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第七十七話






 12月8日、夕夏はいつも通りに起きてタチアナ達と朝御飯を作っていた。その時にラジオから緊急放送が入った。


『臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます。本日未明、我が帝国陸海軍は西太平洋上において敵米英軍と戦闘状態に入れり。本日未明、我が帝国陸海軍は西太平洋上において敵米英軍と戦闘状態に入れり……』

「……とうとう始まったわね」

「……えぇ」


 味噌汁に刻んだ葱を入れながら呟く夕夏にタチアナは頷いた。


「日本は勝てると思う?」

「勝てないわね」

「ぶっ」


 タチアナの言葉に夕夏はキッパリと答え、目玉焼きを作っていたシャーリーが思わずフライパンを落としそうになる。


「気を付けなさいシャーリー」

「い、いやそれはそうだけど……って仮にも海軍大将の嫁さんなんだからそう言うのは控えた方が……」

「あら、ハッキリと言った方が分かりやすいでしょ?」

「それはそうだけど……」

「アメリカの工業力はあの大戦で経験しているわ」

「……まぁアメリカ人の私から見てもそうだろうね」

「……でもね……」


 夕夏は言葉を区切ってウインクをした。


「勝てないけど引き分けなら出来るわよ」

「どうしてですか?」


 娘と遊んでいた美鈴が夕夏に訊ねる。


「だってうちの旦那が艦隊を指揮しているんだもの。負ける事はないわ」

「……ハハハ、それもそうね」

 夕夏の言葉にタチアナは苦笑し、それに釣られてシャーリー達も苦笑する。


「さて、朝食の準備は出来たわ。頂きましょ」


 夕夏はそう告げるのであった。そして12月16日、大和型戦艦一番艦の大和が就役した。


「……今度は活躍の場を見出ださないとな」


 就役報告を聞いた宮様はそう呟いた。大和型は将和からの情報で史実とは異なった兵装をしていた。


 大和型戦艦

 基準排水量

 75000トン

 満載

 85000トン

 全長

 285メートル

 全幅

 45メートル

 機関

 九五式艦本式重油専焼水管缶12基、艦本式タービン4基

 二十万馬力

 速力

 29.2ノット

 兵装

 五十口径四六サンチ三連装砲三基

 噴進砲四基

 九七式十二.七サンチ連装両用砲十六基

 九七式四十ミリ連装機銃十六基

 二五ミリ三連装機銃八基

 二五ミリ単装機銃七二基

 同型艦 大和 武蔵 出雲


 大和は就役と同時に第一戦隊に編入され第一艦隊旗艦となった。GF司令部は変わらず敷島である。


「今暫くは出番は無いだろうが史実のような展開はさせてはならんしな……」


 大和型が活躍するのを夢見る宮様だった。そして年が明けた1942年1月2日、日本軍は比島のマニラを占領。更に11日には今村中将率いる第16軍による蘭印作戦が開始され、その派遣艦隊の中には小沢中将の第二機動部隊も含まれていた。


(史実に比べれば機動部隊がいる。特に正規空母が四隻もだ。恐らくはバリクパパン沖のような敗北は無いだろう)


 高知沖で練習航空隊の見学を空母鳳翔の艦橋から眺めていた将和は内心、そう思っていた。


(だが油断は禁物だ。此処からは祈るしかないからな……)


 将和はそう思いながら南の方角を見るのであった。しかし、将和のそれは杞憂だった。


「敵艦隊は悉く撃破する!!」


 第二機動部隊旗艦龍驤の艦橋で小沢中将はそう訓示していた。第二機動部隊はジャワ海に進出し積極的に索敵機を放っていた。その内の一機がバリクパパン方面へ向かうABDA艦隊の駆逐艦四隻を発見したのである。


「直ちに攻撃隊は発艦!!」


 戦爆連合で構成された攻撃隊72機は直ちに第二機動部隊から発艦、駆逐艦四隻は攻撃に晒され三隻が撃沈、一隻は中破するも漂流する乗員達を回収しつつチモール島へ引き返すのである。これにより史実におけるバリクパパン沖海戦は消滅したのであった。更に27日にはABDA艦隊の駆逐艦二隻がマレー半島南部エンドウ沖で輸送船団を襲うも三水戦に追い返された。

 そして2月4日にはジャワ沖海戦が勃発、史実通りの損害を与えられたABDA艦隊は攻撃を断念して引き揚げていた。しかし、見張り員が絶叫した。


「敵機来襲!!」


 ABDA艦隊に現れたのは第二機動部隊から発艦した攻撃隊120機だった。


「全機突撃!! 奴らに止めを刺してやれ!!」


 攻撃隊隊長の美濃部大尉はト連送を発信、攻撃隊は逃げ帰るABDA艦隊に襲い掛かったのである。


「対空砲火開け!! 一機も近づけさせるな!!」


 ドールマン少将はそう叫ぶが艦隊は重巡1、軽巡3、駆逐艦7の艦隊であり対空砲火の数は少なかった。結果としては重巡ヒューストン、軽巡マーブルヘッド、トロンプが撃沈。軽巡デ・ロイテルが大破するのである。

 2月20日、バリ島沖海戦が勃発する。しかし、ABDA艦隊は史実に比べれば戦力は駆逐艦7隻に低下しており数は日本側より上回っているが練度は低かった。


「夜戦は此方のお家芸だ!! 誰に喧嘩売っているのか分かっているんだろうな!!」


 駆逐艦大潮艦長の吉川潔中佐はそう叫ぶ。


「我等日本海軍、伝統の夜戦を見せてやる!! 突撃ィ!!」


 そして彼等は史実通りの戦果を挙げるのであった。2月27日、スラバヤ沖にてスラバヤ沖海戦が勃発した。

 この時、ABDA艦隊はオーストラリアから援軍を受けていた。オーストラリア海軍は貴重な重巡オーストラリア、キャンベラと軽巡アデレードを派遣、史実より少し異なる戦力だった。


「撃ちぃ方始めェ!!」


 史実と同じく3月1日に終了する海戦だが日本海軍は不味さを残していた。


「やはり酸素魚雷が自爆したか」


 堀は報告書を見つつそう呟いた。隣にいる宇垣参謀長も沈痛な表情をしていた。


「開戦前に改良はしていましたが……」

「我等の認識は足りてなかったな」


 開戦前、海軍は酸素魚雷の敏感過ぎる信管の改良をしていたが水雷屋達が「敏感な方が不発よりマシだ」と反論していた事もあり一応、改良の酸素魚雷に更新されたが現場の水雷長らの判断で敏感に調整してしまう事態に発展していた。

 流石に次々と自爆する酸素魚雷を目撃した二水戦司令官の田中少将は直ぐに原因は信管だと判断、水雷長らを怒鳴り付けながらも突撃し何とか重巡オーストラリアを撃沈させたがその代償として神通が大破するのであった。


「ですがその後の敵兵救助は評価すべきです」

「うむ」


 海戦後、高橋中将から「漂流する敵兵を救助せよ」の命令が出され各艦はできる限りの救助をしたのである。兎も角、スラバヤ沖海戦は日本海軍に多くの教訓を残したのは事実である。この海戦後、水雷屋達は酸素魚雷の件で発言力が削がれてしまうのは仕方ない事だった。

 蘭印作戦は史実と比べて6日早い3月3日に終了した。この作戦で一番活躍したのは小沢中将の第二機動部隊であった。第二機動部隊は陸軍の支援に答えるために稼働機を磨り減らしてまで支援した。この功績で陸海の仲は良くなる傾向になる。

 そして蘭印作戦が終わる少し前、日米はニューギニア沖にて機動部隊同士の直接対決をしていた。

 後に言われるニューギニア沖海戦である。米海軍は2月下旬辺りから史実通りに南鳥島やウェーク島等を空襲していた。

 GF司令部はそれに対応するためウェーク島攻略に参加した第三機動部隊をトラックに常駐させて警戒をさせていた。だが第三機動部隊の駆逐艦は旧式であるので早期に交代させる必要はあったがその前に米機動部隊と激突したのである。


「二四航戦が敵機動部隊を発見した。直ちに攻撃隊を発艦させろ!!」


 第三機動部隊司令官の寺岡少将は叫び、葛城と笠置の飛行甲板で待機していた攻撃隊は直ちに発艦を開始した。飛行甲板を叩くため零戦と九九式艦爆の戦爆連合(零戦18機、九九式艦爆36機)54機は1422には敵機動部隊(第11任務部隊 旗艦レキシントン)上空に到着しF4Fに迎撃されていた陸攻隊を零戦隊が援護する。


「ZEROだ!?」

「何故ZEROがいるんだ!!」

「落ち着け!! 確実に対処するんだ!!」


 F4Fは14機だったがそれでも零戦隊は9機を撃墜してF4Fを駆逐した。


「今だ、突撃するぞ!!」


 攻撃隊隊長の垂井大尉はト連送を発信、九九式艦爆隊36機は一斉に急降下を開始したのである。







御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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