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第九十九話







「そうか、海軍は復活しつつあるか」


 キングからの報告を受けたホワイトハウスの主であるルーズベルトは満面の笑みを浮かべた。


「それで反攻作戦はどうするのかね?」

「『第一次』の反攻作戦は失敗しましたが今度は時間をかけての反攻です」


 ルーズベルトの問いにキングはそう答えて書類を提出した。


「ふむ……『フォレージャー作戦』か……」

「はっ、主になる作戦はそれですが他にも『ガルヴァニック作戦』『ヘイルストーン作戦』があります」

「ふむ……」


 ルーズベルトはペラペラと書類を捲り書かれた作戦内容を一目していく。時間にして30分は経っただろう。キングもソファーに座りコーヒーの御代わりをしていた。


「……成る程」


 ルーズベルトは書類を机に置いて眼鏡をとる。


「勝算はあるのかね?」

「『ガルヴァニック作戦』に関しては100%です」

「ふむ……」

「一年後……一年後に『あの空母』も揃えば全作戦は100%になるでしょう」

「そして『あの爆撃機』に日本を空襲か……それは素晴らしいものだな。確かに『あの空母』の工期を早めるためにヨーロッパの資材を回したからな。おかげでチャーチルから説明を求める催促が相次いだものだ」


 ルーズベルトはそう言って苦笑する。


「オーストラリアが連合国から離脱したせいで南方の最前線はフィジーだ。マッカーサーはオーストラリアから追い出されて腹が煮えわたる思いだな」


 オーストラリア政府からオーストラリア離脱を告げられた時、マッカーサーは自身のコーンパイプを握り潰した程である。


「だがそのフィジーも危ない」

「admiralミヨシの機動艦隊がフィジーを空襲しました。恐らくはフィジーを攻略する気なのでしょう」

「成る程。フィジーを抑えれば海軍はハワイから出撃して行かなければならないからな。やはりミヨシは恐るべき存在だな」

「はっ……」

「……宜しい、フィジーは捨てる。直ちに部隊を脱出させたまえ」


 ルーズベルトの決断は早かった。


「君のフォレージャー作戦を信じよう。それくらいなら島の一つや二つを失っても構わん」

「ありがとうございますプレジデント」


 キングはルーズベルトに頭を下げる。


「ですがフィジーにはマッカーサー元帥がいますが……」

「奴には暫くヨーロッパに行ってもらう。久しぶりにヨーロッパの空気も吸いたいだろう」


 ルーズベルトはそう言ってキングに別の書類を渡す。


「イギリスからの共同作戦の書類だ」

「拝見します」


 キングはそう断ってから書類を一目していく。


「……成る程。イギリスとフランスもまだアジアは捨てる気は無いと」

「あぁ。マッカーサーにはそっちから回った方が良いだろう。そっちの方が奴が帰りたい故郷は近いからな」


 ルーズベルトはそう言ってニヤリと笑う。


「空母は全て西海岸で訓練か」

「ハルゼーが喜んでいます」

「まぁ良いだろう。日本への攻撃は『あの爆撃機』に任せる」

「完成していたのですか?」


 ルーズベルトの言葉にキングはソファーから立ち上がる。


「既に80機が陸軍航空軍に引き渡されている。10月には150機が揃う」

「ではチャイナから……?」

「あぁ」


 ルーズベルトはニヤリと笑う。


「これでジャップが再びチャイナに深入りしたら我々の勝ちだよ」







 1943年10月ビルマ上空。ビルマ方面を担当する陸軍航空隊の飛行第64戦隊はインド方面から接近する二機の超大型爆撃機を対空電探にて探知、直ちに第64戦隊の隼(零戦)が離陸して超大型爆撃機へ向かう。

 確かに隼は超大型爆撃機を発見した。しかし、発見した場所は一万メートルの高さであったのだ。


「何だあの爆撃機は!?」


 迎撃に上がった黒江大尉は悠々と立ち去っていく超大型爆撃機に舌打ちをする。超大型爆撃機の報告は直ちに内地に伝えられた。


「な、何だと!?」

「まさかB-29……」

「早すぎる……」

「いやだが三好君の情報では43年の4月にはビルマに現れている。早すぎではなく多少遅い方だ」


 いつもの料亭で宮様らはそう協議していた。将和はフィジー諸島攻略のため不在であった。


「局戦は配備しているがまだ帝都防空隊にしか配備してないぞ」

「なら防空隊から回すしかない」

「わざわざビルマに派遣してどうするんだ」

「15サンチ高射砲も量産に入り出したところですからなぁ……当面は12サンチ高射砲で乗り切るしか……」


 宮様らが協議している中、慌ただしく長谷川長官が入ってきた。


「大変です宮様!!」

「どうした長谷川?」

「……北九州の八幡製鉄所が空襲を受けています。数は約100機以上!!」

『なーー!?』


 宮様らに激震が走った瞬間であった。





「撃て撃て!! 奴等を叩き落とせェ!!」


 八幡製鉄所を守備する高射砲隊の少尉が闇夜に探照灯で照らし出された超大型爆撃機を見ながら叫ぶ。少尉の傍らにある12サンチ高射砲はそれに答えるべく高射砲弾を上空に撃ち上げる。


「味方の戦闘機はまだなのか!?」

「分隊長、製鉄所の火災が酷くなってきました!! このままでは……」

「あの爆撃機を見逃して逃げるのは恥だぞ!!」

「それは百も承知です!! ですが製鉄所の工員達も避難させねばなりません。我々は民間人の見殺しの汚名を着たくはありません!!」

「……分かった、頭が冷えた。直ちに現場を放棄!! 工員の救助を急ぐぞ!!」

『はっ!!』


 しかし少尉達が行動に移す事はなかった。彼らの付近に多数の爆弾が落ちて彼等を吹き飛ばしたのである。

 後にこの空襲は『八幡空襲』と名付けられた。民間人への死傷者は700名余りにも登った。だが八幡製鉄所の損害は軽微だった事、爆弾の半分が住宅街等へ流れた事も要因だった。

 なおB-29の喪失は高射砲隊と迎撃に上がった二式単戦鍾馗の体当たりで12機を撃墜したのである。


「帝都防空隊の半分を北九州に回しましょう」


 フィジー諸島攻略が終わり、艦隊が帰還したトラックから緊急帰国した将和は開口一番にそう告げた。


「うむ、我々もそう決めていたところだ」

「陸軍も一個飛行師団の派遣を決定した」


 この時、帝都防空隊は陸軍が三個飛行師団、海軍が第三〇一航空隊から第三〇四航空隊が展開していた。


「三〇二空の雷電隊を全て佐世保に回す。これで次は全て叩き落とす」

「落ち着いてください。我々が落ち着かなくてはいけません」

「……済まない……」

「雷電隊は佐世保で良いでしょう。ですが松山にも局戦隊は必要です」

「……三四三空かね?」

「はい、陣風に排気タービン付を搭載している試作機が複数ありましたね? あれで一時凌ぎをして雷電の生産まで待つしかないですね」

「うむ……それが良いな」


 斯くして方針は決まった。陸軍航空隊は帝都防空隊から一個飛行師団が山口県の小月飛行場、福岡県の芦屋飛行場等に展開した。

 海軍も横須賀の三〇二空の雷電隊が佐世保へ展開した。また北九州地域に増強として12サンチ高射砲や防空気球が送り込まれ日本軍は万全の態勢を整えたのである。

 そして二回目はやってきたのである。








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[気になる点] 隼は、開発中止になったのでは
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