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第百十四話






「やられた!! 此処でアドミラル・ミヨシだと……」

「砲弾、来ます!!」


 モンタナの艦橋でオルデンドルフは制帽を床に叩きつけ、そして砲弾が落下してくる。


「遠い……ですがこの距離だと数斉射で至近弾ですな」


 参謀長のディヨー少将がそう分析しながら呟く。


「此方はまだ撃てんのか!?」

「準備完了!!」

「良し、直ちに砲撃開始!!」

「ファイヤー!!」


 一艦隊に遅れて第七機動群も砲撃を開始するが、その直後に更なる砲弾が落下してきて水柱を吹き上げるのである。


「まだ狭叉はしてないか……」

「夜戦の電探射撃訓練はしていましたが……今一つ足りていないようですな……」


 将和と宇垣はそう話す。


「目標を敵一番艦に集中。奴から切り崩せ」


 将和は敵の頭を取る方向に向けた。出雲以下三隻の戦艦は照準を敵一番艦ーーモンタナに合わせて砲撃を再度始める。

 しかし、レーダー射撃については米艦隊が上だった。


「ッ!?」


 大和が三斉射目を放ち暫くすると、突如大和が揺れたのだ。そう、大和が被弾したのである。


「被害報告!!」


 大和艦長の有賀大佐は直ぐに伝声管に叫ぶ。被害報告は直ぐに将和の元に届いた。


「右舷二番、四番両用砲に被弾!! 両砲員は全員戦死!!」

「やはり大和は狙われますな……」

「大和だからな」


 宇垣の呟きに将和はそう答える。


「水雷戦隊……出しますか?」

「いや、まだ早い。敵が乱れてから出す」


 松田参謀長の提案に将和は首を振る。


「ただ……構えを見せるか」

「成る程、振りですな」


 将和の意を組んだ七戦隊第二小隊(鈴谷 熊野)と九戦隊(八雲 伊吹 六甲 和泉)の六隻に率いられた三個駆逐隊が速度を上げて突撃をする構えを見せる。それを見たオルデンドルフは警戒した。


「奴等、ロングランスを撃つ気か!? 照準を奴等に向けろ!!」


 オルデンドルフの意を受けたモンタナとオハイオが砲身を七戦隊第二小隊に向けた。二隻に狙われていると分かったのは第二小隊の周囲に大口径の砲弾らしき水柱が噴き上がっている時だった。


「回避航行!!」


 二隻は慌てて回避航行に転じたがオハイオの46サンチ砲弾が熊野の艦尾に命中した。


「熊野被弾!?」

「クソッタレ、艦尾が無いぞ!!」

「あれはモロで直撃しやがった……」

「熊野から発光信号!!『我、操舵不能。我、操舵不能』」


 先程まで鈴谷の横を航行していた熊野は艦尾を切断された事でガクッとブレーキが掛かったように洋上に停止してしまう。


「あぁ……」


 次いで後方から長門が熊野を追い越しその様子を砲弾運びをしていた某主計少佐は艦上から見ていた。

 洋上に停止し炎上している熊野を獲物と定めたモンタナとオハイオは更に砲弾を熊野に叩き込んだ。


「更に熊野に命中弾!!」

「クソ、あれでは熊野が……」


 そして長門らが見ている前で熊野は轟沈するのであった。


「熊野轟沈!!」

「………」


 熊野轟沈の報告に将和は何も言わない。だが此処で更に大和の砲弾が命中する。


「右舷カタパルト付近に命中!! 右舷カタパルト吹き飛んだ!!」

「右舷両用砲の被害拡大中!!」

「向こうもやりますな……」

「なに、敵は米海軍だからな」


 そして将和は激を飛ばす。


「全員落ち着いて持ち場の勤めを果たせ!! 戦艦が……大和が簡単に沈むか!!」


 将和の激に答えるかのように陸奥が放った41サンチ砲弾が戦艦イリノイの三番砲塔に命中、砲塔の旋回付近に命中した事で三番砲塔は旋回不能となりイリノイは砲撃能力の三分の一を喪失、炎上した。

 しかしウィスコンシンとケンタッキーが陸奥に反撃、陸奥は三発が命中し炎上する。だが陸奥も元々はユトランド沖海戦の戦訓を元に建造されており装甲はそう簡単に貫通するものではなかった。


「長官、先にアイオワ級からやりましょう」

「……仕方ない……か。全艦砲撃を炎上する戦艦に集中せよ」


 大和以下の四隻は砲身を炎上するイリノイに向け砲撃を開始、距離も34000まで接近していた事もありイリノイへの命中は二斉射目で上げた。


「イリノイが!?」


 イリノイは46サンチ砲弾四発、41サンチ砲弾三発が命中、イリノイは大破漂流を開始する。更に一艦隊はウィスコンシンとケンタッキーに砲撃を集中しこれも轟沈・大破させた。特にウィスコンシンは大和の46サンチ砲弾が弾薬庫に直撃した事で大爆発を起こし艦体が真っ二つになってあっという間に波間に没したのである。


「おのれ!! ヤマトと炎上しているムツに砲撃を集中しろ!! アドミラル・ミヨシを倒すんだ!!」


 モンタナとオハイオは大和へアイオワとミズーリは陸奥に砲撃を集中、大和は更に二発、陸奥は四発が命中した。


「駄目です、三番砲塔の火災が拡がるばかりです!! このままでは弾薬庫への延焼も時間の問題です!!」

「くっ……弾薬庫へーー」


 陸奥艦長の三好大佐が注水を叫ぼうとした瞬間、アイオワが放った砲弾が三番砲塔を叩き割った。それにより弾薬庫に引火して誘爆が発生してしまう。

 それでも陸奥は砲撃をしアイオワの艦橋破壊と第一砲塔を叩き割る事に成功するも大爆発を起こして轟沈してしまうのである。


「陸奥、轟沈!!」

「……くっ……」


 遂に出た戦艦の喪失に将和は顔を歪めた。それでも姉の長門が仇とばかりにアイオワを砲撃、これを大破炎上させた。


「よし、これでーー」


 そう呟いた瞬間、大和が揺れる。その報告は驚愕した。


「三番砲塔旋回及び射撃不能!!」


 オハイオの46サンチ砲弾が大和の三番砲塔の旋回付近に命中、破片等で三番砲塔の砲身も若干折れ曲がり射撃と旋回が不能となってしまった。


「………」


 将和は皆を元気つける言葉を発しようした瞬間、電探員が叫んだ。


『敵艦隊後方から新たな敵艦隊接近!! 更に敵攻撃隊も接近中!!』

「奴等、まだ戦力を残していたというのか……」

「対空戦闘用意だ」


 その報告に宇垣は呻いた。時刻はそろそろ0600、砲戦が始まって既に三時間近くが経過しており日は昇っていたのだ。150機近い敵攻撃隊はあっという間に飛来し大和に攻撃を集中させた。この状況を見たオルデンドルフは喜びと罵倒の半々だった。


「撃ち合いをしている中で乱入してくるか!?」


 ミズーリ艦長など無線で帰れと叫んでいる程だった。オルデンドルフらが見守る中で攻撃が開始されるのである。


「敵アベンジャー雷撃機、右舷から来ます!!」

「被弾しているところから来るか……」


 第七機動群との右砲戦で大和の右対空火器は壊滅状態に近かった。大和は右舷に魚雷七本が命中し速度を16ノットにまで低下させた。更にSBCの爆撃で爆弾六発が命中した。


「敵機接近!?」

「なっーー」

「危ない長官!!」


 更にF6Fが大和の艦橋に機銃掃射を行った。将和は咄嗟に宇垣に押し倒された。


「くっ……」


 将和が起き上がる。手で身体を触るも被弾した様子はなかったが大量の血が手に付着していた。そして隣にいる宇垣を見ると宇垣は腹から腸が少し出ながら負傷していた。


「宇垣!? 衛生兵ェ!!」


 将和は直ぐに腸を戻しつつ松田らと共に止血をする。


「ちょ……か……」

「喋るな宇垣!?」

「指揮を……指揮を……」

「長官、此処は我々がやります。なので指揮を!!」

「……済まん」


 松田らに促されて将和は指揮を続行した。衛生兵らも続々と艦橋に到着して負傷者を医務室に運ぶが宇垣は本人の希望により艦橋で治療を行う。

 そしてそこに伝令が電文を持って駆け込んできた。


「に、二艦隊より入電!!」

「読め!!」

「『我、二艦隊ハ後方カラ米艦隊ヲ砲撃セントス』。新たな艦隊は二艦隊です!!」

「南雲……」


 報告を聞いた将和は帽子を深く被る。この時、第七機動群の後方から接近してきたのは戦艦薩摩以下の小規模ながらの二艦隊であった。


「間に合ったか……」


 南雲は薩摩の艦橋で安堵の息を吐いた。


「艦隊を分割するのには躊躇しましたがやむを得ませんな」


 参謀長の大森少将がそう呟いた。二艦隊は米上陸船団をある程度壊滅させると南雲は艦隊を分割、岩代以下の艦艇(司令官 小柳少将)を引き続き上陸船団砲撃をさせつつ薩摩以下は離脱して第七機動群の後方から最大速度で追い掛けきたのである。


「三好長官を助ける。全艦、一艦隊を攻撃する米艦隊に向かって……突撃!!」


 南雲は左手を真上に上げて振り下ろす。南雲中将の命令を受けた薩摩以下の二艦隊は砲撃をしつつ第七機動群に突撃を開始したのである。








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