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第百八話







 1945年5月5日、ニミッツ大将は艦艇が空になった真珠湾を見ていた。


「行ったか……」

「はい、必ずやってくれるでしょう」


 ニミッツの付き添いである情報主任参謀のレイトン大佐はそう答える。


「そう……だな……」


 米海軍はフォレージャー作戦に大半の艦艇を投入していた。


 第五艦隊

 司令長官 レイモンド・A・スプルーアンス大将


 旗艦重巡インディアナポリス


 第一機動群司令官 ジョゼフ・J・クラーク少将

 空母 ホーネット2 フランクリン タイコンデロガ ランドルフ

 軽空母 インディペンデンス ベロー・ウッド

 重巡 ボストン ボルモチア

 防空巡 オークランド サンファン

 駆逐艦16隻


 第二機動群司令官 アルフレッド・E・モントゴメリー少将

 空母 レキシントン2 バンカー・ヒル ワスプ2 ハンコック

 軽空母 カウペンス モンテレー

 軽巡 サンタフェ モービル ビロクシー

 駆逐艦16隻


 第三機動群司令官 J・W・リーブス少将

 空母 ベニントン ボクサー ボノム・リシャール エンタープライズ2(史実レイテ)

 軽空母 ラングレー2 カボット

 重巡 インディアナポリス キャンベラ

 軽巡 バーミンガム クリーブランド

 防空巡 レノ

 駆逐艦16隻


 第四機動群司令官 W・K・ハリル少将

 空母 アンティータム

 軽空母 バターン サン・ジャシント

 軽巡 ビンセンス マイアミ

 防空巡 サンディエゴ

 駆逐艦12隻


 第七機動群司令官 ジェシー・B・オルデンドルフ中将

 戦艦 モンタナ オハイオ アイオワ ミズーリ ウィスコンシン イリノイ ケンタッキー

 重巡ウィチタ クインシー ピッツバーグ コロンバス ヘレナ ブレマートン フォール・リバー セントポール

 駆逐艦22隻


 第51任務部隊司令官 リッチモンド・K・ターナー中将

 護衛空母32隻

 軽巡12隻

 護衛駆逐艦66隻


 海兵隊

 司令官 ホーランド・M・スミス中将

 第三海兵師団

 第四海兵師団

 第五海兵師団


 米陸軍

 第27歩兵師団



 等々を投入していた。


「しかし……ハルゼー大将でなくて良かったのですか? アドミラル・ミヨシに当てるなら猛将の彼でも適任と思いますが……?」

「当初はハルゼーと思っていた。だがフォレージャー作戦の真意はそれだけではない。しかもハルゼーは片道だけなら道は知っている」

「……まさかフォレージャー作戦は……」

「……そういう事だ」


 ニミッツの言葉にレイトン大佐は愕然とした。マリアナ諸島を攻略するだけだと思っていた。しかし、情報主任参謀の自分さえも極秘の任務が作戦の中に組み込まれていたのだ。


「……マリアナは陽動、本命は……」

「……奴等のエンペラーがいるトーキョー……そしてそのトーキョーを攻撃するのがミッドウェイを旗艦とするハルゼーの第三艦隊だ。皮肉なものだな」


 ニミッツはそう言うのであった。




「まずはマリアナと日本本土を結ぶイオー・ジマの航空戦力を叩く」

「同感です」


 インディアナポリスの作戦室でスプルーアンスの案にマーク・A・ミッチャー中将は頷く。確かに硫黄島には海軍の航空隊が駐屯していたのだ。


「第二機動群を向かわせる」

「分かりました」


 直ちに第二機動群は硫黄島へと急行し硫黄島の対空電探が敵攻撃隊を探知したのは5月10日であった。


「戦闘機は全て上げろ!!」


 硫黄島航空隊に配備された零戦五三型54機と紫電改54機は直ちに離陸して高度4000で飛行した。


「……雲量が多いな……6~7くらいか」


 飛行隊長は紫電改に乗りながら周囲を警戒する。


『隊長、下方十時!!』


 一機の零戦がバンクして敵機を告げた。飛行隊長が下方十時を見るとF6Fを先頭に敵攻撃隊が飛行していた。


「よし、直ちに全機突入せよ!!」


 飛行隊長は機体を左に傾け右フットバーを蹴り飛ばして降下を開始する。列機も飛行隊長に続いて突撃していく。降下に気付いたF6F隊は攻撃隊を守るためにダイブして迎撃隊に突っ込む。

 一瞬の交錯後、両方で火を噴きながら墜落していく機体が多数あった。


『ノー!? 隊長がやられたぞ!!』

『クソッタレ、奴等手強いぞ!!』

『佐藤がやられた!?』

『誰か助けてくれ!! 後ろにGeorgeが張り付いて逃げられない!!』

『小幡、脱出します!!』


 それでも地の利は硫黄島航空隊にあった。第二機動群司令官モントゴメリー少将は帰還してきた攻撃隊の報告を聞いて唖然した。


「戦闘機53機、艦爆49機、艦攻58機が未帰還だと!? 馬鹿な、何かの間違いじゃないのか!!」

「いえ……事実であります。イオー・ジマは航空戦力は元より大量の対空火器が確認されました。恐らくはこれらのも含まれています」


 実際、硫黄島には史実以上の対空火器が運び込まれて対空戦闘に従事していた。(高射砲約140門 20ミリ・25ミリ高射機関砲約300門以上等々)そのため、攻撃隊の被害が多かったのである。


(止めるべきか……)


 モントゴメリーは悩んだ。窮鼠猫を噛むとも言う、むしろ第二機動群だけではなく第五艦隊全てを投入すべきではないかとも思ったがモントゴメリーは再度攻撃隊を出す決断した。

 しかし日本側も対処をしていた。


「硫黄島に増援を出す」


 厚木海軍航空基地に司令部を構える第三航空艦隊司令長官の吉良中将は硫黄島に増援を出した。

 木更津海軍航空隊から零戦43機、紫電改34機が派遣され、更にその空いた穴を第五航空艦隊(司令長官 山田中将)から増援を出してもらったのである。

 二日後の12日、第二機動群は再度硫黄島を攻撃した。しかし待ち受けていたのは前回よりも多い硫黄島航空隊であった。


「何!?」


 モントゴメリーは被害の大きさに表情を歪める。戦闘機56機、艦爆66機、艦攻52機が未帰還であった。


「……スプルーアンス長官に指示を仰ぐ」


 モントゴメリーは力弱くそう言ったのである。報告を旗艦インディアナポリスで受けたスプルーアンスは即断した。


「イオー・ジマ攻撃は取り止める。第二機動群は直ちに艦隊に合流すべし」


 このままでは航空戦力は磨り減らされるとスプルーアンスは判断したのだ。そして第二機動群と合流後に第五艦隊はサイパン島へ攻撃隊を出したのである。


「……来たか」


 サイパン島に司令部を構える第31軍司令官の栗林中将は撃ち上げられる対空砲火を見つつそう呟く。サイパン島上空はアスリート飛行場等から離陸した陸海の戦闘機群が乱舞して米攻撃隊と空戦をしていた。


「サイパン島は難攻不落の要塞島である。案ずる事はあるまい」


 サイパン島には三個師団、三個独立旅団、一個戦車連隊が駐屯しておりその防御陣地を視察した杉山が「鉄壁である」と太鼓判を押されていた程である。


「後は……やるのみだ」


 墜落していくTBFを見つつそう呟く栗林中将であった。








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