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第七十二話





 1941年は1月から松岡外相がタイ・仏印戦争の調停を申し入れたりしていたが、同年4月10日に将和は新しく創設された第一航空艦隊司令長官に補職されると同時に大将へ昇進が決定された。


「……大将ですか?」

「不満ですかな?」


 将和はGF旗艦長門の作戦室で堀悌吉GF司令長官にそう訊ねられた。


「宮様も中将のままで一航艦をと思っていましたが……私が大将に昇進しておいて貴方が昇進しないのは他の者も納得しますまい」

「だなぁ……しかし、俺が一航艦司令長官か……あの時の事を考えると信じられないわな」


 将和はあの時、自身がこの世界に来た事を思い出す。


「……覚悟を決めるかな」


 この世界に根付いて何年の月日が流れただろうか。自分が今いるのはこの時のためだったのではないだろうか。将和はそう思えたのである。


「編成は?」

「これが編成だ」


 堀は将和に書類を渡した。


 第一航空艦隊

 第一航空戦隊

 加賀 赤城 天城

 第二航空戦隊

 蒼龍 飛龍

 第三航空戦隊

 龍驤 鳳翔

 第四航空戦隊

 祥鳳 瑞鳳 春日丸

 第五航空戦隊

 翔鶴 瑞鶴

 第六航空戦隊

 雲龍 蓬莱 葛城 笠置

 第七航空戦隊

 阿蘇 生駒 鞍馬(建造中) 蔵王(建造中)

 第三戦隊 河内 因幡 岩代 薩摩

 第七戦隊第二小隊 鈴谷 熊野

 第八戦隊 利根 筑摩

 第一護衛戦隊(対潜も兼任)五十鈴 名取

 第一水雷戦隊 阿武隈

 第四駆逐隊 嵐 萩風 野分 舞風

 第一七駆逐隊 谷風 浦風 浜風 磯風

 第十駆逐隊 秋雲 風雲 巻雲 夕雲

 第三十一駆逐隊 長波 巻波 高波 清波

 第六十一駆逐隊 秋月 照月 涼月 初月


「はっはっは、大盤振る舞いだな」

「ほぼ全ての空母を貴方に任せるんです。当たり前ですよ」

「ははは、それもそうか」


 将和は書類を見ながら苦笑する。艦艇は特に新型が多くあった。

 陽炎型の改良型である夕雲型は現時点では清波まで竣工しており就役も間もなくである。また、改装していた五十鈴と名取は護衛巡洋艦として第一護衛戦隊を編成して第一航空艦隊に配備された。更に防空の要として秋月型防空艦も配備されていた。

 史実では魚雷を搭載していた秋月型であるが魚雷のスペースにはボフォース40ミリ連装機銃を搭載して防空能力を一段と向上させている。

 なお、駆逐艦は九七式12.7サンチ両用砲を搭載しており史実より防空能力は上がっている。また第五、第六航空戦隊は現時点では艤装中であり八月までには一航艦入りを果たす予定である。


「航空艦隊とあるが以前とは違う」


 堀が言う以前とは将和が指揮した第一機動部隊は各艦隊から艦艇を派遣されての編成だった。しかし、今回の第一航空艦隊は最初からGFの新たな艦隊として組み込まれていたのだ。


「格としては第三艦隊よりかは上ですが三好大将の階級を考えると実質第一艦隊より上ですね」

「はっはっは。高須や近藤は怒るかな」


 将和は両中将を思い苦笑する。


「二人ともそこは弁えてますよ」

「信じてるよ。さて、それでは行くとするかな。やる事は一杯だ」


 将和はお茶を飲み干して長官室を退室するのであった。将和が一航艦長官に就任した事でパイロット達や航空関係者は歓喜の嵐に湧いた。


「三好の親父が長官なら死んでも本望よ!!」

「成るべくしてなった人事だな」

「三好の親父が長官か。よし、幼馴染に告白してくる」

「おい馬鹿やめろ」

「空母乗組したいなぁ」


 等々、喜ぶ彼等を元に諸外国でも速報として流れていた。


『第一航空艦隊司令長官に三好将和大将に任ずる』


「……ヤるのかいマサカズ?」

 ルフトヴァッフェの司令部でゲーリングは虚空を見つめながらそう呟く。彼の言葉が何を意味するのかはまだこの時点では分からない。


「マサカズが相手か。これでは我が大英帝国は負けたも同然か」

 イギリスでは親友であるフィリップスは新聞を見ながら呟く。そしてアメリカでは……。


「聞いたかレイ?あのアドミラルミヨシが機動部隊を再度率いるだとさ」

「これは日米の戦いはあるかもしれないな」


 史実では日本機動部隊と死闘を繰り広げたハルゼーとスプルーアンスはそう話し合うのであった。

 6月22日、 ナチス・ドイツがソビエト連邦に対して攻撃開始(バルバロッサ作戦)し、これにより独ソ戦が勃発した。

 この時、ドイツ軍の戦車は三号と四号戦車だったがチハ・ショックにより四号戦車の開発速度は早まりF2型の車両が半数以上存在していた。

 また10月には88ミリアハト・アハトを搭載した五号戦車ティーガーが制式採用される予定である。


「歴史の流れが微妙に早まっているな……これはもしかするともしかするかもしれないな」

「だが君の情報ではソ連軍はT-34を大量生産だろう?」

「はい。ですが四号長砲身ならT-34には十分対抗できるのです」


 6月30日、いつもの会合で東條の指摘に将和はそう返す。


「ただ、問題はソ連です。ノモンハンから年は経っていますので戦車も向上していると思います」

「ふむ……」

「それとドイツから正式ルートを通して対ソ戦の

要請が来ている。領土はウラル山脈を線として西は好きにして良いとな」

「チハを有する我々にとって悪い話ではありませんが……しかし」

「巻き込まれるのはごめん被るものですな」


 そう苦々しく台詞を吐く杉山である。


「実はシベリア帝政もこの機会を好機と見てイルクーツク方面に攻める気配を見しています」

「くっ、帝政も我慢の限界が来ているところか……」


 シベリア帝政とソ連は時折、国境で軽い衝突をするくらいだったが皇帝であるニコライ三世アレクセイもそろそろ我慢の限界に近かった。


「義弟にはタチアナを通して抑えるように言っておきます」

「頼みます」


 将和の言葉に杉山は頭を下げる。7月、事態は動いた。


「何!? ヴィシーフランスが仏印南部を譲渡するだと!!」

「は、ヴィシーフランス大使はそのように申しております」


 突然の事に岡田から前年に総理の座を譲られた廣田弘毅は戸惑った。廣田はわざわざヴィシーフランス大使と面会をして真意を求めたが大使はこう返した。


「極東の平和のためです。極東をよく知る日本に譲渡するのが一番正しい選択でしょう」


 ヴィシーフランスからの動きに将和らは頭を抱えた。


「こいつはヴィシーフランス独自の策じゃない。誰だ、誰がこの策を出しやがった……」


 答えは同盟を結んだはずのドイツであった。フランスとの戦争に勝利して傀儡政権を作ったヒトラーは手を回して仏印南部を譲渡するよう脅したのである。


「ハッハッハ!! 今頃ミヨシ達は驚いているかもな!!」


 総統官邸でヒトラーは高笑いをしていた。その様子をゲーリングは冷やかな目で見ている。


(己の気を晴らすために世界大戦の道を起こす気か……)


 ゲーリングは何も出来ない己に溜め息を吐いた。


(済まないマサカズ、この詫びは地獄にてするよ……)


 そして日本はヴィシーフランスからの提案を最終的に受け入れた。何もせずに領土が手に入ったのだ。何も知らない者達からしてみれば嬉しい事である。


「歴史の流れは変わらないというわけか……」


 将和は自室でお茶を飲む。飲みたい気分だったが夕夏に「飲み過ぎだから禁止よ」と取られたのである。


「……こいつは来るな」


 将和はそう呟いたのであった。そして将和の言葉通り、アメリカが仏印南部譲渡に噛みついたのである。駐米大使の野村吉三郎はサムナー・ウェルズ国務次官と会談をして「平和的譲渡であり侵略的譲渡ではない」と絶えず繰り返し主張したがルーズベルトはそれを受け入れる事はなかった。

 8月1日、アメリカは「全侵略国に対する」石油禁輸を発表、その対象に日本も含まれていた。更にイギリスもアメリカに追従するが如く経済制裁を発動した。


「やはりか……」


 将和は新聞を読みながら落胆していた。此処まで歴史通りだと怖いくらいであった。


「……戦争になるか」


 将和は机に置かれた真珠湾作戦の計画書を見つめながらそう呟いたのであった。


「やはり真珠湾はやるかね」

「はい。歴史が戦争の道を歩ませようとするならこの方法しかありません」


 海軍省で将和は宮様と会談していた。


「万が一の時は家族を頼みます」

「分かった。そこは任せたまえ」


 その頃、将和が指揮する第一航空艦隊の母艦飛行隊は錦江湾で真珠湾作戦に向けた訓練をしていた。


「三好大尉。上はなんでこんな事やらすんですかね」

「……上には何かあるんだろ」


 空母蒼龍艦攻隊の第三中隊長となった将弘は部下の栗野少尉の言葉にそう答えた。


(……全く、何をするか分からんが派手な事をしそうだな)


 そう思う将弘だった。








御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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[一言] ルーズベルトはくそ野郎だからどうしようもない。
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