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第百十七話

本日は終戦の日。父方の曽祖父が生きていたら俺はどうなっていたかねぇ……。







「しまった!? 奴等の狙いは上陸船団か!!」


 基地航空隊からの攻撃を受ける中、フレーザー大将はレーダー員からの報告に帽子を床に叩きつけた。英東洋艦隊は現在、ヤンゴンから飛来した第十三航空艦隊の攻撃隊からの攻撃を受けていた。勿論、英東洋艦隊は各空母から迎撃用のコルセアを発艦させて上空警戒をさせていた。

 だが攻撃隊に同行していた零戦60機の護衛によりコルセア隊は中々近づけなかった。


「……上陸船団にはコロッサスとヴェネラブルを付けてはいるが何処までやれるか……」


 上陸船団の護衛にはネルソンを筆頭に戦艦ロドネー、レゾリューション、クイーン・エリザベス、ウォースパイトの五隻とコロッサス級空母のコロッサスとヴェネラブル、乙巡はタウン級の六隻が護衛していたのだ。


「……持ちこたえろよ……」


 フレーザー大将はそう言うしかなかった。そして飛来した基地航空隊の大半は爆装していた。特に銀河72機は500キロ爆弾を一式陸攻84機は800キロ爆弾を搭載していた。零戦隊がコルセア隊との空戦の最中、まず最初に攻撃したのは800キロ爆弾を搭載した一式陸攻隊だった。


「狙うは空母だ。先に空母を叩く」


 一式陸攻隊の隊長は眼下に見える英東洋艦隊を見ながらそう指示を出す。英東洋艦隊は高速性を統一するため旧式戦艦群は上陸船団の方に回されていた。英東洋艦隊はコロッサス級が出せる25ノットの高速で之字運動を展開していた。陸攻隊は高度3000を維持しつつ9機ずつの逆V編隊に分かれて定められた目標の空母に照準を合わせた。


「用ぉ……意……撃ェ!!」


 教導機が投下すると列機の8機も次々と800キロ爆弾を投下した。高度3000からではマッチ箱の大きさくらいにしかない空母だが彼等はそれを叩くため一重に訓練を積み重ねてきたのだ。

 そしてその成果は現れたのである。


「命中!! 命中!!」


 眼下には命中して爆炎を上げる空母が複数いたのである。


「被害知らせ!!」

「グローリー、ヴェンジャンスに大型爆弾命中!! 艦内大火災が発生しているとの事です!!」


 二空母はそれぞれ二発、三発の800キロ爆弾が命中していた。二空母は瞬く間に大火災が発生し空母としての機能はほぼ終えていた。それを見た銀河隊は二空母に攻撃を集中、500キロ爆弾三発ずつ命中したのが致命傷となった。


「おのれ……ジャップめ……」

「更に爆撃態勢!!」


 ハッとフレーザー大将が上空を見るとまだ爆撃していなかった呑龍60機による水平爆撃が行われようとしていた。


「狙うは戦艦!! 用ぉ……意……撃ェ!!」


 呑龍60機も次々と800キロ爆弾を投下した。狙ったのは空母ではなく戦艦だった。それでも甲巡を戦艦と間違えたりのミスをしていた。

 結果としては戦艦アンソン、ハウに800キロ爆弾が一発ずつ命中。甲巡ロンドン、サフォークに800キロ爆弾三発ずつ命中した。

 ロンドンとサフォークは大破炎上した。流石に甲巡には800キロ爆弾三発は辛かった。攻撃隊が引き上げる頃には二隻とも波間に没しつつあったのである。

 その一方で四式重爆飛龍も雷撃を敢行しようとしていた。


「雷撃は海軍だけの専売特許じゃないからな!! 陸軍飛行隊の恐ろしさを見せつけてやれ!!」


 90機の飛龍は高度5メートルという低空飛行をしつつ突撃を開始。勿論英東洋艦隊もやられまいと対空砲火を撃ちあげる。


「撃ちまくれ!! 奴等を近づけさせるな!!」


 フレーザー大将が叫ぶ。彼が乗る旗艦キング・ジョージ五世にも飛龍20機が迫っていた。キング・ジョージ五世は対空砲火ーー特にポムポム砲はその威力を発揮しており距離1000に近づくまで11機を撃墜させていた。更に距離700までには4機を撃墜したがそこまでだった。


「撃ェ!!」


 残った5機は魚雷を投下して離脱する。キング・ジョージ五世は回避するも二本が命中した。


「日本人の魚雷は当たるではないか!?」


 奇しくもマレー沖海戦でフィリップスと同じ言葉をフレーザー大将は発する。キング・ジョージ五世は瞬く間に速度を落とし始めるのである。


「ハウ触雷!! 魚雷三本命中!!」

「アンソンにも水柱が……」

「シット!!」


 次々舞い込む悲報にフレーザー大将は舌打ちをする。空母を護衛していたキング・ジョージ五世級は回避に成功したデューク・オブ・ヨーク以外が触雷、特に魚雷三本が命中したハウは傾斜が酷くなる一方だった。またアンソンとキング・ジョージ五世も浸水の量が大きくなり徐々に艦隊速度が維持出来なくなりつつあった。

 その一方で上陸船団も小沢中将の南遣艦隊から放たれた攻撃隊に襲われていた。


「弾幕だ!! 奴等を近づけさせるな!!」


 ヘンリー・ムーア中将は戦艦ロドネーの艦橋まで叫ぶ。本来であれば本国艦隊司令長官のムーアであるがほぼ全戦力を投入しているので彼も上陸船団の護衛艦隊司令長官としてフレーザーの元でやっていたのだ。

 ムーア中将自身も日本海軍の事は聞いてはいたが対戦するのは初めてであり日本機の性能の恐ろしさをその目で体感するのである。


「コロッサス上空に急降下!!」

「何!?」


 ムーア中将が見るとコロッサス上空には6機の彗星が急降下していた。その腹には500キロ爆弾を搭載していた。


「撃ち落とせェ!!」


 ムーア中将の命令に答えるようにロドネーのポムポム砲が彗星を射撃する。2機の彗星がポムポム砲の射撃で撃墜されたが残った4機は投弾に成功。二発は至近弾となり外れるも二発は飛行甲板を突き刺さり格納庫に飛び込んでそこで力を解放した。エレベーター付近に飛び込んだ500キロ爆弾は爆風でエレベーターを吹き飛ばした。

 しかもコロッサス級は元来、直接防御は放棄されており機関・弾薬庫に僅か10ミリの隔壁が張られたのみである。そのため二発の500キロ爆弾が命中してはコロッサスも耐えれなかったのである。コロッサスは弾薬庫にも火が飛び込んで次々と誘爆を繰り返した。この時点で空母として、軍艦としての機能は停止したのである。


「コロッサス航行不能!!」

「むむむ……」


 コロッサスの悲報にムーアはそう声をあげるしかない。彗星隊は護衛艦艇の攻撃に集中、コロッサスの他にもヴェネラブル、乙巡のタウン級三隻、レゾリューションにも爆弾が命中して炎上していた。その対空砲火が開いた穴に天山隊が低空飛行で飛び込んだのである。


「速い!? 奴等の雷撃機はソードフィッシュ以上か!!」


 初めて見る天山の速度にムーア中将は唸り声をあげる。天山隊は護衛艦隊の対空砲火をものともせずに輪形陣中央に布陣する上陸船団に突撃、投下距離地点に近づくと次々と投下してゆっくりと上昇しながら離脱していく。


「回避だ!?」

「駄目です、間に合いません!!」


 15ノットが出れば御の字の上陸船団は次々と水柱を噴き上げるのであった。







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