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第九十七話








 1943年5月上旬、将和は横須賀航空隊にいた。それまで将和は自宅にて夕夏達とイチャイチャし子ども達と遊んでいたが宮様の命令で渋々と横須賀航空隊に赴いたのである。


「こちらです」


 少し顰め面の将和を滑走路に案内するとそこには数機の航空機が鎮座して翼を休めていた。


「これは……新型機!?」


 将和は新型機の姿を見ると一目散に駆け寄る。


「新型機……完成していたのか……」

「お前が嫁達と休養している間にな」

「宮様」


 そこへ宮様らが現れる。


「左から零戦五四型、雷電二二型、紫電一一型、陣風一一型だ」


 宮様はそう説明しながら将和に各機の諸元書を渡す。




    『零戦五四型』


 全幅 12メートル

 全長 9.3メートル

 正規全備自重 3600㎏

 発動機 金星七三型(離昇1760hp 水メタノール噴射装置付)

 最高速度 636キロ

 航続距離 2000キロ(増槽付)

 武装 主翼13.2ミリ機銃二丁(各250発) 20ミリ機銃二門(各200発) 九七式前方発射航空ロケット弾六発 九九式前方発射航空ロケット弾四発




 全く新しい零戦の改良型であった。特に発動機の金星七三型は金星シリーズ最後とも言える発動機である。金星の限界とも言える1760馬力で零戦はこの五四型を以て打ち切る事が決まっている。




     『雷電二二型』


 雷電二二型は史実では異なる機体であった。前年に採用され帝都を防空していたのは一一型で史実で言うと三三型であった。では何が異なるのか?

 それは日本機では初めての排気タービン過給機を搭載していたのだ。史実でも三二型が排気タービン過給機を搭載して実戦投入されたが色々と問題があった。しかし、今世界では何とか問題を解決しつつ実戦投入されたのである。発動機と排気タービン以外はほぼ史実三三型と同じである。





     『紫電一一型』


 史実の紫電二一型である。最初から低翼にしている事で史実のような無駄を無くしている。






     『陣風一一型』


 史実では計画のみに終わっていた幻の戦闘機。今世界では艦上戦闘機として試作され採用された。発動機は誉四二型の生産が軌道に乗り始めた事で誉四二型である。

 全長等はほぼ史実のスペックであり武装は機首に13.2ミリ機銃二丁、主翼に30ミ機銃二門を搭載している。





「乗っても良いですか?」

「勿論だ」


 宮様の許可を得た将和は直ぐ様飛行服に着替えて零戦五四型から乗り込み離陸していくのであった。


「本来であれば烈風も彼処の滑走路に並んでいたはずだった」

「だった?」


 全ての機体の飛行を終えた将和は航空基地の一室で宮様と茶を共にしていた。


「三菱側に何かあったので?」

「……堀越技師が倒れたのでな」

「堀越さんが!?」


 堀越は雷電の設計も担当していただけに残当とも言える形での戦線離脱であった。


「そのため、川西に三菱の技師を派遣して陣風の協力をして採用までに漕ぎ着けたのだよ」

「その……三菱の技師は納得したので?」


 三菱は独立心が強く、航空本部長時代の将和も何かと苦労していた。


「最初は納得していなかったがな。一応は納得してもらった」


 しかし、三菱側も燻る物はあったのは確かである。そこで宮様は三菱が主導しての噴式戦闘機の開発を極秘に依頼する事で面目を立たせたのである。


「それと大鳳も来年には就役だろう」


 神戸造船所で建造中の空母大鳳は44年に就役予定である。大鳳は史実のように装甲化を諦め翔鶴型の発展型、通信機能を強化し旗艦機能を増強した空母とする事にしたのだ。

 日本海軍の空母が装甲化を目指すのは戦後で大和型の船体を元に発展化した装甲空母信濃型の就役を待たなくてはならない。





     『空母大鳳』


 基準排水量

 40000トン

 全長

 285メートル

 全幅

 31メートル

 機関

 九五式艦本式重油専焼水管缶8基、艦本式タービン4基

 速力

 33.2ノット

 兵装

 九七式十二.七サンチ連装両用砲八基

 九七式四十ミリ連装機銃八基

 二五ミリ三連装機銃十基

 二五ミリ単装機銃三六基

 噴進砲十二基

 搭載機数

 常用96機(戦闘機36機 艦爆27機 艦攻27機 偵察6機)補用12機(各3機ずつ)

 油圧カタパルト二基

 同型艦

 大鳳 神鳳




「大鳳、神鳳の就役を以て日本海軍の空母建造は暫くは控える。……神鳳が無事に就役するかも微妙だがな」


 宮様はそう言って茶を啜る。


「やはり基地航空の増強を?」

「それしかあるまい。史実の一航艦が予定していた約1600機、それを増やして約2100機を集中した一大航空艦隊だ。既にマリアナ諸島は島の防備化を進めている。」


 宮様の言葉に偽りは無く、マリアナ諸島のサイパン島、テニアン島、パガン島、ロタ島等の要塞化が行われていた。ちなみにコンクリートは硫黄島産の黒い火山灰とセメントを交ぜる事で高品質なコンクリートが出来る事が分かり(将和の指摘)要塞化は急がれていた。


「まだ最終的に決まってはいないがマリアナには陸軍は五個師団、海軍も陸戦隊を六個大隊を送る予定だな」

「成る程」


 最終的、後に行われるマリアナ諸島の戦いにて陸軍は第二師団、第十八師団、第四三師団、第四四師団、第六八師団、戦車第九連隊他多数。海軍陸戦隊五個大隊、一個戦車大隊が配備されマリアナ諸島の防備に活躍するのである。

 さて、欧州方面ーーイタリア戦線はほぼ史実通りの展開だった。米英軍のシチリア島上陸作戦(ハスキー作戦)の成功の結果、1943年7月24日、ドゥーチェことムッソリーニは逮捕・幽閉された。そしてムッソリーニから新しく政権を組織したのはピエトロ・バドリオで、対外的には戦いの継続を表明していたが、連合軍のイタリア半島上陸と同時に連合軍との休戦を表明。この休戦の結果、ドイツ軍はイタリア半島全土を占領したのである。

 またドイツ軍は幽閉されていたムッソリーニを救出し傀儡政権の「イタリア社会共和国」を作らせ、イタリアに増援部隊を送り連合軍との交戦を続けたのであった。


「ではイタリア軍……失礼、RSI軍にチハがあると?」

「はい、ライセンス生産ですがそれでも強力な戦車でしょう」


 ゲーリングはベルリンにてムッソリーニと会談をしていた。


(チハがあるのにも関わらず何で北アフリカで負けたんだ……)


 チハの性能を知っていたゲーリングは頭を抱えた。


(全く、東部戦線も押されてきたし何とかマンシュタインとも連携しないとな……このままでは……)


 ムッソリーニと会談をしながら打開策を考えるゲーリングだった。


「イタリアは予想通りか」


 いつもの会合で将和は欧州方面からの報告にそう呟く。


「東部戦線は史実よりかはマシだがそれでも押されてきている。何れはバグラチオンで潰されるかもな……」

「やはりドイツは負けるかね?」

「ソ連は強大です。史実でも両方の犠牲者は2500万程ですよ」

「ぬぅ……」


 将和の言葉に東條ら陸軍側の軍人達は知らずに出てきた汗を拭う。


「急いで新型戦車の開発を進めないとな……」


 既に陸軍は中戦車ではなく重戦車の開発に舵を切っている。陸軍は105ミリ砲クラスでソ連のT-34は元よりIS-シリーズに対抗しようとしていたのだ。



     『四式戦車チト


 重量 37トン

 最大装甲 85ミリ(前面)

 発動機 水冷V型12気筒ガソリンエンジン 700hp

 武装 55口径105ミリ戦車砲×1 13.2ミリ機関銃×1 7.7ミリ機関銃×2

 速度 46キロ


(もう少しだ、もう少し時間が……)


 東條らはそう思うのであった。なお、チトは44年に完成制式採用された。そして45年までには各戦車連隊の小隊長車まで生産されるのであった。

 そして7月、事態は大きく動くのである。


「何!? 豪州が和平を拒否しただと!?」


 水面下で動いていた豪州との和平停戦交渉、豪州は日本の連合国離脱を拒否し交渉事態を公式発表して宣言したのだ。


『我々は侵略者に屈しない』


 記者達の前で宣言をする豪州首相のカーティンは役者にでもなったかのようである。斯くして豪州方面の戦いはまだ続くのである。







御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 部品を規格統一・共通化したおかげで雷電の排気タービンも解消されました。 やはり技術なくして進歩はないですね。
[一言] 史実とは違って技術も本格的に開発された大鳳。 史実みたいな装甲化はありませんでしたが、ちゃんとした技術者や熟練工が除隊されたおかげで正真正銘の最新型大型空母になって良かったと思いますね。
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