻も増えているが油断は出来ないな……)
将和は不安を拭う事は出来なかった。一方の米海軍だがミッドウェー島の戦力を史実と同じだった。米海軍は通信量の多さから日本軍から新たに作戦に出ると判断したが米暗号解読班がAFをミッドウェーと解析した。これによりミッドウェー防衛のため空母をヨークタウン、エンタープライズ、エセックス、大西洋から緊急回航したワスプの四隻で第一航空艦隊に当たる事になっていた。
「………」
だが太平洋艦隊司令長官のニミッツは出撃自体反対だった。
(直接ぶつかれば壊滅は必須だ……スプルーアンスが奇襲攻撃をしてくれたらパーフェクトだが……)
ニミッツは他にも暗号解読班の解析にも疑問だった。
(AFの符号がミッドウェーなのも気になるが……)
暗号解読班は以前からAFの符号が出ていたのが気になっていた。そしてAFがミッドウェーだと確信したのはハルゼーの機動部隊が帝都空襲をしようとする時だった。
『AFに空母有り』
伊号潜から放たれた電文を暗号解読班はAFがミッドウェーと判断したのである。
(まぁ作戦は発動されてしまった。後は祈るしかないだろう)
ニミッツは未だに攻撃の爪痕が残る真珠湾を見つめるのであった。
第一航空艦隊はミッドウェー島へ向かう途中ら低気圧に直撃されていた。
「ミッドウェー島爆撃は二航戦と半数に七航戦で爆撃する」
作戦室で将和はそう明言をした。
「……やはり空母ですか?」
「あぁ、必ず空母はいるぞ。黒島はいないと息巻いているが我々はいると判断する。索敵には全彩雲を出す」
「全力投入ですね。14機の彩雲は何処に出すので?」
「ミッドウェー島から東北付近だな」
将和は記憶の底から史実ミッドウェー海戦の記憶を必死に掘り起こしている。
「分かりました、そのようにしましょう」
草鹿は頷いた。そして日本時間6月5日午前1時30分(4:30)、三好大将率いる第一航空艦隊はミッドウェー島爆撃のため攻撃隊(零戦45機 九九式艦爆54機 九七式艦攻54機)を発艦させた。
「中隊揃いました」
「よし、ミッドウェーへ行くぞ」
将弘も自身の中隊を率いてミッドウェー島へ目指す。
「今日は一日中、防空指揮所で過ごす」
将和はそう言って攻撃隊発艦後、防空指揮所に上がって上空を見つめるのであった。第一航空艦隊には一航戦の航空隊に二航戦の約半数(零戦24機 九九式艦爆18機 九七式艦攻18機)、そしてミッドウェー島への派遣される第六航空隊の零戦21機が残っている。
午前3時16分(06:16)、ミッドウェー基地上空の米軍戦闘機隊は接近する艦攻・艦爆・戦闘機隊の順で進撃する友永大尉率いる攻撃隊を発見した。
「掛かれェ!!」
米戦闘機隊は奇襲を敢行、先頭を飛行していた数機の九七式艦攻が瞬く間に火ダルマになりミッドウェー島へ墜落していく。
「敵戦闘機か、頼むぞ零戦隊!!」
45機の零戦隊は米戦闘機隊と空戦を展開、約15分で日本側の勝利となる。米戦闘機隊はF2A 18機、F4F 6機を喪失した。対して日本側は零戦2機、九七式艦攻5機の喪失であった。攻撃隊は対空砲火が撃ち上げられる中、攻撃を開始するが友永大尉は偵察員からの報告に落胆する。
「隊長!! 敵機がいません!!」
「クソ、読まれたか」
友永大尉は対空レーダーで上空退避したのだと判断した。
「やむを得ん。爆撃を敢行するぞ!!」
そして攻撃隊は爆撃を開始するが滑走路を破壊しても滑走路に航空機がいないと爆撃の効果は分からなかった。
「うーん、もう一撃が必要か。旗艦加賀に打電!! 『カワ・カワ・カワ』だ!!」
友永大尉は第二次攻撃の要ありと判断した。
(クソ、正しく史実通りか。史実より攻撃隊を多くしたが……米軍の基地機能は予想より上回るというわけか)
将和は判断に迷った。そうしているうちにミッドウェー島から発進したTBF6機とB-26 4機の爆撃隊が第一航空艦隊を攻撃するが零戦隊と対空砲火により全機撃墜をした。この頃からミッドウェー島の爆撃隊が断続的に第一航空艦隊上空に飛来する。
午前3時7分(06:07)、スプルーアンス少将率いる米機動部隊は140機の攻撃隊を発艦させた。
「頼むぞ……」
スプルーアンス少将は空母エンタープライズの艦橋ですがる思いで祈っていた。
そして午前4時28分に彩雲が米機動部隊を発見した。
「彩雲四号機より緊急電!! 敵機動部隊発見です!!」
「直ちに攻撃隊を発艦だ!!」
内藤参謀からの報告に将和は直ぐ様叫んだ。
「全機発艦!! 始めェ!!」
待機していた攻撃隊はプロペラを回しだした。攻撃隊は手透きの整備員達から見送られて発艦していく。しかし、上空を警戒していた見張り員は『ある物』を視認して叫んだ。
「敵機直上ォォォォォ! 急降下ァァァァァァァ!!」
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