表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/143

第七十話





 バトル・オブ・ブリテンが始まった。ドイツ空軍は二個航空艦隊(アルベルト・ケッセルリンクの第二航空艦隊とフーゴ・シュペルレの第三航空艦隊)でイギリス本土への攻撃を開始するがドイツ空軍の長であるゲーリングはバトル・オブ・ブリテンには反対だった。


「今の主力戦闘機であるBf109では無理だ。タンク技師の戦闘機が配備されるまで待つべきだ」


 ゲーリングはヒトラーにそう主張するがヒトラーはその具申を受け入れを拒否してしまう。


「イギリスを屈伏させるべきは今が好機なのだ。何故ゲーリングにはそれが分からない!!」


 和平案を拒絶されたヒトラーにとって軍事侵攻によってイギリス屈伏が最大の山場だろうと判断していたのだ。しかし、それが最初から間違いであるのは事実であった。


「総統は何故分かってくれないのか、Bf109は航続距離が足りないんだ。いや、行って帰ってくるだけの航続距離はある。行って空戦をして帰ってくるのは今のBf109には無いんだ」


 主力戦闘機であるBf109は1930年代に台頭したドゥーエの空中艦隊や当時流行した高速爆撃機思想により迎撃性能を重視した結果、約700キロ程度なのである。そのため、史実でもイギリス上空での滞在時間は僅か15分程度という有り様であった。

 ゲーリングは航続距離の短さからBf109の後継機には約1200キロ程度の戦闘機を要請、これに答えたのがフォッケウルフ社のクルト・タンク技師である。


「……だが総統命令は絶対だ。やらなければならないな……問題は総統がいつロンドンへの爆撃指令を出すかだな。それまでに工場や飛行場を徹底的に叩く必要があるな」


 ゲーリングはロンドン爆撃を懸念していた。チャーチルがヒトラーのプライドを逆撫でにしなければ軍需工場等への爆撃で済むだろう。だがチャーチルが徹底抗戦を掲げれば?

 答えは自ずと首都ロンドンへの爆撃である。


「はぁ、せめてもの情けで日本から雷撃機を購入出来たのが幸いかな」


 ゲーリングは史実のように急降下爆撃思想だけではなく艦船攻撃も視野に入れていた。そのため日本から複葉機の九六式艦攻を36機購入して空軍雷撃隊をも編成していた。


「とりあえずはやるしかないか……」


 そうぼやくゲーリングであった。一方の日本であるが、第二艦隊司令長官の将和は今、航空演習の真っ最中であった。


「左舷から雷撃機9機!!」

「とぉーりかぁーじ!!」


 旗艦である高雄の艦体が右に傾斜する。最大速度での回避なので足で踏ん張らないと床に転けてしまう。そんな中で将和は艦橋で椅子に座りながら突入してくる九七式艦攻を見ていた。


「良い腕だ」


 その直後に模擬魚雷を投下、高雄の上空を航過する。


「……やられましたな」


 同じく見ていた参謀長の鈴木義尾少将は苦々しくそう呟いた。


「恐らく五本命中だな。同時に五本だ、実戦なら左舷は粗方吹っ飛んでいる」

「轟沈ですな。うぅむ、やはり航空機が此処までとは……」


 鈴木少将はそう唸る。


「だから艦隊を戦闘機で護衛する必要がある」

「成る程」


 将和の言葉に納得するように頷く。


「そう言えば大陸は完全に膠着状態なようですな」

「陸さんがあれ以上の進撃を止めたからな」


 8月20日、中国共産党軍の八路軍が大規模攻勢を開始したが将和の未来情報等で看破されており八路軍は四割近い損害を受けていた。東條ら陸軍は「これ以上の進撃はやめるべき」と判断、現時点での戦線拡大を停止した。

 漸く陸軍の中堅達も広大な大陸を支配するのは難しいと悟ったのである。ただし重慶への爆撃は蒋介石を屈伏するには必要だと判断して引き続き行われている。ちなみにフィンランドから漸く帰還した将弘はとんぼ返りで大陸へ向かう事が決定しており「親父に会ったらぶん殴る」と赤松らに文句を言っていたりする。なお、戦闘機は零戦に改編されている。

 この零戦は史実で言うとほぼ五二型乙の性能であった。少し違うとすれば13.2ミリ機銃を機首に二丁搭載している事だった。発動機は栄であるが13.2ミリを二丁も搭載している事で九六式艦戦に比べたら運動性能が低い事であろう。

 重武装を主張する現場の意見を取り入れての事だったが中華民国空軍が保有するI-16等には圧倒しておりそれほど問題ではなかったが後の相手を考えるとやはり改良型は必須だった。そのため直ぐに改良が行われるが栄発動機に水メタノール噴射装置付の栄三一型を搭載した事で運動性能が復活、後の開戦時には陸海軍の主力戦闘機になるのである。

 それはさておき、陸軍が進撃を停止した事で蒋介石に余裕が出来た。蒋介石は軍に更に力を入れる事になるが此処で国共合作で手を結んでいた共産党と不和になりつつあったのである。共通の敵が攻めて来ない事でまさかの内部分裂の危機に蒋介石は陥る事になってしまう。

 まさかの内部分裂に慌てるのがアメリカであった。アメリカは蒋介石の要請に応じて支援をしていたが日本が現戦線からの進撃を停止した事で国内から「日中の和平を取り持って漁夫之利を得よう」との声が出始めたのだ。


「日中の和平をしては中国市場への入り込む可能性は低くなる。此処は強硬な態度をするべきだ」


 ルーズベルトは慌てる事なく対処していくが彼の疲労も蓄積はされていたのである。

 さて、日本海軍であるがこの頃はマル3計画の建造を急がせていた。

 このマル3には以前に説明した河内型戦艦や大和型が含まれていた。


『第三次海軍軍備補充計画』


 艦艇

 戦艦七隻(大和型三隻・河内型四隻)

 空母二隻(翔鶴型二隻)

 敷設艦二隻(日進と津軽)

 急設網艦二隻(初鷹型)

 海防艦四隻(占守型)

 砲艦二隻(橋立型)

 駆逐艦十八隻(陽炎型)

 潜水艦五隻(伊十六型)

 他史実通り


 戦艦が七隻もいるのはやはり金剛型の代艦である河内型があるからであろう。また、マル3の他にもマル4の艦艇も建造が急がれていた。


『第四次海軍軍備充実計画』


 艦艇

 空母九隻(大鳳型・雲龍型)

 甲巡四隻(八雲型)

 乙巡六隻(阿賀野型)

 駆逐艦十八隻(陽炎型・夕雲型)

 他は伊一七十六型の建造取り止め以外は史実通り


 空母が九隻なのはマル3で空母が思ったように含まれなかったからである。特に雲龍型は飛龍の設計図を流用しており日本版エセックス型と言ってもいいほどであった。


 雲龍型航空母艦

 排水量

 23000トン

 全長

 236メートル

 全幅

 26メートル

 機関

 九五式艦本式重油専焼水管缶8基、艦本式タービン4基

 速力

 34.6ノット

 兵装

 九七式十二.七サンチ連装両用砲六基

 九七式四十ミリ連装機銃十六基

 二五ミリ三連装機銃六基

 二五ミリ単装機銃三六基

 搭載機数

 常用72機(艦戦24機 艦爆18機 艦攻27機 偵察3機)

 補用9機

 油圧式カタパルト二基

 同型艦 1雲龍 2蓬莱 3葛城 4笠置 5阿蘇 6生駒 7鞍馬 8蔵王 9飯盛 10信貴 11飛鷹 12隼鷹


 また、マル3の翔鶴型も史実より違っていた。


 翔鶴型航空母艦

 基準排水量

 38000トン

 全長

 270メートル

 全幅

 30メートル

 機関

 九五式艦本式重油専焼水管缶8基、艦本式タービン4基

 速力

 34.2ノット

 兵装

 九七式十二.七サンチ連装両用砲八基

 九七式四十ミリ連装機銃八基

 二五ミリ三連装機銃二十基

 噴進砲十二基

 搭載機数

 常用96機(戦闘機36機 艦爆27機 艦攻27機 偵察6機)補用12機(各3機ずつ)

 油圧カタパルト二基

 同型艦

 翔鶴 瑞鶴


 翔鶴型も史実とは異なっておりその性能は史実より向上していた。日本海軍も着々と新たなる戦いに備えていたのであった。






御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ