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第百七話





 1945年2月4日からソ連クリミア自治ソビエト社会主義共和国のヤルタ近郊のリヴァディア宮殿でアメリカ、ソビエト、イギリスによる首脳会談が行われていた。史実通りのヤルタ協定にアメリカとソ連のヤルタ秘密協定も締結された。


(ククク、これで極東を片付けられる……)


 ソ連は史実より多い動員数で粘るドイツ軍を押していた。ゲーリングやマンシュタインの活躍によりドイツ軍は史実では壊滅する中央軍集団を辛くも救いだしりして局地的な勝利をしていたりするが所詮は数の暴力である。


(軍がベルリンに到達次第は……)


 秘密協定の取り決めはドイツ敗戦後90日後のソ連対日参戦等であるが、シベリアに存在するシベリア帝政国の事は記載されていない。アメリカとイギリスはシベリア帝政を満州国同様に日本の傀儡国家と見なしてソ連の領土と認める事にしたのだ。

 つまりは血の繋がりがあるイギリスもシベリアを見捨てたのである。それが最善の策と信じてだ。


(ククク、アドミラル・ミヨシの驚く顔が見物だな。必ず奴を捕らえてモスクワで銃殺にしてやる)


 そう思うスターリンであった。そしてイギリスはというと……。


「全く……まだ欧州の戦争は終わっていないというのに……」


 不機嫌そうに葉巻を吸うチャーチル。


「しかもアメリカがマリアナを攻めるから我々も艦隊を動かさないといけない」

「ですがマレー、シンガポールの切り取りを認められているのでも良しとすれば……」

「フン、かつては七つの海を網羅したロイヤル・ネイビーが今やかつて植民地の国からの要請で動くか……情けないものだな」

「………」


 チャーチルのぼやきに秘書は黙りこむ。


「だが取る物は取る。東洋艦隊には十分な戦力を送っているからな」


 チャーチルは既に戦後を見据えた行動をしていた。なお、東洋艦隊はコロンボにて集結していた。


「力の入れ具合が分かるな……」


 コロンボに停泊する東洋艦隊旗艦ネルソンにてブルース・フレーザー大将はそう呟いた。東洋艦隊は開戦時に比べ大幅な戦力が増強されていた。


 戦艦×9

 ネルソン ロドニー レゾリューション クイーン・エリザベス ウォースパイト キングジョージ五世 デューク・オブ・ヨーク アンソン ハウ


 空母×8

 イラストリアス ヴィクトリアス インプラカブル インディファティガブル コロッサス グローリー ヴェネラブル ヴェンジャンス


 甲巡×5

 ロンドン デヴォンシャー サセックス サフォーク カンバーランド


 乙巡

 ダイドー級×4

 タウン級×6


 駆逐艦 多数


(これだけ揃えたのだ……負ける筈がない……)


 フレーザーは閑職に追いやられたフィリップスの言葉を思い出していた。


『アドミラル・ミヨシを侮るな。ミヨシを倒すなら三倍の戦力を整えるのが優先だ』


 フィリップスは口酸っぱくチャーチル等に具申していたが欧州を優先していたチャーチルの癇癪に触れて閑職に追いやられたのだ。


(所詮は敗者の言い分か……)


 フレーザーはフィリップスの言葉をそう振り払うのであった。そしてシンガポールにも日本艦隊は停泊していた。


「やれやれ……第二機動艦隊からそのまま南遣艦隊に鞍替えしただけじゃないか。GFは何を考えているのやら……」

「いやぁ、単なる自棄でしょう」


 南遣艦隊旗艦龍驤の艦橋で南遣艦隊司令長官の小沢中将と第二戦隊司令官の西村中将はそう話していた。


「それでGFに増援は?」

「とてもじゃないが無理だな。五戦隊が来ただけでも奇跡だな」


 南遣艦隊は伊号潜からの報告でコロンボに東洋艦隊が集結していたのを察知していた。恐らく反攻として東洋艦隊が占領するのはアンダマン諸島とニコバル諸島だとも踏んでいた。(なお的中している)

 そのため、アンダマン諸島とニコバル諸島の守備隊は早期に撤退してアンダマン諸島は原住民しかいなかった。


「航空戦力はどうなりました?」

「やはり第十二航空艦隊だな。マリアナに第一、内地に第三、第四航空艦隊がいるが……五航艦を要請してみるのも手だな。陸さんはインドネシアのメダンとビルマのヤンゴンにそれぞれ一個飛行師団と二個飛行団が駐屯している」

「まぁ場所は分かっているのが災難ですな……」


 西村中将はそう言う。


「ま、戦力をくれるだけマシですな」

「あぁ」


 この時、南遣艦隊は以下の編成であった。


 第三航空戦隊

 龍驤 飛鷹 隼鷹

 第四航空戦隊

 龍鳳 神鷹

 第二戦隊

 扶桑 山城 伊勢 日向

 第五戦隊

 妙高 足柄 羽黒

 第六戦隊

 青葉 衣笠 古鷹 加古

 第十二戦隊

 長良 鬼怒

 第六水雷戦隊

 水無瀬

 第十二駆逐隊

 叢雲 白雲 東雲 薄雲

 第十三駆逐隊

 妙風 清風 村風 里風

 第二二駆逐隊

 山霧 海霧 谷霧 川霧

 第三五駆逐隊

 八重雲 冬雲 雪雲 沖津風

 第六十五駆逐隊

 清月 大月 葉月 霜風

 第十二潜水隊

 伊26 伊30 伊34 伊35 伊38

 第十八潜水隊

 伊40 伊41 伊42 伊53 伊55

 第二十一潜水隊

 呂41 呂42 呂45 呂46 呂49 呂50

 第二十二潜水隊

 呂104 呂105 呂107 呂109

 第三十二潜水隊

 伊202 伊204


 なお、第三十二潜水隊は就役したばかりの伊号艦である。ちなみに潜高ではなく計画だけで終わった戊型潜水艦である。


「とりあえずは警戒はしておこう。イギリス紳士の事だ、火事場泥棒をすると想定しておこう」

「そうですな」


 頷きあう二人だった。そして1945年5月1日、準備を整えた米海軍は『フォレージャー作戦』を発動………じゃなくて時間は少し戻り場所はドイツ、ベルリンへと移る。


「敵軍は広範囲で陣を突破し前進しております。南部ではツォッセンを占拠し、シュターンスドルフに進軍しております。北部ではフローナウとパンコーの郊外で行動しており、東部ではリヒテンベルグ・マールスドルフ・カルルスホルストの線にまで到達しました」


 総統官邸の地下壕で参謀総長のクレープスはゲーリングに説明する。


「温存していたシュタイナーの部隊出す。この攻撃で一時の平穏を取り戻すだろう」

「ですが総統、本当に奴等を信じても?」

「ではソ連に降伏するかね?」

「いえ……」

「ではそうするしかあるまいよ。アイゼンハワーとマッカーサーなら約束は守る。特にマッカーサーはな」


 ゲーリングはそう言ってニヤリと笑う。


「ベルリン市民の避難は?」

「後二割残っています」

「米軍には避難している無人の箇所を必ず伝えろ。そこを爆撃したら防御陣地の出来上がりだ」


 ゲーリングはそう言って新たにベルリン防衛司令長官に選ばれた男を見た。


「出来る限りの用意はした。地上戦の指揮はお任せします」

「……ナチスではなくドイツのために死ねるのだ。必ず市民を守ってみせよう」


 男ーーエーリッヒ・フォン・マンシュタイン元帥はゲーリングに敬礼をするのであった。






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