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第百十八話






「ガッデム!! 上陸船団がやられたか!!」


 何とか傾斜を復原したキング・ジョージ五世の艦橋でフレーザー大将が叫ぶ。フレーザー大将はムーア中将からの報告電を受けていた。

 上陸船団は空母コロッサスとヴェネラブル、タウン級二隻が撃沈、輸送船13隻が沈められたのだ。


「対空レーダーに反応!! 敵の第二次攻撃隊です!!」

「えいクソ!! 迎撃隊を向かわせろ!!」


 この攻撃隊はインドネシアのメダンから飛来した攻撃隊であり護衛には補用の陣風12機が付いていた。第二次攻撃隊の護衛には当初は基地航空の零戦が先行して南遣艦隊で給油してから護衛につくはずだったが間に合わない事が判明して艦隊警戒用で整備していた陣風12機を急遽第二次攻撃隊の護衛として同行する事になったのである。

 陣風12機はまだ残っていた敵戦闘機を駆逐し攻撃隊に近寄らせないようにする事で攻撃隊は無傷で英東洋艦隊上空に到着する事が出来たのである。


「全軍突撃せよ!!」


 攻撃隊は傷ついた艦艇からの攻撃を優先する事にした。まず最初に狙われたのは戦艦アンソンにハウだった。二隻には一式と呑龍の攻撃隊が殺到、二隻は対空砲火を撃ち上げて一式と呑龍を多数撃墜するもアンソンは500キロ爆弾四発に魚雷三発、ハウに500キロ爆弾五発に魚雷六発が命中。アンソンは大破しハウは浸水の影響で大傾斜をし最早助からない状況になっていた。


「おのれェェェ……」



 キング・ジョージ五世の艦橋でフレーザー大将は両拳をワナワナと握り締める。だがその直後、見張り員が叫んだ。


「上空からベティが!?」

「何!?」


 上空から機体が炎上する一式がキング・ジョージ五世ーー艦橋に向かっていた。


「一緒に逝こうか!!」


 操縦席で腹に致命傷を負いながらも操縦する機長がニヤリと笑う。


「馬鹿なーー」


 そして一式は艦橋に衝突、小規模の爆発をしたがフレーザーらを吹き飛ばすのには十分だった。英東洋艦隊は主力部隊の司令長官を失い上陸部隊のムーア中将が指揮をとることになる。


「直ちに退却だ!! このままでは再び東洋艦隊は壊滅するぞ!!」


 ムーア中将は残存艦艇と合流しつつ退却する事を選択するも南遣艦隊から再度発艦した第二次攻撃隊が殺到、この攻撃で沈没艦は出なかったものの戦艦ネルソンとロドネー、キング・ジョージ五世等は浸水等で速度が低下してしまう。勿論、それを西村中将は見逃す筈はなかった。

 速度が11ノットで航行する英東洋艦隊のデアリング級駆逐艦が搭載する293型レーダーが22ノットの速度で追撃してくる南遣艦隊を探知したのは2230だった。


「日本海軍伝統の夜戦で敵英東洋艦隊の息の根を刺す!!」


 旗艦山城は各艦へ発光信号を発した。


『帝国海軍ノ伝統タル夜戦ニオイテ必勝ヲ期シ突入セントス。各員冷静沈着ヨクソノ全力ヲツクスベシ』


「砲撃始めェ!!」


 旗艦山城が砲戦を開いたのは英東洋艦隊との距離三万二千であった。奇しくもこの日の月は満月であり場合によって南遣艦隊の見張り員は英東洋艦隊を視認出来たのである。


「撃ェ!!」


 追いかける形なので前部連装二基しか使用出来ないがそれでも十分だった。


「徐々に左に切れ。右砲戦の準備を急がせろ!!」


 南遣艦隊が同航戦に移行としていたのはムーア中将も水上レーダーで確認していた。


「戦艦同士の艦隊決戦か……」

「長官……」


 目を閉じたムーア中将だがカッと目を見開いた。


「宜しい……本懐である!! 悪いが損傷艦艇は我が艦と共に最後まで国王陛下に付き合ってもらう」


 ニヤリとムーア中将は無傷の艦艇ーーデューク・オブ・ヨークやウォースパイトはそのまま退却するのである。


「長官」

「やむを得ん、留まる艦艇を砲撃する」


 西村中将は退却を支援するネルソン以下の艦艇と艦隊決戦をする事を決断、両艦隊は距離二万五千にて砲撃戦を展開する。


「敵の旗艦を最優先で叩く!!」


 山城以下の戦艦四隻は敵旗艦ーーロドネーに砲撃を集中する。しかし、ロドネーは長門型等同世代の40サンチ砲戦艦と遜色ない重防御が成されている。そのため距離二万五千でも南遣艦隊からの砲撃は十分に耐えていた。

 西村はそれを直ぐに見抜いて命令を発した。


「距離を詰める。おもぉーかぁーじ!!」

「長官、何処まで詰めますか?」

「一万五千まで行くぞ。場合によっては一万まで詰める!!」


 しかし、その賭けは危険に溢れていた。それまでの間に砲撃を受ける可能性は十分に有り得た。しかもネルソンが放った三斉射目は第12駆逐隊の駆逐艦東雲と薄雲を爆沈させていた。


「耐えろ!! 突撃命令が出るまで耐えるんだ!!」


 六水戦司令官の阿部俊雄少将が六水戦旗艦水無瀬の艦橋で叫ぶ。更に六戦隊の加古もキング・ジョージ五世の砲撃命中で炎上している。だがそれでも南遣艦隊の士気は高かった。


「距離一万五千!!」

「何としても敵旗艦を叩け!!」


 この時点で山城も40サンチ砲弾六発が命中して炎上していた。それでも山城は耐えていた。

 山城が放った十四斉射目はロドネーに四発が命中しロドネーの三番砲塔の射撃不能を叩き込んだのである。だがそのお返しとばかりにネルソンから二発が命中、更に駆逐艦から放たれた砲弾が艦橋に命中し西村中将以下の司令部も死傷者が発生した。


「長官!?」

「構うな、砲撃を続けろ!! それと六水戦に突撃命令だ!!」


 西村中将の命令に阿部少将は飛び付いた。


「待ってました!! 全艦突撃ィ!!」


 水無瀬以下の水雷戦隊は六戦隊の砲撃支援の下で突撃を開始、距離八千にて必殺の酸素魚雷を発射したのである。


「ぶちかませ!!」


 ニヤリと笑う阿部少将。その事実は少しの時間を置いて現実となった。


「時間!!」

「確認!!」

「水柱多数!! 命中です!!」


 放たれた酸素魚雷はロドネー×4、ネルソン×3、キング・ジョージ五世×4に命中した。防御に不安があったキング・ジョージ五世はこれが致命傷となりキング・ジョージ五世はあっという間に波間に没するのである。


「敵が乱れたぞ!! 撃ちまくれェ!!」


 西村中将はそう鼓舞をするがロドネーは山城、ネルソンは扶桑に最後の維持とばかりに砲撃を集中、山城×2、扶桑×5が命中。

 扶桑は耐えきれず炎上してその機能を停止した。また山城も戦闘続行は不可能となったのである。


「最期は砲撃屋として山城と共に逝くのだ、満足だよ……」


 西村中将はそう笑いながら息を引き取った。残る伊勢と日向も大破に近い損傷をしており小沢中将は前衛部隊と合流して作戦を打ち切るのである。


「西村や扶桑と山城の喪失は痛いが英東洋艦隊の戦略を防ぐ事には成功したな……」


 小沢中将はそう締め括るのであった。そして舞台は小笠原沖に移るのである。






御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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