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第九十八話

お久しぶりです








「ちっ、まさか交渉を公式発表してからの拒否とはな」

「これでは殴られたも同然だな」


 会合で宮様達は怒っていた。


「落ち着いてください。過ぎた事は仕方ありません、此処は豪州攻撃を念頭にすべきでしょう」

「まさかO作戦をするのか?」


 将和の言葉に東條は目を見開いた。O作戦とは豪州上陸作戦の意味合いであり開戦後から陸軍で研究されてきた。

 しかし、豪州上陸には最低でも十個師団は必要であり治安維持の部隊等も考えると三十個師団、三個戦車師団、三個飛行師団等は必要だったのだ。


「いや流石にこれは無理だ」


 東條や杉山も現実的ではないと判断してO作戦は幻と消えたのであったが、二人にしてみれば将和の言葉はO作戦の復活を意味していた。だが将和は二人の慌てる様子に苦笑する。


「上陸作戦ではありません。豪州の都市部を機動艦隊で爆撃して干上がらせるんです」

「あっ成る程……」


 将和の言葉は納得し将和は豪州の地図を拡げた。


「豪州の都市部は主に海岸付近にあります。ならば機動艦隊で都市部を爆撃し豪州の首を締め上げるんです」

「都市部となると民間人への無差別爆撃をするのか?」

「いえ、我々は蛮族ではありませんよ」

「クク、それもそうか」


 将和の言葉に宮様らが笑う。


「都市部は予め爆撃する事を通達するのが良いでしょう。沿岸部の軍港施設は問答無用で叩きますが」

「ふむ……」


 確かに通達しておけば国際的にも日本の評価も落ちないだろう。むしろお人好しと呼ばれるかもしれないが民間人に死者が出るよりまかはマシである。


「良かろう、堀君と協議してその方向でいこう」


 将和も堀と協議して堀の承諾を得る事に成功、作戦準備が始まったのである。


「今作戦には第一機動艦隊と第三機動艦隊で実施する」

「第一機動艦隊はブリスベン、シドニー、キャンベラを爆撃。第三機動艦隊はインド洋から回り込みパース、アデレード、メルボルンを爆撃する」


 首席参謀の島本大佐はそう説明する。


「今回は第二機動艦隊の七航戦生駒、鞍馬、蔵王を第一機動艦隊に編入させて爆撃します」

「まぁ仕方なかろう」


 島本の言葉に小沢中将は頷いた。


「この攻撃でオーストラリアを今度こそ降伏させ主力を本格的に米海軍に迎え撃つ事とする」


 堀はそう締めくくり作戦は発動された。将和の第一機動艦隊と山口の第三機動艦隊は直ちに出撃して指定された海域まで進出したのである。


「長官、準備完了しました」

「ん。攻撃隊発艦始めェ!!」


 第一機動艦隊は手始めにブリスベンを攻撃し同都市の機能を大幅に低下させた。まぁブリスベンにも敵航空基地はあるものの、そこまでの戦闘機は保有しておらず結局は地上で破壊される羽目になった。


「何!? ジャップがブリスベンを空襲したと!?」


 首相のカーティンは部下からの報告に椅子から立ち上がる。


「それで被害は!?」

「ブリスベンにあった航空基地は壊滅、停泊していた艦船も攻撃され大破着底となりました」

「うぅむ、何て事だ。軍には警戒をするよう伝えてくれ」

「はっ」


 しかし、それは遅すぎた命令だった。二日後、第一機動艦隊はシドニーを空襲しシドニーにあった軍の戦力は壊滅したのである。


「何!? シドニーが空襲を……」

「首相、このままでは此処キャンベラも危ないのでは……?」


 呆然とするカーティンに側近はそう漏らす。確かにシドニーとキャンベラは近いのでそうなる確率は非常に高かった。


「う、うむ。直ちに政府の疎開準備を検討しよう」

「た、大変です!!」


 そこへ別の側近が入ってきた。


「ジャップの攻撃隊が此処キャンベラに迫っています。今すぐ退避してください首相!!」

「な、何だと!?」


 側近の報告にカーティンは目を見開いたのであった。


「全軍突撃せよ!!」


 キャンベラ上空に到達した第一機動艦隊からの攻撃隊(零戦と艦攻の戦爆連合)は僅かな戦闘機を駆逐した後、攻撃を開始した。


「用意……撃ェ!!」


 艦攻隊は民間人への被害が出来るだけ出ないよう軍の施設を狙っての水平爆撃を敢行、これを破壊した。また国会議事堂も爆撃、これを完全に破壊していた。


「おぉ神よ……」


 退避していたカーティンは国会議事堂が完全に破壊された事に嘆いていた。そしてそれと同時に自国が最早戦えるのは無理だと判断していた。


「……日本との和平停戦に移行しよう」


 公表して蹴った手前、カーティンにもプライドはあったがこのままでは国土を蹂躙されるのは間違いなかった。


「首相、パースやアデレード等からもジャップの機動部隊からの空襲を受けたとの報告が来ています」

「……まだそれだけの戦力があったのか……」


 初めから無理だったのか、そう思うカーティンである。


「何処から間違えたのだろうか……」


 そう呟くカーティンに誰も答えなかったのであった。そして第一、第三機動艦隊がオーストラリアの都市部を攻撃してから五日後、日豪はスイスのジュネーブにて密かに和平交渉が再び再開された。

 日本からの条件として連合国からの離脱、枢軸国への中立表明、資源提供が出され豪州もほぼ承諾したのである。

 これにより1943年8月12日、日豪和平が成立しオーストラリアは連合国からの離脱と枢軸国への中立を表明したのであった。


「一先ずは終わりましたな」


 いつもの会合場所の料亭で将和らは集まっていた。


「それに資源提供も引き出せたのも上手くいったな」


 オーストラリアには資源も大量に豊富なので航空機に必要なニッケル等も手に入りやすくなったのだ。


「ポートモレスビーに張り付けている第九艦隊も解体してもいいだろう」

「航空隊も少量で良いと思います」

「問題は米海軍の復活か……」


 海軍は将和の未来知識でエセックス級の大量配備を予期している。現にイントレピッド等が就役して戦闘して沈めている。


「……フィジーまで行ってみるか?」


 宮様はそう漏らす。


「ニューカレドニアを守るためですか?」

「うむ」

「しかし、陸軍としてもこれ以上の戦線拡大は……」


 あまり戦線を拡大し続けると破綻するのではないか?そう東條は思っているのだ。


「確かに米軍の反攻作戦があるとは思うがフィジーを攻略すればニューカレドニアの航路は守れる」

「うぅむ………」


 宮様の言葉に東條は唸る。


「……分かりました、フィジー攻略の部隊を編成しましょう」


 東條らも渋々とではあるがフィジー攻略を承諾した。そして当の米海軍も着々と復活の準備をしていた。


「キヒヒヒ……こいつは嬉しいなぁ……」


 サンディエゴの海軍基地でハルゼーは就役して停泊中の多数の空母を見て笑っていた。

 ハルゼーの目前にはイントレピッド級のレキシントン2、バンカー・ヒル、ホーネット2、ワスプ2、フランクリンの5隻が停泊していたのだ。

 他にも軽空母のインディペンデンス、プリンストン、ベロー・ウッド、カウペンス、モンテレー、ラングレー2、カボット、バターン、サン・ジャシントの9隻が沖合いで慣熟訓練をしていた。

 どの空母も最新鋭であるF6F、SB2C、TBFを搭載している。


「喜んでいるなハルゼー」

「これはニミッツ長官」


 そこへニミッツ大将が現れる。隣にはスプルーアンスもいた。


「後一年待てば更に7隻のイントレピッド級が配備される」

「キヒヒヒ。そいつは最高だぜボス」

「そうだ、だから徹底的に叩いてこい。今はまだだ」


 ニミッツ長官はニヤリと笑うのであった。







御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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