戦後編第五話
何とか南太平洋海戦の日に間に合った……
10月22日0250ウラジオストク沖約70キロ、そこに田辺大佐率いる第一潜水隊の伊号『400』型潜水艦6隻が次々と浮上したのである。
「『晴嵐』の射出急げェ!!」
「カタパルト準備宜し!!」
「押し出せェ!!」
「押せェ!!」
20人ばかりの整備兵達が開いた飛行機格納筒から『晴嵐』を押し出してカタパルトに固定する。準備完了した一番機が発動機を点火させプロペラが回り出す。
「『晴嵐』発艦準備宜し!!」
「発艦せよ!!」
バンッと空気式カタパルトである四式一号射出機一〇型 (四式1号10型)から爆装した『晴嵐』が発艦する。続いて二番機も訓練と同じく4分後に準備完了し発艦していくのである。12機の『晴嵐』を発艦する第一潜水隊。しかし、第一潜水隊はまだそれで終わりではなかったのだ。
「『梅花』発射用意!!」
「発射用意急げェ!!」
カタパルトに改造されたイ号一型甲無線誘導弾(『梅花』)が設置され、エンジン下部には航空機発艦用のRATOが二基追加設置されていた。
「準備宜し!!」
「『梅花』発射ァ!!」
RATOが点火し、その瞬間に『梅花』がカタパルトから発射される。それを上空で『晴嵐』隊が確認し無線誘導に切り替えてロケットを点火させたのである。
「ようし、良いぞ。訓練通りだ」
伊号『401』の艦橋で見ていた田辺大佐はニヤリと笑みを浮かべる。後は全ての『梅花』を発射して潜航するだけである。各艦5機の『梅花』は浮上してから35分後に発射し終えて6隻は潜航し『晴嵐』の回収海域に向けて航行をするのであった。
そして発射した『梅花』は『晴嵐』隊の無線誘導により高度300を維持して最大射程距離の70キロを飛行し目標であるウラジオストク軍港に次々と降り注いだのであった。
「それでウラジオ艦隊は?」
「現在は北朝鮮の半島沿いを航行しています。基地航空隊の援護を頼っているようです」
「まぁ奴等の搭載機はレシプロ機だからな」
『キエフ』『ミンスク』が搭載しているのはLa-9を艦上戦闘機化したLa-9MとIl-2T(魚雷を搭載可能とした艦攻型)を搭載しているくらいであり日本海軍や米海軍のように噴式機はまだ搭載していなかった。
「長官、スプルーアンス司令長官より入電です。どうやら一航艦の航空支援が欲しいと……」
「またか。アメリカめ、自分のジェット機の稼働率が悪いからと言って何でもかんでもウチを頼るなよ……」
連日の出撃で稼働率が低下した米海軍は幾度となく日本海軍に航空支援を依頼しているので一航艦の航空機も稼働率は低下しつつあったのだ。
「……仕方ない、山口には三航戦を出すように言え。一航艦もウラジオ艦隊への航空攻撃は一回のみにして後は米海軍の支援だな」
「宜しいのですか?」
「構わん。一艦隊と二艦隊で突っ込むから空母を叩いてくれたら問題あるまい」
「確かに……それなら後は此方が仕掛けても大丈夫ですな」
将和の言葉に草鹿は頷く。命令は直ちに一航艦旗艦『信濃』の山口の元に届けられ三航戦の『大鳳』『神鳳』が米海軍支援のため護衛艦艇と共に離脱するのである。10月26日0750、ウラジオ艦隊は鬱陵島沖を通過し蔚山沖180キロの地点を航行していた。そして日ソ両艦隊は激突したのである。
「左舷10時方向、距離81キロにソ連ウラジオストク艦隊です!!」
「ん。一航艦からの攻撃隊は?」
「予定通りなら3分後に電探が探知するでしょう」
草鹿の予言通りに3分後に一航艦からの攻撃隊が到着し攻撃隊はウラジオストク艦隊に攻撃を開始する。
「全軍突撃せよ!!」
『信濃』飛行隊隊長になった三好将弘大佐は『橘花』を操縦しながら突撃を開始する。攻撃隊は『蒼雷』54機、『橘花』54機、彩雲2機の110機で襲来した。
「クソッ、奴等はジェット機か!?」
La-9Mのパイロットはそう罵倒しながらも『蒼雷』を追おうとするが『蒼雷』は速度を上げて引き離し、緩やかな右旋回をしてLa-9Mの後方に躍り出たのである。
「クソッタレ!?」
『蒼雷』からの20ミリ機銃の射撃を浴び海面に向かって炎上するLa-9Mのパイロットは脱出するのである。
「……これがヤーパンの航空力か……」
ソ連義勇海軍でウラジオストク艦隊司令長官のウラジーミル・アンドレエフ大将は上空の空戦を見て唸る。対空レーダーで敵攻撃隊の接近に『キエフ』『ミンスク』からLa-9Mを38機発艦させたが『蒼雷』の独壇場になってしまった。あっという間に散々になってしまい、『蒼雷』は連携をしつつ1機ずつLa-9Mを撃墜していくのである。
その中で『橘花』隊は爆装隊と雷装隊に分かれて爆装隊は上昇し雷装隊はウラジオ艦隊の左右から突撃を開始した。
「撃ち落とせ!!」
ウラジオ艦隊は対空砲火を開いて『橘花』隊を近づけさせないようにするがそもそもの想定速度が違うので爆装隊は緩降下での爆撃を敢行、『キエフ』に500キロ爆弾3発、『ミンスク』に500キロ爆弾4発が命中し両空母は瞬く間に炎上したのである。
更に爆装隊は護衛艦艇にも攻撃し重巡『ラーザリ・カガノーヴィチ』は500キロ爆弾6発が命中し後部砲塔の弾薬庫が爆発、『ラーザリ・カガノーヴィチ』は轟沈し艦首を高々と挙げて対馬海盆に没したのである。
他にも『クラースヌイ・カフカース』が大破しそこへ将弘率いる雷装隊が左右から突撃してきた。
「用意……撃ェ!!」
高度5メートルで『橘花』の胴体下に搭載した91式航空魚雷改6(『橘花』の高速に耐えれるよう改良)を投下、更には左右翼下に搭載した24基のロケット弾を発射し炎上する『ミンスク』に叩き込み離脱する。高度1000まで上昇すると『ミンスク』の左舷に3本の水柱が噴き上がったのである。
同時に左舷に3本が命中した『ミンスク』は左舷に傾斜していき復旧しようとするも更に2本が命中しこれがトドメとなったのである。
「おのれヤーパンめ……」
アンドレエフ大将は乗員の救助を急がせつつウラジオストクに帰還するか迷った。しかし、それを抑えたのは『クニャージ・スヴォーロフ』(旧『ヴィットリオ・ヴェネト』)に乗艦していた政治士官である。
「書記長の命令は絶対である!! このまま進むのだ!!」
政治士官の命令は即ち書記長の命令でもある。アンドレエフ大将は言い返せない事に内心舌打ちしつつ再陣形を整えて南下を開始した。炎上した『キエフ』は飛行甲板は使えないがそれでも航行は可能であった。その為アンドレエフは囮艦として使う事も視野に入れていたのだが水上レーダーが接近してくる艦隊を探知したのである。
「それでも奴等は突っ込んでくる……か……」
「勇敢でしょうか?」
「いや……引き際を知らない者は戦闘を知らないのと一緒だな」
将和は略帽を脱いで頭をポリポリかいてから再度被り直す。
「総員戦闘配置、速度を24ノットに増速せよ。右砲戦、準備!!」
「右砲戦……ですか?」
この時、ウラジオ艦隊は第一艦隊(後方は第二艦隊)の左舷にいた。それなのに右砲戦の準備である。
「おかしいか草鹿?」
「反航戦でなら左砲戦ではありますが……まさか長官……」
「その……まさかだよ」
ニヤリと笑う将和に傍らにいた第一戦隊司令官の松田千秋中将は後に手記にて「この時、艦橋にいた者は興奮に襲われていたのは間違いない」と記した程であった。
1230、両艦隊の相対距離は45キロを切っていた。将和達は防空指揮所に上がりウラジオストク艦隊を双眼鏡で視認した。
「敵一番艦は……『ヴィットリオ・ヴェネト』級か」
「間違いが無ければ38.1サンチ三連装砲です。射程距離は4万4600はあると思われます」
「となると旗艦『クニャージ・スヴォーロフ』か……フッ、『國親父座ろう』か。懐かしいな……」
「長官、それは……」
「ん? 俺が『三笠』で特務参謀をしている時に砲術長だった安保さんが水兵達に教えていたんだよ。水兵達はロシア語に馴れてないから安保さんが夜に教えていたんだ。懐かしいよ……」
将和はそう言いながら双眼鏡を覗き『クニャージ・スヴォーロフ』を見ていたが松田や草鹿達、防空指揮所にいた者達は将和の日本海海戦の秘話に興味津々に聞いていたのである。
『距離4万を切ります!!』
伝声管からの報告に『出雲』艦長の清水芳人大佐は将和に振り向いた。
「どちら側で戦をなさりますか?」
奇しくも『あの時』に伊地知艦長が東郷に聞いた言葉を自身も聞かれるとは思わなかった将和は一瞬、目を丸くするも直ぐに苦笑しつつ顔の表情を戻して右腕を挙げた。
『ッ』
防空指揮所の者達が固唾を飲んで見守る中、将和は右腕を左に振り下ろした。それを見た松田中将は清水艦長に口を開いた。
「艦長、取舵だ」
「取舵ですか?」
「そうだ、取舵だッ」
「は、はい!! とぉーりかぁーじ、一杯!!」
『とぉーりかぁーじ、一杯!!』
第一艦隊は旗艦『出雲』を先頭にしつつ『出雲』は取舵を切る。そして二番艦『長門』も『出雲』が取舵をした同一地点に来るとよく訓練されたダンサー達のような正確さで取舵をするのである。
「мудак(クソッタレ)!! 奴等トーゴーの再現をするという気か!!」
アンドレエフ大将は罵倒しつつ戦況を分析する。アンドレエフ大将としては最大射程距離からではなく中距離からの砲撃を以て対抗しようとしていた。それは射撃練度の低さであり、中距離からならまだレーダー射撃で対抗出来ると踏んでいたのだ。
(イカン、このままでは……狙いは『クニャージ・スヴォーロフ』というわけか!!)
アンドレエフ大将はそう確信し回避運動をしようとしたがそれを遮ったのは政治士官であった。
「何をしているのだ同志アンドレエフ!! 早くヤーパンの艦隊を撃つのだ!!」
「し、しかし同志ミコヤン……」
「早く撃つのだ!!」
政治士官からの命令には逆らえなかった。
「……主砲、敵一番艦に射撃開始せよ!!」
『クニャージ・スヴォーロフ』は距離3万7000で砲撃を開始したのである。
「敵一番艦、砲撃を開始しましたッ」
「……急かされたか……」
「アレですか? 政治士官とやらですか?」
「あぁ。政治士官の発言はスターリンの発言と同じらしいからな」
「何とまぁ……」
将和の肩を竦める草鹿である。砲弾は『出雲』から遠弾ではあった。
「敵が『出雲』を集中して狙えば……五斉射目くらいだな」
「ですな。速度を上げますか?」
「……『長門』にはちとキツイが……26ノットにしよう」
「了解です。26ノットに上げます」
第一艦隊は更に速度を上げる。砲弾も『出雲』に集中しているが何れも命中せず水柱を吹き上げるのみであった。
『距離3万2000です!!』
「そろそろ……か……」
将和がそう呟いた時、『出雲』の右舷両用砲が吹き飛んだ。被弾したのだ。
「被害報告、急げ!!」
清水艦長が伝声管に怒鳴り、直ぐに報告が来た。
『右舷二番両用砲被弾!! 二番両用砲員、全員戦死!!』
『火災発生するも直ぐに鎮火しました!!』
『出雲』は第一次近代化改装で装甲も増加しており対51サンチ砲であった。並大抵な砲弾では余程貫通しないのである。
「今の距離は?」
『距離3万になるところです!!』
測定員の報告に将和は頷いた。
「ん、目標、敵一番艦『クニャージ・スヴォーロフ』、いや『國親父座ろう』だ!! 全艦砲撃開始!!」
「はッ!! 主砲、敵一番艦『國親父座ろう』!!」
『距離宜し、弾種宜し!!』
「撃ちぃ方始めェ!!」
『出雲』は46サンチ砲の射撃を開始した。マリアナ沖大海戦以来の砲撃である。放たれた砲弾は『クニャージ・スヴォーロフ』の右舷50mに落下した。
「ムゥッ!?」
『右舷より浸水!! 現在防御作業開始!!』
(馬鹿な、浸水だと!? 元はイタリアの最新鋭戦艦だぞ!!)
アンドレエフ大将は驚愕する。日本海軍が使用していたのはマリアナ沖大海戦前に採用された四式徹甲弾は大重量砲弾であり2t近くもあったのだ。
「第二斉射目、来ます!!」
耳をつんざくような滑空音と共に4隻の戦艦(『出雲』『長門』『伊勢』『日向』)から放たれた33発の砲弾は『クニャージ・スヴォーロフ』の周囲に次々と着弾し外れた砲弾は水柱を吹き上げる。しかし、『クニャージ・スヴォーロフ』は2発の46サンチ砲弾と1発の41サンチ砲弾が命中したのである。
「被害報告!!」
『三番砲塔に直撃!! 三番砲塔、使用不能!!』
『右舷高角砲群被弾!! 炎上中!!』
『浸水により右傾斜角10度になります!!』
「反対舷への注水急げ!!」
「直ちに反撃せよ!!」
『クニャージ・スヴォーロフ』は前部2基の38.1サンチ砲で砲撃を再開する。しかし、再び第一艦隊から集中砲撃を受け被弾するのである。
「長官、『國親父座ろう』は被弾炎上していますが……」
「……砲撃は『出雲』だけにしよう。他艦の照準は『長門』らに任せる」
「了解です」
直ちに『長門』は敵二番艦『ツェサレーヴィチ』(旧『リットリオ』)へ『伊勢』は『ノヴォロシースク』(旧『ジュリオ・チェザーレ』)に『日向』は『セヴァストーポリ』に照準を合わせて砲撃を開始する。ウラジオ艦隊の戦艦3隻も自身が撃たれたのに気付いたのかそれぞれ目標を合わせて砲撃を行うのである。
『Гангут』は五戦隊からの砲撃で炎上し艦橋にも直撃を喰らっていた。
その一方で伊藤大将の第二艦隊も敵巡洋艦への砲撃を強めていた。特に『シベリア』(独重巡『プリンツ・オイゲン』)は『高雄』と砲撃をして機関に直撃を食らい漂流を開始していた。
『カリーニン』は『摩耶』との砲撃で艦橋と舵が破壊され、取舵のまま旋回するだけであったがそれでも砲は生きていたので引き続き砲撃を行う。
『タリン』(独重巡『リュッツオウ』)は『八雲』以下4隻と交戦し魚雷発射管をつらぬかれ炎上していた。
「水雷戦隊に命令、水雷戦隊は直ちに突撃せよ!!」
「はッ!!」
命令を受けた第二水雷戦隊司令官吉川潔少将、第三水雷戦隊司令官吉田英三少将は直ちに突撃を開始したのである。
「撃ちまくれェ!!」
『能代』艦橋で吉川少将は吠える。『能代』を先頭に二水戦は突撃しウラジオ艦隊の一角に穴を開けようとする。無論、敵の巡洋艦隊(第二巡洋艦隊)もそれを抑えようと砲撃してくるがそれに被さるように突撃を支援するのは五戦隊の『妙高』『那智』『羽黒』『足柄』の4隻であった。
彼女達四姉妹の砲撃支援の下で二水戦と三水戦は敵水雷戦隊の一角に穴を開け、そこからウラジオ艦隊に突撃したのである。
「距離720!!」
「もっと詰めろ!!」
幸いにも両水戦に砲弾は疎らにしか降って来なかった。これは戦艦同士の砲撃戦が終始行われているからであり彼女達の気を逸らせる事に成功していた。
「距離570!!」
「魚雷、撃ェ!!」
『能代』は61サンチ四連装魚雷発射管を発射した。圧縮空気のボシュゥッ、ボシュゥッの音と共に魚雷が最左翼の発射管から勢いよく発射されていく。両水戦は被弾らしい被弾をせずに離脱に成功する。
「ヘッ、マリアナ沖に比べたらまだまだ甘いな」
古参の水兵長はウラジオ艦隊を見つつそう呟く。そして水雷長の「時間!!」という言葉と共に酸素魚雷は次々と水柱を吹き上げたのである。
「な、何事だ!?」
「魚雷です!! 敵の水雷戦隊からの魚雷攻撃です!!」
「しまった!? 酸素魚雷という奴か!!」
『クニャージ・スヴォーロフ』は左舷に3本の酸素魚雷が命中した。しかし、『クニャージ・スヴォーロフ』はプリエーゼ式水中防御隔壁を採用しているので3本の酸素魚雷にも今のところは耐えていたのである。
しかし『ノヴォロシースク』(旧『ジュリオ・チェザーレ』)はマトモに7本が命中し爆沈、被弾炎上していた『タリン』(独重巡『リュッツオウ』)も5本が命中しあっという間に転覆したのである。他にも『Гангут』にも1本が命中して傾斜していた。
此処にきてアンドレエフ大将は撤退の決断を降した。これ以上はウラジオ艦隊が再起不能になってしまう。
「全艦に通達!! 直ちに反転しウラジオストクへ帰還するのだ!!」
「なッ!? それは認めんぞ同志アンドレエフ!!」
「馬鹿者!! この惨劇を見てまだ分からんのか!! これ以上進めばウラジオストク艦隊は完全に再起不能になるぞ!!」
「同志書記長の命令だ!!」
「このッ……」
アンドレエフ大将はそれ以上は言わなかった。否、言えなかったのだ。直後に『出雲』の46サンチ砲弾が艦橋を直撃、アンドレエフ大将以下艦橋にいた者全員が戦死したのだ。その為、アンドレエフ大将最後の命令は発信されなかったのだ。
1346、『日向』と砲撃戦を演じていた『セヴァストーポリ』は弾薬庫の誘爆により船体が三つに折れて轟沈した。
1402、『長門』が被弾炎上し『伊勢』『日向』が合流して『ツェサレーヴィチ』に砲撃を加えてこれを炎上させた。
「長官、『國親父座ろう』まだ撃ってきます」
「だから何だ? 叩きのめせ!!」
1409、『出雲』からの46サンチ砲弾2発が『クニャージ・スヴォーロフ』の致命傷となった。二番砲塔の弾薬庫が誘爆し消火もままならないまま、『クニャージ・スヴォーロフ』は轟沈したのであった。
『クニャージ・スヴォーロフ』の轟沈が切っ掛けなのか、ウラジオストク艦隊は我先にと離脱しようとする。しかし、聯合艦隊は逃がす筈はなかった。
「駆逐艦の1隻に至るまで砲雷撃をし沈めよ。奴等を生きてウラジオストクに帰すな!!」
最初に白旗を掲げて全方位に平文で『我、機関停止ス。我、降伏ス』の無電を発したのは機関に直撃を食らい漂流していた重巡『シベリア』だった。時に1416であり、それを境に他艦艇も次々と機関停止をし白旗を掲げるのであった。
「………終わった……か……」
「一先ずは……かもしれませんな」
「報告!!」
略帽を取り、頭をポリポリとかく将和に草鹿はそう言う。そこへ通信兵が電文を持ってきた。
「何か?」
「ほ、本土より緊急電です!! ほ、本土が爆撃されているとの事です!!」
『ッ!?』
通信兵の叫びに将和は通信兵が持っていた通信文を奪い取る。
『本土空襲サレル。帝都、大阪、神戸、名古屋ニ敵超重爆飛行中』
「………やりやがったなスターリン!!」
「見えた、敵爆撃機だ!!」
中部航空方面軍第七航空団第7飛行隊に所属する三好将斉少佐(なろうでは初登場の三男)は愛機の『蒼雷』を駈りつつ高度1万2000を飛行していた。彼の下方には100機以上のTu-4が飛行していたのだ。
「此方イヌワシ1、全機突撃せよ!! 奴等を1機も生かして帰すな!!」
『了!!』
「掛かれェ!!」
『蒼雷』36機は一斉に急降下を開始したのである。
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