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第六十五話

ある意味、また国家公務員の方に戻ったので更新は遅くなります





「以上が徐州会戦の結果となります」

「……完全には包囲殲滅は出来なかったか……」


 1938年6月20日、参謀本部で東條は閑院宮載仁親王にそう報告をしていた。


「ですが殿下、敵国民党軍の指揮官を複数捕虜にしたのは幸いかと存じます」


 史実に比べて戦力としては+三個師団、+四個戦車連隊、+海軍航空隊の参戦である。海軍航空隊の爆撃や機銃掃射により史実では歩兵第59連隊を砲撃して苦しめた仏製の二四サンチ列車砲を砲撃する前に破壊に成功。

 更に将和の情報を元に第59軍を航空攻撃により半壊、軍長の張自忠を戦死させた。軍長クラスには残念ながら逃げられてしまったが師団長クラスを数名捕虜にした。また、損害では日本側は死傷者が約一個師団ほどで国民党軍は史実より上回る約15万の死傷者を出していた。

 だがそれでも国民党軍の包囲殲滅は出来なかったのである。


「陛下にも辞任すると言ってきたが気にするなと言われたよ」


 親王は苦笑しながらそう言った。


「一先ずは武漢作戦の準備を進めよう」

「はっ!!」


 東條達は作戦準備に取り掛かるのであった。さて、海軍ではあるが将和は内地に戻り第一機動部隊司令官から二回目の航空本部長に就任した。理由としては山本五十六が海軍次官と兼任していたが仕事の量が多かったのでそれに哀れんだ宮様が将和を再度抜擢したのである。

 なお、第一機動部隊は一旦は解体となり元の所属艦隊に復帰した。その将和だが大神工廠を訪れていた。


「作業の進捗具合はどうかな?」

「予定通りですな。呉の一号艦も何とか予定通りですが工員の徴兵がされていたら両方とも遅れていたでしょう」


 将和の問いに海軍技師少将の福田啓二はそう答えた。此処、大神工廠では金剛型の代艦が前年37年から起工建造が行われていた。


「三連装砲か」

「はい、長門型より上の50口径41サンチ三連装砲です。ワシントン軍縮の時から開発が行われてきましたが漸く陽の目が浴びれそうです」


 金剛型の代艦は以下の性能だった。


 河内型戦艦

 排水量 48000トン

 全長 242メートル

 全幅 36メートル

 主缶 九五式艦本式重油専焼水管缶10基

 主機 艦本式タービン4基

 速力 32ノット

 航続距離 16ノットで10000海里

 兵装

 41サンチ50口径三連装砲三基

 九七式12.7サンチ50口径連装両用砲十基

 九七式40ミリ連装機関砲16基

 25ミリ三連装対空機銃12基

 25ミリ単装対空機銃50基

 水上機4機

 同型艦

 河内 因幡 岩代 薩摩


 四隻はそれぞれ大神、神戸、佐世保で建造されていた。大神は中規模工廠だったが支那事変の勃発で予算が増額され新たに規模が増やされていた。また、呉では一号艦――大和型の建造も開始されていた。大和型の性能は以下の通りである。


 大和型戦艦

 基準排水量

 75000トン

 満載

 85000トン

 全長

 285メートル

 全幅

 45メートル

 機関

 九五式艦本式重油専焼水管缶12基、艦本式タービン4基

 二十万馬力

 速力

 29.2ノット

 兵装

 五十口径四六サンチ三連装砲三基

 噴進砲四基

 九七式十二.七サンチ連装両用砲十六基

 九七式四十ミリ連装機銃十六基

 二五ミリ三連装機銃八基

 二五ミリ単装機銃七二基

 同型艦

 大和 武蔵 出雲


 主砲は史実より上の50口径46サンチとなっている。副砲は初めから無く両用砲が副砲の代わりとなっていた。同型は大和、武蔵、出雲と決定されていた。そのため装甲巡洋艦の出雲は史実と違い艦名が変更され赤石となり更には同じ装甲巡洋艦の八雲も鈴鹿に変更された。(しかし、後に八雲は新型重巡の名前に受け継がれている)

 大和型の特徴としては水中防御にも力を入れており外側は史実通りの空層防御、内側を液層防御方式にしている。これは河内型にも取り入れられている。ちなみに平賀譲は防御方式は全て空層式を主張したが無視されていた。

 なお、空母も勿論建造中であり横須賀と呉で翔鶴型が建造中だった。


「金剛型は河内型と交代して退役か……ユトランド沖で共に戦ったのが懐かしいな……」


 建造中の河内を見ながら将和はそう思う。


(出来れば対米戦は無い方が良いが……無理だろうなぁ……)


 将和はこっそりと溜め息を吐きながら福田少将から更なる説明を受けるのであった。

 7月、史実だと満州国東南端の張鼓峰にて日本とソ連の国境紛争である張鼓峰事件が勃発するがシベリア帝政国なのでそのような事はなかった。しかし、オラホドガ事件やタウラン事件、乾岔子島事件等は勃発していた。


「ノモンハン若しくはノモンハンに相当する衝突は必ずあるだろう。それまでに部隊を整えておく必要がある」


 親王はそう述べる。陸軍も既に覚悟していたのだ。

 10月1日、ヒトラー率いるドイツはチェコスロバキアからズデーテン地方の割譲に成功。ドイツも史実通りの道を歩んでいた。

 一方、将和は自宅にて長男将弘の海兵卒業の細やかな宴会をしていた。


「遠洋航海後は金剛乗り組みか」

「はい。同じ同期の藤田ともですが……」

「やはり俺と同じ道を……?」

「追ってみたい。その気持ちだけだ」

「……そうか。なら俺からは何も言わない、ただしだ。死ぬなよ」

「……はい」


 将和の言葉に将弘は頷いた。その時、夕夏が部屋に入ってきた。


「将弘、近所の志乃ちゃんよ」

「えっ?」


 言われた将弘は首を傾げながら外に行くのであった。


「……なぁ夕夏」

「どうしたの?」

「……あいつって確かセシルと……」

「中々進展しないから諦めていた幼馴染みの志穂ちゃんが吶喊中なのよぉ♪」


 展開に嬉しい夕夏。


「えぇ……優柔不断だな将弘……」

「貴方がそれを言えるのかしら?」

「すいませんでしたァ!!」


 夕夏の睨みに将和は土下座するのであった。それはさておき12月4日、日本軍は首都機能を維持する重慶に対して戦略爆撃をする事を決断した。


「馬鹿を言うな!!」


 海軍省で海軍将官会議に出席した将和は怒号を放つ。


「重慶を爆撃だと、馬鹿馬鹿しすぎる!! 先の渡洋爆撃の被害を忘れたのか!!」


 そう言って重慶爆撃を主張する山本や井上を牽制する。


「戦闘機の護衛無くして爆撃など不可能だ。貴様らはパイロットをみすみす死なせる気か!!」

「しかし戦闘機の航続距離では重慶を爆撃など出来ませんぞ三好中将!! 貴官は戦略爆撃をするなと仰るのか!!」

「その通りだ」

「……っ……」


 将和がピシャリと告げたので反論しようとしていた井上は二の次の言葉が出なかった。


「爆撃演習ですら未だ不充分なのに無闇に爆撃をして何になる。それでは民間人への被害を増すばかりだぞ!!」


 将和はそう言うがそこに大臣の米内がコホンと咳き込む。


「航本部長の主張も一理ある。しかし蒋介石を屈服させるにはやはり戦略爆撃が必要なのは事実である」

「戦争拡大の原因をさせた方がよく仰る物だな」

『………』


 将和のそう返しに場が凍る。しかし米内は飄々とした表情だった。


「重慶への爆撃は決定済みです。航本部長もそのところは御理解頂きたいですな」

「被害がどうなっても知らないからな」


 将和は井上達にそう釘を刺したのであった。


「やはり三和を左遷した事で山本達が恨んでいるようだな」

「ふん、三和に関しては自業自得でしょう」


 総長室で将和は宮様とお茶を飲んでいた。将和は先程の米内の決定にムカつくのか煎餅をバリバリ食べている。


「まぁそう気にするな(損害が多ければ奴等も地雷を踏む……やむを得ない事か)」


 そう悟る宮様だった。そして重慶への爆撃が開始されるが数日経つと陸攻隊の被害は増すばかりだった。護衛に付くはずの九六式艦戦は航続距離の関係で重慶上空に辿り着く事は叶わず、陸攻隊は虚しく中華民国空軍のI-16やI-15戦闘機に撃墜されていくのである。


「だから言っただろうが!? 貴様らの満足感を得るために貴重なパイロットが散華したんだぞ!!」

『………』


 再度の会議にて将和はそう主張する。その反論に井上達は返せる言葉はなかった。しかし、米内はこう主張した。


「今回の原因は航続距離が短い戦闘機を保有していた事によります。そのため、航続距離が長い新型戦闘機の開発を主張します」

(あの栄光と悲劇の戦闘機を作れと言うのか!!)


 米内の主張に将和は脳裏に史実にて栄光と悲劇の戦闘機となった零戦を思い浮かべた。


「そうです。新型戦闘機の開発を急がせましょう」


 米内の主張を援護射撃に井上達はそう主張するのであった。実際、将和は三菱――堀越二郎に十二試艦上戦闘機の開発を依頼していた。

 史実の反省を踏まえて史実零戦五三型――栄発動機の馬力向上や金星発動機の開発を指示していたのだ。主張する井上達は将和に責任がある風にも言ってきたに近かった。


(この……クソッタレどもがぁ……)


 将和は怒鳴りつけたい気持ちを押さえつつ米内に頭を下げるのであった。





御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] やはり米内は日本の膿だな。吐き気を催す外道そのものだ。
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