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第七十六話

時系列がしばらくはバラバラになると思います






「長官!! 電文です!!」


 柱島泊地に停泊するGF艦隊旗艦敷島の作戦室に通信参謀が電文を堀悌吉に渡す。


「……『トラ・トラ・トラ』だ」

「奇襲成功ですか!?」

「やりますな」

「流石は三好長官だ……」


 参謀達がそう感想を述べているが堀は黙ったままであった。


「やはり意に沿いませんか?」


 首席参謀の島本久五郎大佐は堀に問う。


「……三好さんは回避派だからな。それが開戦をさせる、皮肉なものだよ」

「ですな。私としては対潜作戦等でお世話になりました」


 島本ははっはっはと笑いながら頭を撫でる。


「南方作戦は上手くいくでしょう。三好長官が育てた空母部隊が支援してくださるので」

「……その空母が無ければ到底戦争なんぞ出来んな」


 日本陸海軍は史実通りの展開をしていた。ただ違うとすれば南方部隊に機動部隊が展開していた事であろう。

 南方部隊指揮官は史実通りに第二艦隊司令長官の近藤中将が指揮をしており馬来艦隊(南遣艦隊)は南雲中将が、高橋中将の第三艦隊は比島へ展開していた。更に馬来艦隊の援護として小沢中将の第二機動部隊が展開していた。

 第二機動部隊はハワイ作戦で練度不足として判断された空母蓬莱、阿蘇、生駒と三航戦の龍驤の四隻で編成されていた。しかし、比島支援のため阿蘇と生駒は駆逐艦八隻を率いて比島沖から零戦隊を発艦させて比島の飛行場を台湾の陸攻隊と共に叩いていた。ちなみに護衛艦艇は以下の通りである。


 第七戦隊第一小隊 最上 三隈

 第九戦隊第二小隊 春日 六甲

 第七水雷戦隊 阿賀野

 第六駆逐隊 暁 雷 響 電

 第十四駆逐隊 浜波 朝霜 岸波 沖波

 第二六駆逐隊 清風 村風 里風 山霧


「長官、第二機動部隊から電文です」

「話しているうちに来ましたな」

「あぁ」


 堀は電文を一目すると島本に渡した。


「シンガポールは空襲に成功するも英東洋艦隊は在泊せず……ですか」

「取り逃がしたようだ。まぁ行き先はコタバルだろう」

「基地航空隊の出番ですな」

「あぁ」


 密かに南下していた第二機動部隊はシンガポールに攻撃隊を出したが肝心の英東洋艦隊は不在だった。


「小沢には予定通りにしろと伝えろ」

「分かりました」


 英東洋艦隊をシンガポールで撃滅出来なかった場合、第二機動部隊は直ちに比島の支援に赴く事になっていた。


「英東洋艦隊は基地航空隊に任せよう」


 そして史実通りにマレー沖海戦が発生するのである。それはさておき、場所は再び第一航空艦隊へ移動する。


「長官、空母を探すべきです!!」


 加賀の艦橋で内藤航空参謀は将和にそう主張する。しかし草鹿参謀長は首を横に振る。


「空母を探したいが燃料の消費が心配だ。それに真珠湾は徹底的に叩いたし封鎖もした。此処は無理にすべきではない」

「ですが空母を逃がしては後の禍根を残す事になります!!」

「……まぁ落ち着け航空参謀」


 興奮する内藤に将和は落ち着かせる。


「空母を捜索して叩きたいのは俺も同じだ」

「では……!!」

「……だが燃料の心配もある。此処は引くべきだろう」


 将和は制帽をかぶり直す。


「全艦に連絡。我が艦隊はこれより日本に帰還する。皆、よくやった」


 第一航空艦隊は全艦反転、日本へ帰還するのである。


「三好隊長らしいな」


 空母蒼龍の艦橋で第二航空戦隊司令官の山口多聞少将は苦笑する。


「空母を叩くのは次回にするか」


 後に将和は真珠湾作戦を失敗と評価した。


「空母を叩けなかったのが一番の要因だ。後の事を考えたらもう少し粘るべきだったかもしれない」


 確かに将和は未来人で歴史は知っていた。だが米空母の位置は特定していなかった。エンタープライズはウェーク島からの帰還途中、レキシントンもミッドウェーからの帰還途中しか知らなかった。そこまで知っているなら探すべきと思うがわざわざ二隻の空母を探すのには太平洋は広大過ぎた。


(やはり給油艦を20隻は建造すべきだったなぁ)


 そう思う将和だが後の祭りである。


「ま、なるようになるか」


 そう呟く将和である。そして12月11日、ウェーク島攻略作戦が開始された。ウェーク島攻略には第四艦隊が担当しているが史実を知る将和は艦艇喪失を防ぐため第六航空戦隊の空母葛城と笠置を派遣させた。二隻の護衛にはグアム攻略支援部隊だった第六戦隊の重巡四隻、軽巡長良、駆逐艦若竹、呉竹、早苗、早蕨、朝顔、芙蓉、苅萱を第三機動部隊として編成、ウェーク島攻略作戦に参加していた。


「帽振れェ!!」


 二隻から零戦24機、九九式艦爆27機、九七式艦攻27機が発艦してウェーク島を空襲した。ウェーク島守備隊は残っていたF4F2機を出して九七式艦攻2機を撃墜するのが精一杯だった。なお、撃墜された二機のうち四名はパラシュートで脱出した。

 それでも攻撃隊は負けじとウェーク島を空襲、ウェーク島の南西端にあるピーコック岬、北部ヒール岬等の砲台を完全に破壊しウィルクス島とピール島の機銃座をも破壊したのである。

 上陸部隊の海軍陸戦隊も史実より戦力は増強され一個大隊とハ号の二個戦車小隊が上陸する手筈となっていた。


「ハ号を先頭に突撃するぞ!!」


 ウェーク島守備隊は激しく抵抗した。しかし史実と比べて主要砲台が早期に破壊された挙げ句、陸戦隊は野砲代わりに迫撃砲を持ち込んで守備隊は徐々に追い詰められ1630に守備隊指揮官カニンガム中佐が降伏を宣言した事で1700にはウェーク島での砲火は止んだのであった。


「ふむ、降伏したか」


 報告を受けた堀は内心ホッとしていた。


(史実のような敗退は避けられたか、マレー沖でもプリンス・オブ・ウェールズとレパルスを撃沈しているし入り混ざっている感じか……)


 堀は書類を見つつそう分析をする。


(はてさて……どうなる事やら……)


 堀はそう思いつつ事務処理に取り掛かるのであった。そしてマレー沖海戦だが一人の提督が生き残ったのである。


「……私は生き残ったのか……」


 マレー沖の大敗からシンガポールに帰還する駆逐艦エレクトラの医務室でトーマス・フィリップス海軍大将は目覚めた。


「どうやら波の力で海面に押し出されたようですな」


 軍医の言葉にフィリップスは艦橋に入ってきた海水の事を思い出した。身体を縛るロープを縛る最中に飲み込まれてそこから記憶が無かった。


「……生かされたか……」


 フィリップスは天井を見つつそう呟く。


「……ならば私は精一杯の努力をしようではないかマサカズ。お前の機動部隊は私が壊滅させてやる」


 生かされた事で将和との対決を望むフィリップスであった。一方、マレーに上陸した第25軍だが佐伯挺身隊によりアースンの国境陣地を突破していた。更に佐伯挺身隊は第一戦車連隊第三中隊の増強を受けて特別挺身隊となる。

 なお、その第三中隊には将和の次男将治が所属していた。


「ジットラ・ラインを突破するか……そいつは面白い」


 命令を聞いた将治はニヤリと笑う。そして特別挺身隊はジットラ・ラインに突撃を開始する。


「先頭車だけ撃て!! 後続は撃つな!! 同士討ちをさせろ!!」


 チハの75ミリ戦車砲が榴弾を放ち逃げ惑う英軍兵士らを吹き飛ばす。


「吶喊!! 吶喊!! 吶喊!!」


 将治らは史実通り僅か一日でジットラ・ラインを突破するのであった。







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