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第百十六話

8日は自身の誕生日なんで何とか間に合わせました






「三好長官の安否は?」

「現在、『出雲』にて収容されました。本人は「久しぶりに海水浴をした」と言っています」

「……なら大丈夫だな」


 第一機動艦隊司令長官の山口中将は草鹿参謀長からの報告に安堵の息を吐いた。


「それで敵艦隊は?」

「彩雲隊の報告ではサイパン島から撤退してきた部隊と合流し真珠湾方面へ遁走しています」

「……そうか……」


 山口はゆっくりと提督椅子に座る。


「これで終わり……ですかな?」

「いや、まだだな。まだインド洋が残っている」

「……そうでしたな。インド洋は小沢さんがいてるので大丈夫とは思いますが……」


 時は少し巻き戻る。硫黄島に第二機動群が空襲した5月10日、セイロン島のコロンボ港への偵察へ赴いていた第18潜水隊の伊40が出撃する大船団を目撃したのだ。


「クソッタレ、大船団だ。恐らくはアンダマン諸島に向かう奴等だ」


 伊40は慌てて船団から離れると南遣艦隊に通報したのである。


「……来たか」


 シンガポールに停泊する南遣艦隊旗艦龍驤の艦橋で報告を受けた小沢中将はゆっくりと提督席を立ち上がる。


「直ちに出撃する。陸軍にも通報しろ」


 そして南遣艦隊は停泊していたヒ86船団に見送られつつ出撃するのである。


 南遣艦隊

 第三航空戦隊

 龍驤(旗艦) 飛鷹 隼鷹

 第四航空戦隊

 龍鳳 神鷹

 第二戦隊

 扶桑 山城 伊勢 日向

 第五戦隊

 妙高 足柄 羽黒

 第六戦隊

 青葉 衣笠 古鷹 加古

 第十二戦隊

 長良 鬼怒

 第六水雷戦隊

 水無瀬

 第十二駆逐隊

 叢雲 白雲 東雲 薄雲

 第十三駆逐隊

 妙風 清風 村風 里風

 第二二駆逐隊

 山霧 海霧 谷霧 川霧

 第三五駆逐隊

 八重雲 冬雲 雪雲 沖津風

 第六十五駆逐隊

 清月 大月 葉月 霜風

 第十二潜水隊

 伊26 伊30 伊34 伊35 伊38

 第十八潜水隊

 伊40 伊41 伊42 伊53 伊55

 第二十一潜水隊

 呂41 呂42 呂45 呂46 呂49 呂50

 第二十二潜水隊

 呂104 呂105 呂107 呂109

 第三十二潜水隊

 伊202 伊204


 さて南遣艦隊司令部では当初、ある程度の楽観視があった。それは相手が英艦隊であるという事である。

 英東洋艦隊は増強されてはいると情報はあったが其ほどの増強はされていないだろうと奥宮航空参謀は後の回想録で記述していた。しかし、第十三航空艦隊の彩雲からの打電に司令部は驚愕したのである。


「戦艦九隻に空母八隻だと!?」

「それに甲・乙巡は十隻はいる!?」

「馬鹿な!? ジョンブルども、本国艦隊も投入したというのか!!」

「………」


 慌てふためく参謀達を前に小沢は自然と緊張が緩んでいた。そうだ、自分達が焦れば兵達も焦るのだ。


「静まれェ!!」


 小沢中将の怒号に参謀達はピタッと騒ぎを止める。


「情報を正確に伝えろ、我々が騒げば向こうの思う壺だ。アンダマン海を奴等の墓標とするぞ!!」

『オオォォォ!!』


 参謀達は走り出す、己の仕事を果たすために。南遣艦隊が接触したのは5月13日の0530だった。空母飛鷹から発艦した彩雲三号機が英機動部隊を発見したのである。


「いやがった!?」

「直ちに打電だ!!」

「やってますよ!!」

「後方から敵機来るぞ!?」


 彩雲は打電しつつも攻撃してきたコルセアから逃げながら英機動部隊の詳細の位置を南遣艦隊に報告するのであった。


「我が艦隊との距離は?」

「約230海里といったところです」

「むぅ……」


 大林参謀の報告に小沢は顎を撫でる。


「何とか帰れる距離ではあるな」

「一応は……」


 そして小沢は決断をする。


「全機発艦させる。機動部隊はこのまま前進、距離を稼いで帰還する攻撃隊の負担を減らす。二戦隊に発光信号、貴戦隊は護衛部隊を率いて敵艦隊と艦隊決戦に移行せよ。諸君、やる………」

「……長官……?」


 小沢中将はそこまで言って言葉を止めた。何だ、何か釈然としない。そうだ、我々の目的は……。


「……命令を取り下げる」

「長官!?」

「攻撃隊発艦は一時中止せよ!! 敵艦隊の位置から更に敵上陸船団を見つけるのだ!!」

「まさか長官……」

「そうだ。我々は相手の楯と槍を奪うのではなく、先に相手が守る物を叩く!!」


 少ない数で立ち向かうより相手が引き上げる理由を作る。小沢はそう判断したのだ。


「し、しかしそれでは敵機動部隊への攻撃は……」

「それは福留の十三航艦にやらせろ。我々は予定通り戦闘機を送り出したら良い。艦隊決戦だけが戦う理由ではない!!」


 斯くして、偵察が再び放たれた。その一方で第十三航空艦隊ヤンゴンは彩雲からの通報を受信していた。


「直ちに攻撃隊発進!! 陸さんも上がるから洋上飛行の支援もしてやれ」


 第十三航空艦隊司令長官の福留中将はそう指示を出す。


(二日前に五航艦から762空が来なかったら危なかったな……それでも戦力は足りないが……)


 福留中将の心中は不安しかなかった。


「お、それと小沢さんのところに戦闘機を出せ。彼等のところから出してもらっているからな」


 ヤンゴンからは一式陸攻84機、銀河72機、呑龍60機、飛龍90機が出撃した。また、インドネシアのメダンからも一式陸攻54機、銀河78機、呑龍60機、飛龍96機が出撃したのである。

 反対に英東洋艦隊も偵察機を増大させていたがまだ南遣艦隊を発見出来ずにいた。


「クソ……まだか……」


 フレーザー大将は苛立ちを隠せなかった。先ほどまで上空を飛行していた彩雲は既に逃走していた。


「大丈夫です長官。情報だと我等の空母は9隻、対して向こうは小型空母も入れて5隻です。航空戦力に我々は優位です」

「うむ……」


 参謀はフレーザーにそう言うが心中は穏やかではなかった。


『アドミラル・ミヨシを侮るな。ミヨシを倒すなら彼等より三倍の戦力を整えるのが優先だ』


 フィリップスの言葉がフレーザーの中を駆け巡っていたのだ。


(心配はない……心配はないんだ……)


 何故今になってフィリップスの言葉が甦ってくるのかはフレーザーにも分からなかった。だがフレーザーを安堵させる報告が漸く届いた。南遣艦隊を発見したのである。


「むぅ……遠いな……」

「この距離だと帰還途中で全機が不時着水を余儀なくされます」

「航空機を全て失うのは避けたい。最大にはなるが近づいたら発艦させよう」


 フレーザーはそう判断した。この判断は日英どちらも評価していない。そして新たな彩雲が英東洋艦隊の後方を航行する上陸船団を発見した。


「こいつを叩くぞ!! 全機発艦!! 始めェ!!」


 龍驤、飛鷹、隼鷹で待機していた攻撃隊は直ちに発艦を開始するのであった。陣風69機、彗星54機、天山72機は彩雲2機の誘導の元で敵上陸船団に向かうのであった。







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