第七十五話
なんか早くにできたから投稿
レーダーのは完全に書き忘れてました。後付け設定みたいになってしまった
淵田機が『トラ・トラ・トラ』の電文を放つ30分前、野村吉三郎大使はコーデル・ハル国務長官と面会した。
「本気ですか?」
「本気です。残念ながら貴国は我々を本気にさせてしまいました」
野村大使はそう言う。ハルは思わず野村大使から渡された対米覚書と宣戦布告の詔書を見つめた。内心、ハルは喜んでいた。
(これでプレジデントが望んだ戦争が出来る)
ハルは表情に出さないよう努力し野村大使を見据えた。
「分かりました。ですが後悔を為さらぬよう……」
ハルは書類を抱えて足早にその場を去った。ハルが去った扉を野村はじっと見つめた。
「……その選択をさせたのは間違いかもしれんな……」
野村の独白は何を指すかは分からなかった。ハルは直ぐにホワイトハウスに駆け込み書斎で寛いでいたルーズベルトに短く伝えた。
「戦争です」
ハルの言葉にルーズベルトは満足そうに頷き、直ちに陸海軍の戦闘態勢が発令された。それは真珠湾も例外ではなくショート中将とゴルフに行こうとしていたキンメルも直ちに太平洋艦隊司令部に乗り込んだ。
「状況は!?」
「ワシントンから追加の情報はまだです。フィリピン方面は完全警戒態勢が出た模様です」
キンメルの問いにマックスモリス参謀はそう答えた。
「いや、相手は日本海軍でもアドミラルミヨシがいる日本海軍だ。何が起きるか分からん」
キンメルはそう言って世界地図を見つめる。見つめていたキンメルは不意に驚愕の表情に変えた。
「長官?」
不審に思ったマックスモリス参謀は声をかける。
「……直ちにショート中将に連絡!! 至急陸軍の戦闘機隊を離陸させて上空警戒を厳とするんだ!! それと在泊艦艇は直ちに真珠湾から出動だ!!」
「まさか長官……」
「分からん、だが警戒はするべきだ。アドミラルミヨシなら真珠湾を攻撃しても俺は納得するぞ!!」
直ちに連絡はホイラー飛行場へ伝えられた。
「急げ急げ!! 急いで上がるぞ!!」
P-40のパイロット達はそう声を荒げながら離陸していく。20数機まで離陸したところが彼等の限界だった。その時に第一次攻撃隊が現れたのである。
「総隊長、2時方向に敵機がいます!!」
「何やて!?」
操縦士の松崎大尉の言葉に淵田は示された見ると確かに多数の敵戦闘機が飛行していた。
「クソッタレ、三好長官には既に奇襲成功の電文を送ったんや。ここで帰るわけにはアカン!!」
『淵田総隊長、我々に任せてください』
淵田の言葉に制空隊隊長の板谷機が淵田機の前に出る。
「頼むで板谷!!」
『了解、護衛機以外は俺に続け!!』
板谷機は増槽を投棄して敵戦闘機群へ向かう。
「攻撃隊には近づけさせるな!!」
零戦隊はP-40と格闘戦に突入する。板谷の乗る零戦は1360馬力もある栄発動機を駆使して瞬く間にP-40の後方に回る。
「貰った!!」
機首の13.2ミリ機銃が吼え、弾丸はP-40の機首に着弾しアリソンV-1710-39レシプロエンジンは火を噴いてP-40は眼下の地面に墜落していく。
「幸先は良いかもしれんな!!」
板谷はそう言いつつも新たなP-40を見つけて迫るのであった。そして村田少佐率いる54機の雷撃隊は一気に真珠湾へ躍り出た。
「高度5メートルへ!!」
「ヨーソロー」
村田少佐の一個中隊は停泊していた戦艦ウエストバージニアに狙いを定めた。キンメルの指示で在泊艦艇は脱出しようとしていたが乗組員の大半は上陸しており残置している乗組員での作業は困難を極めていた。
「左舷に雷撃機多数!!」
ウエストバージニアの乗組員は対空火器に飛び付き対空射撃を開始するが九七式艦攻の速度が速すぎた。
「は、速すぎる!?」
「畜生、撃ち続けろ!!」
乗組員達は必死に抵抗するが村田隊はそれを嘲笑うかのように魚雷を投下した。
「走っています!!」
そして七本の魚雷がウエストバージニアに突き刺さった。
「命中命中!!」
「よし、旗艦に発信!! 『我、敵戦艦雷撃ス』だ!!」
艦攻隊の攻撃は熾烈を極めた。戦艦アリゾナは史実通りの展開がなされ、戦艦オクラホマにも魚雷が命中しオクラホマは瞬く間に転覆沈没を遂げてしまう。戦艦カリフォルニアは半分沈没、戦艦メリーランドは五発の800キロ爆弾命中により大破炎上していた。その中で唯一動けたのは戦艦ネバダであった。
「急いで水道を抜けろ!!」
フォード島に係留されていたネバダは直ちに機関始動をしてノロノロと真珠湾を出ようとしていた。
「もうすぐ半分だ」
第一次攻撃隊は炎上している艦艇に集中している。乗組員達はそう思っていた。だが、彼等は来た。
「この時を待っていたぞ!!」
高度5メートルの超低空飛行でネバダに迫っていたのは将弘の中隊だった。将弘は今まで突撃はせずにずっと攻撃を静観していたのだ。その理由は真珠湾で艦艇を閉じ込めるため、それに尽きていた。
(真珠湾を封鎖すれば少なくとも三ヶ月は行動不能になるはず……)
将弘はネバダから来る対空砲火を避けつつネバダに接近する。
「攻撃目標、前方の戦艦!!」
「ヨーソロー」
将弘は雷撃最適位置まで接近して投下策を握る。
「用ぉ意……撃ェ!!」
炸薬が300キロもある九一式航空魚雷改3を投下、将弘はそのまま離脱する。
「全機無事か!?」
「はい、栗野機が多少被弾しましたが全機無事です!!」
投下した魚雷九本のうち六本がネバダの左舷に次々と命中し水柱を吹き上げた。
「やった!! 真珠湾を封鎖したぞ!!」
被雷したネバダは大傾斜をして大破着底した。その場所こそ水道への入口だったのだ。
「見たか親父ィ!!」
将弘は風防を開けてそう叫んだのである。その一方で基地攻撃も行われていた。
「地上で大人しく眠ってろ!!」
坂本明大尉率いる25機の九九式艦爆は250キロ爆弾と九九式前方発射航空ロケット弾を投下してホイラー飛行場は炎上していた。特に航空ロケット弾の威力は凄まじく駐機していた多数の戦闘機を破壊する事に成功していた。
「何なんだこの攻撃は!?」
爆撃から生き残った兵士がそう叫ぶ。艦爆隊は他にも史実では攻撃が行われなかったハレイワ基地をも攻撃し同基地は使用不能となってテイラー中尉とウェルチ中尉は零戦の機銃掃射で戦死したのである。
破壊の限りを尽くした第一次攻撃隊であるが午前8時54分には第二次攻撃隊が全軍突撃を下命し第二次攻撃隊は大損害の太平洋艦隊に止めを刺すべく攻撃を開始するのであった。
「徹底的に叩け!!」
艦爆隊を率いる江草少佐は逃げようとする艦艇に攻撃を集中、この攻撃で艦爆隊は8機が撃墜されるがそれでも軽巡ホノルル、ローリーが爆沈、重巡サンフランシスコが大破着底するのである。
「長官、太平洋艦隊の被害は甚大です。戦艦ネバダが水道内で着底したので少なくとも三ヶ月は行動不能です」
マックスモリス参謀は窓から被害を見ていたキンメルにそう告げる。
「………」
報告を聞いていたキンメルだが爆音が聞こえてきた。
「敵の急降下爆撃です!!」
実際には零戦のロケット弾攻撃だった。地面に激突して爆発だったので建物の被害は軽微だが人的被害は酷かった。窓付近にいたキンメルは全身に硝子破片を受けて意識不明の重体となり後に海軍病院で息を引き取ったのである。
「長官、電文です!!」
時間が大分前に戻るが旗艦加賀で将和は淵田機から発信された『トラ・トラ・トラ』の電文を見た。
「長官、奇襲成功です!!」
隣にいた草鹿は思わず将和の手を握る。
「あぁ。だが始まったばかりだ」
「無論です」
(戦争の引き金を引いたか……)
将和は防空指揮所に出て前方の海面を見つめる。
(引いた事には後悔はない。変えれるのはこれからだ、まだ始まったばかりなんだ……)
将和は第一次攻撃隊が帰って来るまで防空指揮所に居続けるのであった。
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