表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/143

第七十三話





「ほ~ら咲耶、高い高い~」

「キャッキャッ♪」


 8月中旬、将和は自宅にて4月に美鈴との間で産まれたばかりの娘咲耶の子守りをしていた。


「将和さん、明日には帰るんですね」

「あぁ、済まないな」

「いえ、国を守るためですから」


 美鈴は残念な表情をするが納得する。ちなみに将和はこれまでに夕夏を筆頭に嫁は四人だが全員に子がいたりする。


「あら、貴方がいなくても艦隊は動くんじゃないかしら?」

「それはそれで傷つくぞ夕夏」


 夕夏の言葉に苦笑する将和である。将和が司令長官とする第一航空艦隊は多くの人材が揃っていた。まず、長官は勿論将和である。


『第一航空艦隊

 司令長官 三好将和大将

 参謀長 草鹿龍之介少将

 航空参謀 内藤中佐

 他参謀多数

 第二航空戦隊司令官 山口多聞少将

 第三航空戦隊司令官 角田覚治少将

 第四航空戦隊司令官 桑原虎雄少将

 第五航空戦隊司令官 吉良俊一少将

 第六航空戦隊司令官 寺岡謹平少将

 第七航空戦隊司令官 城島高次少将

 第三戦隊司令官 三川軍一中将

 第八戦隊司令官 原忠一少将

 第一水雷戦隊司令官 大森仙太郎少将』


 以上が主だった面子だった。ちなみに母艦飛行隊は鹿児島県の錦江湾にて訓練中である。


「ま、今は休暇を楽しむだけさ」

「?」


 将和が苦笑する表情に咲耶はキョトンとするのであった。そして母艦飛行隊はというと……。


「高度5メートル!!」

「よし、維持しろよ!!」


 出水基地から離陸した蒼龍艦攻隊18機は錦江湾にて高度5メートルの超低空飛行をしていた。


「栗野ォ!! もう少し下げろ!!」

『り、了解!!』


 将弘の列機である栗野少尉機が慌てて高度を下げる。


「全機、気を抜くなよ!!」


 将弘は激を飛ばす。他の母艦飛行隊も厳しい訓練をしている。それは一航艦に所属する艦艇もである。


「敵雷撃機接近!!」

「クソ、前のに比べて改良型は速い!!」

「文句を言わずに砲弾を運べ!!」


 艦艇乗員は接近してくる九七式艦攻二三型に悪態をつきつつ機銃の操作をする。


「畜生、命中だな」


 古参の水兵は艦底を通過する模擬魚雷を見つつそう呟いたのであった。


「やぁ三好大尉、調子はどうかね」

「自分はまだ中尉です山口司令」


 出水基地に戻ると将弘は山口多聞に出迎えられた。


「三日後にはそうなる」

「はぁ、それで如何なさいましたか?」

「うむ。改良型の艦攻の調子はどうかね?」

「は、前型より速度は上がっていますし安定性も抜群です」

「それは何よりだな」


 九七式艦攻二三型、それは史実すらなかった機体である。二三型は全体としては三号をほぼ踏襲している。しかし、発動機は零戦二二型と同じ水メタノール噴射装置付の栄発動機で速度は423キロ、機体は前型より生ゴム等の防弾性を高めており航続距離は約2000キロである。

 更に機銃は新たに旋回機銃として採用した零式13.2ミリ機銃が搭載されている。


「それに護衛の零戦、艦爆の九九式も改良型が出ていますし攻撃力は大きく向上しています」


 零式艦上戦闘機(二二型)

 全幅 11メートル

 全長 9.3メートル

 全高 3.6メートル

 自重 2200㎏

 正規全備自重 3200㎏

 発動機 栄三一型(離昇1360hp 水メタノール噴射装置付)

 最高速度 582キロ

 航続距離 2300キロ

 燃料タンク 540リットル

」武装 13.2ミリ機銃二丁(各240発) 20ミリ機銃二丁(各200発)九七式前方発射航空ロケット弾六発 九九式前方発射航空ロケット弾四発


 防弾装備として耐弾防火性に優れ12.7mm弾に対応する、陸海共同開発の20mm厚積層ゴム(外装式3層)の防火タンクを装備。また操縦席背面に20mm厚・合計4枚・防弾鋼板(防楯鋼板。12.7mm弾対応)を装備している。


 なお、九九式艦爆はほぼ史実の二二型を踏襲している。違うとすれば、航続距離が約1300キロ旋回機銃が九七式艦攻と同じ零式13.2ミリ旋回機銃である事だろう。


「それがどうかしましたか?」

「いや……何でもない。今日は艦攻隊の皆とメシでも食べようか」

「あ、頂きます!!」

「こら栗野!!」

「ははは、元気があってよろしい」


 山口はそう言って笑う。


(長官……やはり避けられませんか?)


 内心、山口はそう思った。そして将和は一航艦に帰還する前に宮様らと会合をした。


「やはり日米交渉は上手くいきませんか?」

「うむ、これ以上進撃はしないし海岸付近のみの占領と何度も言っているが向こうからの要求は大陸からの撤退のみだ」


 将和の言葉に廣田はそう説明をする。


「私とルーズベルトとの直接会談を要請しても向こうは断るばかりだ」

「……歴史の歯車は変わらない……と言うわけですか」

「いや、まだギリギリまで諦めないつもりだ」


 廣田はまだ諦めたつもりではなかった。


「もし、歴史通りに動くなら私はそのまま総理として居座る。歴史を変えれなかった責任は取る」

「廣田さん……」


 廣田の覚悟に将和らも決断をする。


「分かりました。交渉と準備は平行して進めましょう」

「うむ、頼むぞ」

「へ、陛下!?」


 襖が開けられて外から陛下と木戸内大臣が現れた。


「久しく三好の顔を見ておらなくてな。様子がてらというわけだ」

「わざわざこのようなところまで……」

「日本を亡国にするわけにはいかぬ。そのためなら何処にでも参ろう」

「陛下……」

「兎に角、交渉と準備は平行して行うのだ」

『ははっ』


 9月中旬、日本は日米交渉打開のため史実で提示が考えられた甲案と乙案の両方を纏めてアメリカ側に提示した。廣田らにしてみたら最後の賭けに近かった。


「……ジャップも中々、手強い相手だな」


 ハル国務長官かは渡された報告書を読みながらルーズベルトはそう呟いた。


「では緩めますか……?」

「緩める理由はない。一旦検討すると伝えろ」

「(期待させるという意味合いか)分かりました」


 アメリカ側からの検討するという返答に廣田らは「道が繋がった」と期待は高まった。しかし11月26日、その期待は見事に裏切られる事になる。


「……今何と仰いましたか?」

「伝えた通りです。我がアメリカは先程提示したハル・ノート以外は一切受け入れません」


 ハル国務長官の言葉に野村大使と来栖特使は困惑の表情を浮かべた。


(あの期待は何だったのだろうか……)


 打開の道が開けた。二人は元より将和らもそう思ったのだ。それの返答がハル・ノートの提示だった。しかもこのハル・ノートには史実より一部異なっていた。

 即ち、アメリカはシベリア帝政国と満州国は日本の傀儡国であり独立国として認めずシベリア帝政国と満州国は直ちに解体してシベリア帝政国の領土はソ連に満州国は中国に返還する事、大陸は元より朝鮮半島からも撤退し北樺太の朝日油田(オハ油田)は日米協力しての開発等々であった。


「……そこまでしてアメリカは日本と戦争をしたいのか!!」


 ハル・ノートの全容を聞いた宮様は激怒した。


「……三好君がいたら激怒するのは三好君だろうな……」


 将和はこの時点で日本にはいなかった。将和の指揮する第一航空艦隊は11月23日に択捉島の単冠湾に集結しており26日にはハワイへ向けて航行を開始していたのである。


「……歴史は変わらぬ……か」


 12月1日、御前会議で対米宣戦布告は真珠湾攻撃の30分以上前に行うべきことが決定された。


「廣田、このような結果になったのは真に残念だ」

「ははっ」

「伏見宮、東條」

「「ははっ」」

「史実の戦争となってはならぬ。一人でも多くの我が国民の命を救ってくれ」

「「ははっ」」


 御前会議が終わり宮様は堀長官に電話を繋いで一言だけ伝えた。


「戦争だ」


 そして12月2日17時30分、大本営より第一航空艦隊に対して「ニイタカヤマノボレ一二〇八」の暗号電文が発信されたのであった。






御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 」武装 13.2ミリ機銃二丁(各240発) 頭の『」』がミス
[一言] 戦争と経済をしたいのはルーズベルトの阿呆だからな。
[一言] アメリカというよりは、ルーズベルトの外道が考えたクソみたいな条約だ。当時の米国に正義があるとは到底思えないな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ