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第百二話

ゲーリング「ちょび髭アウトー」

ちょび髭「」








 1944年6月6日0650、米英連合軍はドイツ占領下の北西ヨーロッパへの侵攻作戦である『ネプチューン作戦』を発動した。

 上陸場所はフランス・コタンタン半島のノルマンディー海岸である。なお、上陸からフランスの首都パリ解放までの作戦全体の正式名称はオーヴァーロード作戦であった。

 連合軍は史実通りに5つのビーチに上陸した。しかし、オマハ・ビーチとユタ・ビーチ、ソード・ビーチは史実以上の激戦を繰り広げるのである。


「馬鹿な!? 何で此処にチハがいるんだ!!」


 とある中隊長はそう言って榴弾で吹き飛ばされた。オマハ・ビーチとユタ・ビーチ、そしてソード・ビーチには遣欧戦車混成旅団の九七式中戦車の戦車部隊がいたのである。


「戦車、前へ!!」


 遣欧戦車混成旅団の指揮官はノモンハンで戦史上初の大規模戦車夜襲を牟田口と共に指揮をした玉田美朗中将であった。

 この遣欧戦車混成旅団とは開戦前にドイツとイタリーに譲渡した初期量産型のチハ12両が基幹であった。ドイツとイタリーは研究用として譲渡してもらったチハの研究が終わり、破棄する予定だったが戦車研究で遣独作戦でドイツに渡っていた玉田中将の発案によりチハ改二(砲弾不足のため戦車砲を四号長砲身に交換)とイタリーが生産していたチハで戦車混成旅団を編成したのである。

 旅団とは言うもののチハ改二12両とチハ改三(イタリー製)130両であり本部中隊と合わせて七個中隊で編成していた。(本部は22両、一個中隊20両で編成)

 混成旅団は独自指揮権はあったが第21装甲師団に組み込まれていた。この時は玉田らの具申によりユタ・ビーチに二個中隊、オマハ・ビーチにも二個中隊、ソード・ビーチに本部と残りの中隊が配備されていた。

 混成旅団にとって幸運だったのは擬装が完璧であり空からの偵察では全く分からなかった事で混成旅団は無傷だったのだ。


「踏み潰せ」


 上陸が開始された時点で玉田は短い電文を送り、ビーチに配備されていた戦車中隊は反撃を開始したのである。

 まずはユタ・ビーチからしよう。ユタ・ビーチへの上陸第一波は0630に8隻のLCTが4両のDD戦車と共に上陸だったが瞬く間に全滅した。


「ファック!! チハがいるなんて聞いてないぞ!!」


 上陸第一波と共に上陸した第四歩兵師団副指揮官のセオドア・ルーズベルト・ジュニア准将は直ちに反撃を命令したがチハの榴弾に吹き飛ばされたのであった。

 結果としてユタ・ビーチはドイツ軍が後退した事で二個中隊も置き去りにされたドイツ軍の負傷者を後送しつつ後退した。連合軍は死傷者約3600人、車両喪失260両を出した。遣欧戦車混成旅団は11両の喪失だった。

 次はオマハ・ビーチだが此処も二個中隊がいた事で戦況は全く違った。


「バズーカは無いのか!?」

「バンガロールで破壊、グァ!?」

「畜生、戦車も全部やられだぞ!!」


 二個中隊は海岸を駆け巡った。上陸したDD戦車は全て撃破され榴弾で兵士達は吹き飛ばされる。連合軍は被害を続出させたがそれでも力押しをしてオマハ・ビーチに上陸したのである。

 海岸線を突破された事でドイツ軍も次々と後退を開始した事で戦車中隊も後退した。連合軍の死傷者は約6000人であり、米第2レンジャー大隊の死傷者は90%にも登りほぼ全滅だった。

 そして最後のソード・ビーチも悲惨だった。ソード・ビーチはイギリス第三歩兵師団とイギリス第二七機甲旅団が上陸するが此処に遣欧戦車混成旅団の主力が待ち構えていたのだ。


「何て事だ……」


 イギリス第三歩兵師団は混成旅団の登場に頭を抱えた。第三歩兵師団は力押しで圧倒しようとするが混成旅団も負けじと押し返すので戦闘は膠着。その隙に第21装甲師団が到着、特に同師団の第192装甲擲弾兵連隊と混成旅団の一個中隊がリオンシュル・メールで合流した事でイギリス軍第二軍司令官デンプシー中将は不利を悟った。


「増援を呼べ!! このままでは海岸で朽ち果ててしまう!!」


 そうしているうちに第21装甲師団の第22戦車連隊はソード・ビーチとジュノー・ビーチの浜辺に到着したのである。


「やられた……」


 反撃はこの一日だけだったがイギリス第三歩兵師団は33%の、第三カナダ歩兵師団は38%の損害を受けて内陸部への進撃が史実より遅れた事でユタとオマハから撤退してきた混成旅団の中隊と合流する事が出来たのである。


「よし、混成旅団はこの場所で再編する」


 玉田はそう言って地図の一ヶ所を指差した。その場所はフランスのカーン南方の村、ヴィレル・ボカージュであった。

 後に行われたヴィレル・ボカージュの戦いで遣欧戦車混成旅団はSS第101重戦車大隊第2中隊と共に戦史に刻まれるのであった。

 そして7月1日、フリードリヒ・オルブリヒト歩兵大将、ルートヴィヒ・ベック上級大将、ヴィルヘルム・カナリス海軍大将等らはベルリンのとある館にて拘束されていた。


「……まさか露見されていたとはな……」

「………」


 オルブリヒト歩兵大将は悔しそうに言い、ベック上級大将はとある人物を睨み付けていた。


「まぁ落ち着いてください皆さん」


 人物はそう言って傍らに控えていた兵士らに合図をしてベックらの縄を解いて椅子に座らせた。


「貴方方が計画しているヒトラー暗殺計画……それに私も噛ませてもらいます」

「何!?」


 人物の言葉にベックらは目を見開いた。


「何を……貴様が何を考えているんだ!! ゲーリング!!」


 ベックらはとある人物……ヘルマン・ゲーリングに叫ぶのであった。

 そして7月7日、ヒトラーは狼の巣であるヴァルフスシャンツェで作戦指導をしていたところを乱入してきた兵士達に他の幕僚らと取り押さえられたのである。


「な、何だ貴様ら!? 余を誰だと思っているのだ!!」

「アドルフ・ヒトラー……ドイツの国家元首ですな……」

「ゲーリング……貴様、まさか!?」


 護衛の兵士と共にルガーP08を手に携えたゲーリングが現れるとヒトラーはもの凄い表情でゲーリングを睨む。だがゲーリングは何にもない感じに受け止めていた。


「そのまさかですよマインフューラー……いやアドルフ・ヒトラー」

「ゲーリング……ゲーリング!! ゲーリングゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

「まぁ色々と私も鬱憤はあるんですが……さよならアドルフ・ヒトラー」


 パンッという銃声と共にドサッと何かが落ちる音がする。ゲーリングの前には徐々に拡がる血の海に横たわるアドルフ・ヒトラーであった。


「……これで一つ目は終わったか……」

「ヘルマン」

「やぁケッセルリンクにミルヒ。首尾はどうだい?」

「SSも粗方抑えた。ヒムラーも捕縛している」

「後で精算しとくよ」


 ケッセルリンクとミルヒは血の海に横たわるヒトラーを養豚場にいる豚を見るような表情で見る。


「フン、それで次の行動は?」

「グライムとシュペーアを特使としてロンドンに派遣かな」

「まずはヒトラー死亡の公表か」

「まぁね、忙しくなるよ」


 そう言うゲーリングだったがこの時、ミルヒは後に自伝でこう記していた。


『そう言ってたゲーリングの目は何とも言えない目をしていた。まるでドブ川のような濁った目を……』


 ゲーリングは自身の陸戦部隊である第二降下装甲猟兵師団を率いてベルリン一帯を占拠、SSの反撃を全て抑えた。ゲーリングは捕らえたヒムラーやマルティン・ボルマン、ヨーゼフ・ゲッベルス等を問答無用で銃殺した。なおMG42を使用して自らの手での銃殺だった。

 7月12日、ゲーリングはヒトラー死亡をラジオにて公表したのである。


『親愛なるドイツ国民の皆さん、今日は皆さんに悲報を言わなければなりません。我々のマインフューラーであるアドルフ・ヒトラー総統は……暗殺されました』


 そしてゲーリングは語っていく。


『戦争なのでifは無いでしょう。我々は偉大なる指導者を失った……しかしながらマインフューラーも独ソ戦という道を誤った……この事はまさにドイツ民族滅亡という危機なのです』

『立てよ国民よ!! 我々は何としてもソ連を倒せねばならないのです!! そう、米英と一時的な休戦をしてもです!!』


 ゲーリングはそう言って締め括るのであった。ヒトラー死亡という報せは瞬く間に全世界に伝わるのである。





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